何か摂取したお!
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あ、ありのまま、今起こったことを話すぜ。兎が目の前から消え失せた。な、何を言っているのかわからねーと思うが、オレも何が起きたのかわからなかった。
うん、おちつけ僕。
正確に言うと、兎が断末魔の悲鳴を上げながら外に引っ張り出されてしまったのだ。
最初は「グギャァァァ」とか悲鳴が聞こえてたんだけど、今はその悲鳴も聞こえない。時折、グチャグチャと何かを食い潰すような音と苦痛の悲鳴が聞こえていたのだが、現在はシーンと不気味なほど静まり返っている。
安全になった洞窟の中で、僕は呆然とその光景を眺めているだけしか出来なかった。
「えっと?どゆこと?」
放心していた正気を取り戻して、改めて現状を把握しようと呟いた。
もちろん僕の呟きに誰かが答えてくれる訳がない。でも、何か言ってないと、頭が正常に働かない気がした。
何だかまた外からクチャクチャ気持ち悪い音が聞こえてくるし、ワケがわからん。
だが放置しておくわけにもいかない。気になったので、先程兎が入り込もうとしていた隙間に顔を差し込む。あ、窓みたいでちょっと便利だな。
と、そこで目の前に写った。巨大な何かだ。
まるで緑色の大木のような太い前足にかなり太そうな指、そこから鋭い鈎爪が生えている。
更に僅かに見える胴体にはプロレスラー涙目になるほどの強靱な大胸筋と三角筋があった。
そして見上げるだけで首が痛くなりそうなほど大きな頭・・・と食われている兎。
「・・・ファッ!?」
驚きのあまり突拍子で変な声が出てしまった。
一瞬この怪物に気付かれてしまわないかと不安が出たが、兎を食すのに夢中らしく僕は眼中にないようだ。僕は気づかれていない事に心底ホッとした。
僕は安心感で、なんとか恐怖心を落ち着けると、外で行われてる恐ろしい惨劇を覚悟をもって観察する。
巨大な顎に挟まれてしまった哀れな獣畜生の兎は、即死の状態だった。
雪のように白かった毛皮は真っ赤に染まって、なんだかトマトを潰したような肉片がベチョベチョとこぼれ落ちていく。
ポロポロではなくベチョベチョだ。体中の兎の体液が混ざり合った異臭に吐き気がこみ上げてきた。
やばい・・・かなりグロい。目に涙も滲んでくる。
でも一番ヤバいのはこの兎を食い殺したこの怪物である。
形状は巨大なトカゲだ。
ただ前世のコモドドラゴンとかの類ではなく、どちらかと言うと恐竜のティラノサウルスがトカゲ化したような姿をしている。
凶悪そうな顔も、今ではとても満足そうに目を細めていた。その顔を見て僕はコイツの事を思い出した。
コイツ、僕を追いかけ回した7メートルのオオトカゲだ!!
まさかコイツ、あの時の続きで僕を追ってきたのか!?ストーカーかコイツは!!包丁持ってるストーカーの方がまだマシだよこんちくしょう!
だけど、口に即死している兎を咥えているところを見るとなんだか急に頼もしく感じる。
多分コイツは、僕を見失ってイライラしている所に、石を壊そうとして無防備だった兎を見つけたのだろう。
腹の減ったオオトカゲはその背後を狙って噛みついて引き吊り上げ、自身の空腹を僕の代わりに兎で満たした・・・のだと思う。
そう考えればナイスタイミングである。
かなり怖いが、このオオトカゲのお陰で僕は生き残る事ができた。例え感謝が伝わらずとも感謝しておくべきだろう。
ありがとうございますと頭を下げようとしたその時━━
ガリガリゴリピシャゴリガキュメキメキごっくん。
・・・うん、食物連鎖だもんね。狩りだもんねお礼なんて言う必要なんてないよね。
そう考えた僕は洞穴の奥に潜って乱食しまくったサボテンをリバースするのだった。
オオトカゲは兎を食って・・・というより喰って満足をしたのか、テクテクズンズンと、体を上機嫌に揺らしながらその場から立ち去ってしまった。
去っていく後ろ姿は何気に可愛いのに顔がホラーなのが残念である。ジョーズ顔負けなのだ。
しかし兎一匹で満足なのかと疑問なのだが、爬虫類は基本変温動物として知られているのを思い出した。
あのオオトカゲが変温動物だと仮定すると、変温動物の生物は基本外部の熱で体の温度を作る冷血動物である。
周りの温度が暖かいなら問題なんのだが、寒ければ恒温動物と違ってドンドン周りの寒さに合わせて消耗していく。よくて昏睡状態に陥り、最悪死に至る。
こう見れば変温動物は生活し難い生き物に見えるが、そのデメリットの代わりに大きなメリットがある。
変温動物はエネルギーの燃費がとても良いのだ。
例として爬虫類は主に熱帯など暖かい地域に生息している事が多い。なので爬虫類は体内の温度を維持する力を捨て、活動エネルギーに殆どを回す進化の道を辿ったのだ。
とある本に書いてあった事なのだが、過去に行われた実験で、蛇がネズミ一匹補食したところ三年間食わずで生き残ったという記録がある。
これはただ単に蛇が脱食に強いのも理由の一つだが、これで体内の温度を維持しなければどれだけ体が保つのか良くわかるだろ?
なので爬虫類は"基本"は少量の食事でも生きてはいけるのだ。
最も、絶滅した恐竜は夜も行動してたので変温動物ではなく恒温動物だったと言う説もあるが、あのオオトカゲはどうなのだろう・・・?
まぁ調べてみないとわからないだろうな。あのオオトカゲで実験する気なんてサラサラ起きないけど。
なんでそんな事知ってるかって?動物好きなんだよ僕は。
そんな感じで一人納得をして、僕は洞穴から這い出て辺りを観察する。
ワザワザ確認するまでも無いのだが、オオトカゲの巨大な足跡の周りには小さく粉砕された兎の肉片が放置されてあり、ヘコんでるくぼみには血の溜まりも出来ていた。
もぅ一つ気になってる事があるんだけど、僕今犬の姿なのに血の"赤"が見えてるんだよね。
目には網膜があって、そこに"錐状体"って呼ばれる色を識別する細胞があるんだけど、犬の錐状体の数がかなり少ないんだ。
唯一あるのも青と黄色くらいにしか反応しないから、色を識別する能力は人間と比べるとかなり劣るハズ。
だけどこのチワワの目は全くと言っていいほど問題がない。寧ろ以前よりハッキリと見えてるくらいだ、遠くの物もハッキリ見えるし。
便利なのは嬉しいんだけどなんか不気味だよね。自分の体だけどさ。
かるーく特したって考えるべきかな?うんそうしよう。難しい事考えてもしょうがない。
知識はあるけど頭が良いわけじゃないからな僕。
「さてと、これどうしようか。」
僕が言った対象はもちろん、あのオオトカゲの後始末である。
あのバケモノ兎の内蔵と血肉が飛び散ってるこの光景をこのままにしておくのは精神的にも衛生上的にも拙い。
肉をそのままにしとけば腐るし、もしかしたら変な病気が蔓延するかもしれない。
血は風に匂いが乗せられて、そのまんま撒き散らして他の肉食獣を呼び寄せるキッカケになってしまう。
早いところ処分しなければ。
「と言ってもどうすりゃ良いの?これ。」
処分する理由は思い浮かぶのに、処分する方法が思いつかない自分に腹が立つ。
ゴミ箱とかあるわけないしなぁ、埋めるか?いや地面が固すぎて掘れない、僕のチワワな爪では逆に折れてしまう。ひぃ。
となれば・・・
ぐうぅぅぅ~・・・
「・・・・。」
お腹から空腹を伝えるアラームが、盛大に聞こえてきた。
多少は考えてたよ?でもいくら何でも早すぎない?
流石サボテン様。食物繊維の消化速度に感服いたします。ですがもう少し遅くても良い気がしますが?
あぁリバースしたせいですかごめんなさい。
グゥギュルルルル・・・
うぅ、お腹減った。目の前に新鮮な肉が・・・!
いやいや待て待つんだ風見!あのオオトカゲが食い残した残骸だぞこれ。
そんなもん食ったらおこぼれにありついてるみたいじゃないか!人のプライドとしてどうなんだ!えぇ!?
でも、お腹すいたしなぁ、この子犬の体はまだまだ育ち盛りなのかもしれない。何せ子犬チワワだし。
だからって落ちてるものを食べてしまうのは如何なものだろうか、いやいや、食べ物を無駄にしてはいけない。いやしかしオオトカゲの唾液も混じってる肉なんて食べたら危険じゃないか?ウイルスでもいたらどうするんだ。
食べるか食べないか、迷いに迷う。
しかし、僕がそう頭の中で葛藤していても体の方は正直らしい。
ギュルルルル・・・
・・・。
最早悩む理由はない。どうせここには僕しかいない。
処理するならここに入れてしまえば良い。
僕の胃袋にな!!
もう我慢できないね、肉が食べたくてウズウズしてたんだ。野生の本能というやつかね?
僕はこぼれ落ちてる兎の肉片を見てゴクリと喉を鳴らす。
生肉だけど多分大丈夫だろう。
なんせ僕は今野生だからね!ワイルドだから!食っても体を壊すなんて余ほどのことが無い限り・・・これフラグじゃね?
それでも僕は内心気が気じゃなかったが、またオオトカゲみたいな肉食獣に集まられても困るので、早速落ちていた肉片を啄んでみた。
筋が多い気がするけど味は悪くない。悪くないけど・・・僕はもう人間じゃないんだなぁと少し寂しい気分になってしまう。
そんな事を考えてると、ふと頭の中に言葉が響いた。
『人喰兎を摂取。肉体の成長を促進します。』
ふぁ?なんですかそれ?
つかあれ人喰兎っていうのか、なんというかまんまだったな。
さてさて、肉体の成長ってどういうことだ?もしかしてこのチワワサイズから脱出してデカくなれるのか?それともチートに目覚めるのか!?だとしたらラッキーではないか!ふぁぁぁ!
目覚めよ!天よ、我に力を!!
・・・・
・・・
・・
・
なんにも起きねぇ!!何だったんだ今の間は!
つーかなんだったんだよさっきの声、天の声とか神の声とかじゃねぇのかよ。
成長するって聞いたのに、詐欺も良いところだぜ!
おっと、口が悪くなってしまった。我慢我慢、ふぅ。
うん。促進するとも言ってたな。てことはやっぱり時間がかかるのだろうか。
漫画とか小説ならここでチート能力が発現しているのだけれど、生憎僕にはそんなものは存在しない。
現実はそう簡単に上手くいかないってことかぁ。はぁ。
僕はションボリしながら血と肉の処理をした後、洞穴に入り込んで一夜を過ごした。
枕があったら濡らしていたと思う。
☆★☆
『ピギャァ!ピギャァ!』
早朝・・・時間感覚的には5時から6時まで時間帯であろう時に、そんな不快な音質がする声で目が覚めた。
何だ?このヘリウムガスを吸ったような不気味な声は。近所迷惑にもほどがあるぞ?
「ちょっと文句言ってや・・・あぁそうか。」
イラっときたので窓を開けて怒鳴ってやろうかと思ったのだが、薄暗い土の壁に囲まれて、更に自分が毛皮に包まれている感覚で思い出した。
「やっぱ夢じゃなかったかー。」
目覚めても異世界。
昨日寝る前に、やっぱり夢じゃないかなぁと淡い希望を願っていたりしたのだけれど、昨日の事も含めてこれはやはり現実っぽい。
ま、わかってたから別にいいんだけどね。
夢にしてはリアルすぎたもん。
まぁ前世に愛着なんてこれっぽっちも無かったから良いけど。
唯一の心残りといえば、ゲームの世話してた後輩ギルメンなんだけど、まぁ先輩方がどうにかすんだろ。うん。
あーあ、結局大規模戦闘に参加できなかったなぁ。
って、心配するのが顔も知らないオンラインゲームのギルドの後輩とか・・・
ちくしょう。悲しくなんてないんだからね!
『ぷぎゃぁぁぁ!ぴぎゃぁ!』
「つかウルセェェェェェェェェェ!!」
洞穴の中で僕の怒鳴り声が反響して響く。
さっきから全く途絶える事無く、あの変な声が洞穴の中にも入り込んで聞こえてくるので、思わず怒鳴ってしまうのは仕方のない事だと思う。
ホントマジうるさいんだよ、なんだあの変な声は。
やかましいにも程があるわ!そしてクソ高い高音が地味に腹立たしい。
『ぷぎゃぎゃー!』
「あーもうウルセェなぁ。」
騒がしいムカつく声が収まる気配が一向に感じられないので、僕は叩き起こされて不機嫌な気持ちを抑えながら入り口兼出口に向かった。
石で栓をしてるのは昨日ある程度修復したけど、兎に開けられた隙間はそのままにしてある。
外から何かやってきても対応するためである。目だけ外に向けられるので中々便利なのだ。
さてと、僕のオネムタイムを邪魔した輩は一体何者だ?
「ぎゃあぁぁ!ぷぎゃぁぁぁ!」
「・・・なんじゃこりゃ?」
僕は思わずそう呟いてしまう。
石で閉ざされた入り口付近で変な声を出していたのは、緑色のブサイクな小人の集団だった。
髪の毛なんて一本も生えていないツルッ禿た頭部に極小の角、3頭身ほどの小さな体。
アソコの部分の下半身はよくわからない植物の葉っぱを腰に巻いている。
そして周りに武器っぽい何かが置いてあって、そこに縄で拘束された同じ緑色の小人の周りを、不細工な小人達が囲むように踊っていた。
・・・ナンダコレ?
形からしてファンタジー定番のゴブリンとかか?あの最弱で有名な?
よくこんな所で騒げるな、肉食獣が来るとは考えてないのだろうか?
・・・いや、単にバカなのか?それとも前世の知識とは違って実は強かったりすりのか?
まぁ昨日見たデカいオオトカゲみたいな獣が徘徊するこの大地でコイツ等が見た目通り最弱なら今頃絶滅してしまっている事だろう。
だとしたら強いのか?
う~ん、逆に考えてみよう。数は力という言葉がある、それならゴブリンは繁殖力が高いからいくら死んでも数が減らないとかか?
うん、この理由がシックリくるな。ゴブリンが強敵だなんて僕は認めません。
「ぷぎゃ!ピギャ!ぷぎゃギャァァぁ!」
ウゼェ、マジうぜぇよ。
何なんだコイツ等意味不明な言語(叫び声)をペチャクチャペチャクチャ、周りの迷惑を考えないとか、ええ加減にせぇよ?その周りは僕しかいないけれど。何故わざわざここをチョイスした。
はた迷惑なゴブリン共に対してイライラが止まらない。
ここまで怒りっぽくはないんだけど、僕は昨日から僅かに感じていた異世界拉致へ苛立ちもあって、更にゴブリン共のせいで最高潮まで上昇した。
平然を装っていたけど、こんな訳のわからない理不尽な世界に結構ムカついてたんだ。
そして遂に、僕の堪忍袋の緒が切れてしまった。
「うるっせぇぇぇテメぇらおととい来やがれぇ!!」
「「「ギャギャ!?」」」
僕が石の隙間に口を突っ込んでそう怒鳴ると、ゴブリン達が驚いたような顔をしてこっちを見てきた。
そして突然の大声に恐れをなしたのか、何匹かのゴブリンが尻餅をついて屁っ放り腰のまま逃げ出した。え?マジ?
だがまぁ、その姿は滑稽であった。プクク、ざまぁみやがれ!
ていうか流石最弱モンスター(仮)。声にビビっただけで逃げ出してしまうとは、やはり強くは無さそうだ。
あ、一匹転んだ。頭打った。
・・・え!?動かないとかどゆこと!?転んだだけで死んじゃった!?
オィオィ弱すぎだろ!昨日の兎の突進喰らったら一撃で死ぬんじゃないの?
「フギャー!?」
そんなこんなで残ったのは一匹だけ。10数匹いたゴブリンが一瞬にして壊滅してしまった。
もうこれ雷の音だけでショック死する勢いじゃね?
まさか僕だってここまで弱いとは思ってなかったさ。何だか罪悪感が凄い。ごめんよ。
それにしても弱い。
あ、最後の一匹も武器を持って逃げやがった。
・・・・。
結果。残ったのは転んで死んだ2匹のゴブリンの遺体だけである。
血も少し飛び散っていて、武器も散乱しているところを見ると、まるで壮絶な戦いの後のように見えるが実際は僕が怒鳴っただけだなんて・・・
なんだかやるせない気持ちになってくる。
「・・・死体処分しないとねぇ」
意識を切り替える。一刻も先程の事は忘れてしまいたい。
死因が怒鳴り声に驚いて転んで、脳震盪で死亡とか悲し過ぎる。
とりあえず、武器も落ちてるし回収しとこう。僕は岩を退かして外へ出た。
改めて見るとコイツ等一体なんだったんだ?なんか儀式的な事でもしてたのだろうか?
よく見てみると、2体の死体の内一つが少し他のゴブリンと違っていた。
うつ伏せになっているが頭は禿ではなく髪の毛がちゃんと生えていて、服も腰巻きだけではなくなんかマント的な物を羽織っている。
うーん、なんでコイツ縄で縛られてんの?ワケワカメだぜ。
とりあえずこの謎の死体は放って置いて、僕は武器を回収しといた。
タガーに小型ナイフに小さな槍。大した物はなかった。まぁあんなゴブリン達にレアモノを求めるのが間違ってるんだろうけどな。
そう思えばこれだけ手に入っただけ運が良かったかもしれない。
次は死体だ。もう一匹の方もうつ伏せに倒れていて足下にはちょっと大きい石が落ちていた。どうやらこれに転んだらしい。
おでこの部分は真っ赤なお花が咲いていた。
弱い、どんだけ弱いのあのゴブリン。実は僕一人でも十分倒せたんじゃないの?
てか、これ食うの?コレ食べないとだめなの?
やだぁ人型だした第一ブサイクだし、いやイケメンならいいって問題じゃないけど。
けどこのまま放っておけばその内腐ってしまいそうだ。そうなれば何より困るのは僕。
くそぅ我慢か、我慢せにゃあかんのか!!
僕は目を閉じて思いっきり死体に噛みついた。
溢れる不味い血、レモンに噛みついたようなスッパイ皮膚、おげぇぇ吐きそう。
それでも僕は食った。無我夢中で食った。
皮はゴムみたいで不味いし血だって腐った牛乳みたいにドロドロで肉は筋ばっかりで凄く堅いし、内蔵はとてもじゃないが食えたもんじゃなかった。
どれくらいの時間がだっただろう、気が付くとあれだけ食べるのが苦痛だったゴブリンの死体も骨だけになっていた。
さすがにアソコには手をつけてないが・・・
するとまた昨日のように頭の中で声が聞こえた。
『緑小鬼を摂取。二足歩行の能力を解放します。』
え?マジ?二足歩行できるようになるの?
いちよう喋れるし、立てるようになったのなら人とコミュニケーションが出来るようになったのかもしれん。
それだと見た目完全にファンタジーのコボルトだけど。
ちゃんと立てるかどうか、少し試して見ることにした。
僕は軽くチンチンするようにヒョイッと立ってみる。
感覚は前世で培った記憶があるので修得は早かった。
立ってみると手が少し変化した。何かを握れるように手が少し大きくなったのだ。これならさっきの武器も扱えるかもしれない。
因みに四足歩行に戻ると手も前足に戻った。なかなか面白い。
顔も二足歩行の時はなんだか人間気味に変化した気がする。獣人って事なのだろうか。
ふむ、ゴブリンには腹が立ったが思わぬ収穫があったようだ。
弱かったけど。すごく不味かったけど。
さて、最後はあの謎のゴブリンの死体だな。
他と違って服は着てるけど縄で縛られて身動きが取れなそうな格好をしている。
ゴブリン達踊ってたし、武器もあった。
もしかして生け贄の儀式とかそんな感じだったのだろうか?
もしそうなら気の毒だな。せめて食わないで埋めてあげようと思う。二足歩行では道具使って穴掘れるようになったし。
正直に言うともうゴブリンが食いたくないってのが本音だけどね。
ありがとうございました。