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僕は悪い魔物じゃないお!〜犬に転生した僕は成り上がる!〜  作者: ケモナー@作者
第1章《異世界に転生したから強くなってみるお!》
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あい、じゃぱにーず!

「質問その2。あなたは産まれてどれくらい経った?」


 少女は、片手をこっちに向けるように持ち上げると、ウィスパーボイス気味のようなささやき声の小さな声で彼女は訪ねてきた。

 こちらに突き出してきた片手の指は、人差し指と中指を除いて全て握り閉じられてしまっている。指で質問の2という数字を表しているつもりなのだろう。動作がゆっくりだな。

 その質問はこちら側からしたら、僕としてはそんな少女に対して嘘を吐く理由は特に無かったので正直に答える。


「産まれてから一週間と少しかな?」


「・・・赤ちゃんから?」


「いや、成長した犬の姿で。」


 僕は自分の答えを自嘲するように肩をすくめて言った。

 自分で言うのもなんだが、流石にこれは信じられないだろう。

 今僕は産まれて直ぐ赤ちゃん過程をすっ飛ばして一週間と数日で喋れるようになって、しかも犬が武器を使って戦えるくらいまで変化したと言っているんだ。ホラ話にも程がある。


「・・・そう。」


 しかし少女は僕の返事に何でもないという風に呟いた。

 あれ?てっきり疑わると思ったんだけどな?それか信じられてもすこしは戸惑いを見せてくるとも思っていた。寧ろこういう答えは想定内だったという事なのだろうか?いや、この少女の無表情ポーカーフェイスがすごいってのもあるだろうけどさ。

 無反応とは思っていなかった。僕ビックリ。


「・・・コボルトはこの地域の環境には生息できないんだけどな?」


「そーなんだ?僕初めて知ったよ。」


 この世界の動物の事なんか知らない。知りたいとは思うけど今のところは何も分かっていない状態だ。

 とりあえず、僕の姿に似たコボルトという生物では生きていけないという事はわかった。


 「・・・変わってるね。君。」


 「へぇへぇそうでこざりますか。」


 それほどわかりやすく僕が珍しい姿をしているか、あるいは突然変異のような異常を僕から見たのか、おそらく後者だろう。さっきコボルトがどうのとか言ってたし。

 少女は最初に『僕』を殺しにきたと言った。しかも王様云々(うんぬん)はともかく、誰かに依頼されて来たということらしい。

 話を聞いたところによると、対象が要約すれば「変わった生物」。

 対象の姿形に種族すら教えてもらってないそうで、とりあえず異常が見られた生物を排除してくれとのこと。

 で、本来ここに生息できないコボルトがここに生きているから「変なの発見」という事で斬りかかってきたらしい。おいこら。

 この世界でどういう扱いかは知らないが、ファンタジーものの作品でコボルトはゴブリン同様雑魚として知られていることが多い。流石にこの世界でコボルトが伝説の存在だとかそういう類の設定であるとは考えにくい。だってこの世界のゴブリンテンプレ通り弱かったし。リンナは除外として。


 確かに遭遇時に少女は僕の外見がコボルトという事で驚いていた。だがそれはあくまでコボルトがこの荒野に生息していたという珍しいという意味でだ。本当に異常かどうかなんて本質的な事では見た目程度では分かっていないはずだ。

 コボルトはこの世界全体で見れば多く生息していると僕は考える。

 なのに僕はありふれたコボルトの外見をしているにも関わらず僕はこの少女に殺されそうになった。その理由はやはり、誰かに頼まれその標的と一致する僕を見つけたからだろう。

 ならどうやって僕を見極めた?

 それは僕が他とは違う異常性を見せたからだろう。

 少女は初めて遭遇したときにコボルトはこの地帯には生息しないと驚きながら言っていた。

 それはつまり、ここは本来僕と同じ外見であるコボルトがこの環境に適していないという事なのだと思う。

 生物がその地域で生息しているという事は、その生物がその環境に適応しているのと言うことだ。

 わかりやすく前世の生物で例えるなら、砂漠など乾燥地帯に生息する生物だろう。

 たとえばラクダ。

 ラクダを知らない人はまずいないと思う。そう、背中にコブを持つあの動物だ。最もメジャーなラクダは中央アジアに生息している二つのコブを持つフタコブラクダを想像してみてほしい。

 ラクダには背中に袋を持っているが、それがコブの正体である。あの中には脂肪が入っていて日光を遮り、また体内の熱を放出したりと、いわゆる断熱材としての機能を果たしている。

 それだけじゃない、ラクダはこのコブの脂肪でエネルギーを貯蔵して少ない食料でも耐えられるとして有名である。

 だから人が乗ったり、荷物を運ばせたりする移動手段として最適だったのだろう。歴史の中ではラクダはかなり使われていた。

 更にラクダは一度に80リットル近くの水を摂取することができる、まさに乾燥地帯ならではの構造である。その体の特徴は、食料の少ない荒野や砂漠で生き残るための力なのだ。

 他の生物を見ても、みんながみんなその特徴を持っているわけではない。ラクダ特有の構造なのである。

 乾燥に耐性を持っていない生物を砂漠に放り込んでも干からびて死ぬだけだろう。ラクダは普通に生活するのが困難である乾燥地帯で生き残る能力を持っていて、その環境に適応しているからこそ進化をして生き残っていった。

 つまり僕が何を言いたいかというと、環境による生態の逸脱。本来適さない生物であるはずの僕が環境に適応している異常性。


 少女はその異常な生態を持つ生物の討伐を依頼されたということなのだろう。

 だが依頼主は一体どこで僕を知った?

 そこがわかれば僕が狙われている原因と何か繋がる部分があるのかもしれない。

 とは言え、この少女は無表情なせいで自然と完璧なポーカーフェイスが出来上がってしまっている。つまり質問をしても嘘か真実なのかわからないのだ。

 この人の質問の言葉から抜き取っていくしかないな。質問する側から嘘を含んだ質問をするとは思えなかった。


「質問三つ目。両親はどこ?」


 そうやって僕が細かく思考しているのに、少女ののんびりな声のせいでごっちゃごっちゃになってしまう。考えるのが苦手だってのに邪魔すんな。あ、いえ質問の途中でしたねわかります。

 むう、この人形みたいな表情、小細工が通じなそうだ。苦手である。

 さてどうするか・・・なんせ僕の出せる答えなんて「目が覚めたらここにいた。」だからね。どこの小説の冒頭だよ。

 今から思い返すと・・・僕の設定ってかなり胡散臭くないか?設定ってなんだよ・・・。

 むぅ、嘘でも吐くか?相手だって本当のこと喋っているのかわかんないんだし・・・。


「・・・嘘はメーだからね?」


 コテン。


「・・・」


 そんな小首を傾げて尚且つ潤んだ瞳でこっち見るなオイやめろこらっ。

 はぁ・・・まったく。


「あーもうっ、親はいない。目が覚めたらここにいた。」


 どうせ僕だって僕自身のことをよくわかってないのだ。なら僕の中に隠さないで、実話を話して可能な限り少しでも多く情報を手に入れるほうが賢明だろう。

 それに僕の素性を話したところで僕が困るような害なんてあるはずがないのである。

 だがなんか負けた感を感じたので、僕は若干自棄っぽちにそっぽ向いて少女に答えた。


「・・・目が覚めたってどゆ事?」


「そのまんまの意味だよ、急にこの世界で目が覚めた。気がついたらこの荒野で倒れてたんだよ。」


 あえて僕が転生したとは言わない。言ったところで相手にされないかもしれないし、例え信じてもらってもかえって話がややこしくなりそうだからだ。


「・・・ふむふむなるほど。」


 少女は腕を胸元で組んで集中するかのように目を瞑って、コクンコクンと頷きながらなにやら考え始めた。

 ・・・あのさ、思っちゃうんだけどさ、今更こんな再確認するんだったらなんで初対面で斬りかかってきたの?お兄ちゃんちょっと問いただしたいんだけども?


「つまり自分を産んだ親はいない。一週間くらい前にこの場所で急に理性を持った状態で目覚めて、今日まで訳のわからない状態でサバイバルしたと?」


「まぁ平たく言うとそうだね。」


「ふむふむ」


 まぁ問いただす件は後でやるとして、今のもしかしてこの反応は・・・


「もしかして、僕の種族がわかったりするっ!?」


 僕は思わず立ち上がって強い口調で少女に問いかけた。

 自分の種族がわかったからってどうこうなるという話ではないが、今は僅かにでも情報が欲しい。それが自分の事なら尚更である。

 自分の種族がわかれば何で自分が狙われたかわかるかもしれないし、今後役に立つかもしれない。

 それに、自分の正体がなんだか気になっていたのも事実だし。


「・・・むぅ〜」


「う、うん?」


「・・・・」


「・・・・」


「・・・・」


「・・・・」


 長い。お互いの沈黙が続く。

 また少女が振り子のように揺れだしたせいで自分の瞼がウトウトしだしたその時、何か思いついたのか少女が俯いてた頭部を持ち上げてクワっとした顔で僕を見た。

 そしてこう言ってきた。


「・・・やばいテンプレ厨二設定マジウケる。ワロスwww。」


「黙れ小娘。」


 ようやく口を開いたと思ったらなんてこと言うんだ。草生やすんじゃねぇ、見えないけど口調でわかるぞこの野郎。あまりの馬鹿にした口調に僕は乱暴な口調で返した。

 オイコラやめろ無表情だった口元に嫌らしそうな笑みを浮かべるんじゃねぇよ。無表情キャラをどこに置いてきた。


「小娘とかw私16才w年上おねぇさんw生後一週間の戯言wwwww」


「・・・殴りてぇ」


 うわぁなんだこの人のノリ、滅茶苦茶ムカつくんですけど。「w」付けすぎだろ掲示板かよ。

 こっちじゃ赤子だけど心は17才なんだよ。見た目は子供、頭脳は大人なんだよ、探偵じゃないけど。


「・・・ふぅ、てか君のその展開なに?ファンタジーラノベじゃん。」


「お、おう・・・」


 少女はひときしり笑い続けると急に素に戻りやがった。それに僕はすぐに対応することは出来なかった。

 いや、てかどっちが素なんだ?今の掲示板ノリ?それともクールな方か。どっちにしろふざけてるとしか思えない。まぁ確かにそっちの言い分はよくわかるけども・・・。

 大体テンプレとか厨二設定とか自覚してるんだよ、自分でもラノベみたいだなぁとか思ってたし、こんな事同じ日本人くらいにか理解されないだろうなって・・・

 ・・・・・・・・・・・・え?


「い、今ラノベって言った!?それライトノベルの事!?」


 今椅子と机があったら僕は勢いよくガタンッと音を立てただろう速度で立ち上がった。

 僕の突然の豹変に少女は「・・・お、おう?」とさっきの僕のように若干引き気味で返答してきてくるが、そんな事はどうでもいい。

 もしかしたらこの人は僕と『同じ』なのかもしれない。

 そんな僕の期待が伝わったのか、少女は不思議そうに僕を見ていたジト目を一変させ、一気に目を見開いて人差し指を指してきた。


「・・・もしかして・・・もしかしなくても君って、『転生者』?」


「やっぱり!!」


 僕は手を握って喜びの感情をあらわにする。それはそのはずだ、この少女も僕と同じ『転生者』なのかもしれないのだから。


「・・・え?マジで?君も転生者なの?」


「マジだよ。」


「マジで?」


「マジ。」


「マジか〜」


「マジマジ」


 うわぁ、数日ぶりだけど懐かしいわ「マジ」だけで成り立たせるこの会話。リンナじゃできなかったからなぁ。

 久しぶりの転生前の会話に感動しジーンとなっていると、少女はおもむろに僕に「試験。」と言って口を再び開いた。


「・・・日本で一番高い山と言えば?」


「富士山!」


「オタクの聖地」


「秋葉原。」


「確定だね。・・・うわぁ、懐かしい。」


 少女は無表情な顔を珍しく緩ませて嬉しそうな表情を作った。

 その顔を見て、僕もゆっくりと笑顔を浮かべるのだった。

 同じ境遇に陥った同士に会っただけでここまで心が休まるとは・・・殺し合った出会いだったけど案外不運ではなかったかもしれない。

 まさかこの剣豪が元日本人だったなんて驚くだな。まぁ僕も魔物なんて驚きだろうけど。


 ・・・・・てかなんでオタクの聖地で締めたんだこの人。

 秋葉原で合格かよ。



マジ

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