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ブレイヴ・ワールド  作者: 四篠 春斗
氷の都篇
9/60

8 洞窟の支配者 III

エルトラム・アイスバーグ、極寒の氷雪地帯。このフィールドの洞窟エリアは、人型モンスター・ネテオのナワバリだ。


一見ただの洞窟に見えるが、実は違う。この洞窟、外層と内層に区切られていて、外層ではネテオの護衛兵が構えており、内層では、この洞窟の支配者・ネテオキングが君臨する。


ネテオキングは、他のネテオと違い、人間の言語を扱えるという。他のモンスターにも、人間の言語を扱えるという者はいないが。


この王に遭遇したハンター、洞窟の侵略者たちは、ネテオキングに怯え逃げまとうか、王の持つ研ぎ済まされた太刀の餌食となるか、それとも狩るか、このどれかになるが、ほとんどは最初の2つだ。


クエスト名『洞窟の支配者』

クリアー条件『ネテオキング1体の討伐』


これが、ライト達が受注したクエストだ。上位クエストを受注可能にするために、必ずクリアーしなければならない『キークエスト』であり、サクラ達にライトの実力を示す、テストでもある。


言語を扱う人型モンスター…もはや対人戦と考えた方が良さそうな気もする。それに、


「太刀を使うのか…負けられねえな」


太刀を主武器(メインウエポン)とした以上、同タイプのモンスターに負けるわけにはいかない。全力を持って斬ってやる。


「おっ、遂に到着だな」


ヨスケが漆黒の槍を抜き出す。だが、先頭はライトと言うように促してくる。トモも氷のような双剣を両手に持ちライトを見つめ、ザラキも攻撃力に特化した剣銃(ソードガン)を手に持ち、ライトとは目を合わせないように前方を見つめる。サクラはピンク色の可愛らしい剣銃を持ってずっとニヤニヤしている。


大丈夫か?この()……


ともあれ、この先は敵陣地。完全なアウェー環境。ネテオキングがいる内層に潜入するには、外層のネテオ達を相手にしなければならない。


「よし、行こう」


ライトも太刀・金剛刀を抜き、洞窟へと入っていく。薄暗く静かなこの空間は、吹雪く外とは違う寒気が流れ込んでいる。


「ん?」


洞窟に入り500mほど進んだあたりで、ライトが何かに気づく。耳を澄ますと、奥から、モンスターの声が聴こえてくる。おそらくネテオ達の声だろう。


「この奥が外層部みたいだ。みんな気を引き締めて行こう」


メンバーのほとんどが頷くと、ライトは再び前進、外層部へと近づいていく。そして、また500mほど進むと、


「…いたな」


前方に、ネテオの集団を発見。まだ、こちらには気づいていないようだ。


ライト達は、なるべく内層部の入口付近で戦いたいため、ネテオ達に気づかれないよう、岩陰と薄暗い環境を利用して進んでいく。


いいポジションに着いた。5人は戦闘体制を整える。


「いいか?みんな」


「うん、いつでもいいよ」


「僕も」


「準備OKだ」


「足手まといになるなよ」


全員の準備完了を確認したライトは、


「よし、行くぞ!!」


と、号令をかける。同時に岩陰から飛び出し、完全に油断していたネテオ達に襲いかかる。


太刀を構えてネテオの群れに飛び込んでいくライトは、襲いかかってくるネテオの攻撃を紙のようにヒラヒラと避け、斬り傷を与えていく。ヨスケもトモもザラキも、それぞれの武器の扱いにはある程度慣れているので、心配はなさそうだ。


「サクラは…」


周りを見渡す余裕ができたライトは、サクラの居場所を探す。すると、凄まじい光景を目にした。


「は⁈」


ライトは目を疑う。なぜなら、近くに誰もいない、まだ戦闘にすら参加していないネテオが、次々と倒されていくのだ。


一体誰が?


こんな暗闇の中、遠距離で狙おうなんて、ほとんど不可能だ。なら……


その時、背後から気配を感じ、振り返る。そこには、剣銃(ソードガン)の銃口を何かに向けて歩いてくるサクラの姿が。銃口からは、少し煙が上がっている。


「今の狙撃…お前がやったのか?」


ライトは混乱しながら問う。ピンク色の可愛らしい姿のサクラは、平然とした顔で、


「うん、そうだよ」


と、答える。どうやら、それがどれだけすごいのかを、理解していないようだ。サクラは、援軍として現れたネテオ達を、一瞬で狙いを定め、射抜く。しかも、しっかりと眉間を撃ち抜かれている。そんなスナイパー・サクラに、思わず見とれてしまう。


「ちょっとライト君?ちゃんと戦ってよ」


「え?あ、ああ…悪りぃ」


ライトも、太刀を持つ手に力を入れ、ネテオの集団を、割った。



「はあぁっ!!」


ライトが最後の1体となったネテオを倒し、消滅させる。そして、ネテオキングの待つ内層部の入口へと、向かっていく。


ライトは、ずっとサクラの狙撃技術の事を気にしていたが、この先には今回の標的(ターゲット)、ネテオキングが待ち構えている。考えるのは後でいい。


ライト達は、恐る恐る、抜き足差し足忍び足、慎重に内層部に入っていく。


「ここに…ネテオキングが…?」


そこは、王様の居るような場所ではなかった。薄暗いのは仕方ないが、整理が行き届いておらず、食事となる雑魚シカ型モンスター・ペペの食べカスなど、仮にも王を名乗る者が居るべき空間ではなかった。


「不潔な王様だな…どんなツラしてるのか拝んでみてぇな」


ザラキが剣銃(ソードガン)の引鉄に指を掛けながら言う。


皆が辺りを見渡すが、この場所には、ライト達5人以外は誰もいない。


「洞窟ってここよね…?さっきネテオもいたし」


サクラが誰かしらに問う。もちろん、返答はない。


その時、


「キサマラ…ナニモノ…」


背後から、高さは普通たが、ロボットのように片言で話す声が聴こえてきた。


『んな…!!!』


「きゃあ!!!」


5人が振り返ると、そこには、オレンジ色の仮面を深々と被り、顔は決して見せないと言わんばかりの人が、背筋をピシーンと伸ばして立っている。


「キサマラ…モクテキ…ナニ」


仮面の人が問いかけてくる。ライトは、なにかのラッキーイベントの開催か何かだと期待し、


「この洞窟のボスを倒しにきた」


と、答えた。すると、仮面の下の顔が、険しくなったような気がした。そして、仮面の人は、腰にかけた太刀を抜く。


ここで全員が悟った。言語を扱う太刀使いの人型モンスター・ネテオキング、正しくコイツがそうだと。


ネテオキングは、太刀を構えて攻撃体制をとる。そしてライト達に言う。


「キサマラ…シンリャクシャ…ココ…イエ…ワレワレノ」


ネテオキングは、地面を強く蹴り、ライト達に斬りかかってくる。その刃を、ライトの太刀・金剛刀がしっかりと受け止める。


「キサマラ…テキ…コロス」


仮面の下の顔が、小さく笑った。


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