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ブレイヴ・ワールド  作者: 四篠 春斗
氷の都篇
8/60

7 洞窟の支配者 II

「私、サクラっていうの。ねぇ!もし良かったら、私のパーティーに入らない?」


あまりにも唐突すぎる勧誘だ。確かに勧誘されたら受けると決めていたが、勧誘来るの早すぎだし、めっちゃ真剣な顔してるから断りづらい。


「えーっと…別にいいけど、あの〜レベルは…」


「あっ、そっか。誘われても、私が誰かとかわかんないとね」


サクラは、水晶に触れ、ステータスウィンドウを開く。そこには、【Sakura】というプレイヤー名の者のステータスが表示される。


「Lv.66…開始24日目!?!?!」


ライトはサクラのレベルとプレイ日数を知り、一気にサクラから離れていく。


「ん?どしたの?」


サクラが首を傾げて尋ねてくる。


「どうしたって…お前、まだ1ヶ月も経たない内にここまで来たのか?」


「うん、そうだよ」


「その…すごいスピードだな」


「だって4人組パーティーで攻略してるもん」


「そ、そうか」


いや、それにしても速すぎだろ…


ライトはLv.74になるまで1ヶ月半かかったのだ。その僅か8歩後ろまで、1ヶ月もかからずに来たというのか、この()は。


「てか、4人組パーティー組んでんなら俺要らないだろ」


ライトがそう言うと、サクラは「やっぱりそれ言うか」というような困った顔をしている。


「そ、そこのおじさんがね、次のキークエストは4人でも厳しいかもしれないから、人数を増やした方がいいって」


「だったら他のパーティーに声かけたのか?今はソロの俺に声かけたって、1人しか人数は増えねえぞ?」


「…うう」


サクラがへんな声を出した。サクラは、ムーっとした顔をライトに向け、じっとライトの両眼を見つめた。


「へ?」


じーーーーー………


「わ、わかった…組むよ…」


ライトがハアーっとため息をついた。サクラはさっきのムーっとした顔を一気に豹変させて、清々しい笑顔を浮かべている。


「本当!?やったね!」


サクラは、嬉しそうに跳び上がると、左手を差し出して、


「よろしくね」


ライトも、差し出された左手を掴んでガッチリと握手をする。


「ライトだ。よろしく」


「ライト君か。カッコイイね」


サクラは何やらウィンドウを操作していたが、しばらくして動きを止める。すると、今度はライトの水晶からウィンドウが表示され、『FRIENDS』のページが開かれていた。


『Sakuraさんからフレンド申請が届いています』


「せっかく仲間になるんだから、フレンドにならないとね。フレンドじゃないと、アイテムトレードとかもできないし」


ライトは『承認』を押した。すると、今まで白紙だったフレンドリストに、『Sakura』という名が記録されていた。


ライトはサクラの方を見た。すると、ライトの視線に気づいたサクラが、満面の笑みを浮かべて、


「じゃあ改めて、よろしく!ライト君」


「ああ。よろしく、サクラ」


「じゃあ、みんなのところに行こっか。紹介するよ」


「ああ」


そう言って、黄色の太刀使いと、桜色の剣銃使いは、クエストカウンター前のロビーを出て行った。


「で…どこに行くんだ?」


クエストカウンターのあるエルトラム総督府を出て、エルトラム中心街を歩くライトとサクラ。


「ん?ああ、ここから近いところにある宿」


「宿?なんで宿なんかに?」


レベルからして、彼女もこのエルトラムを拠点にしただろう。なら、宿なんか使わなくても、裏町へは帰れるはずだ。


「宿に泊まるんじゃないよ、今日、ライト君を勧誘するって決めてたから、宿の部屋借りて、そこで自己紹介とかしてもらおうと思って」


サクラが可愛らしい笑顔で答える。


なんだ、そういうことか。


「ん?待て、今日俺を勧誘するのを決めてたって言ったか?じゃあ、前から俺の事知ってたのか?」


そう、彼女が言う事が正しければ、こういう事になる。ライトはサクラと初対面のつもりだった。だが、彼女は、話こそしなかったとはいえ、俺の事を知ってて、おそらく、クエストの進行状況も知っている。


「うん、知ってたよ。有名だもん」


「は?有名?俺が?」


サクラがコクっと頷く。なぜ有名なのかわからないライトは、首を傾げて、頭の上にクエスチョンマークを3つほど浮かばせている。


「ほら、この前ライト君、ブルームをソロで討伐したでしょ?あれ、結構エルトラムで有名になってるんだよ?」


ブルームというのは、ライトが先日討伐した青い身体の巨人のモンスターだ。上級者ならソロは簡単だが、ライトのような初心者と中級者の狭間にいるようなハンターにはとてもソロは困難なんだそうだ。


「それに君目立つから、覚えやすいしね」


サクラがからかうように言う。


そりゃあ目立つよ…黄色いんだから。


「はは…」


こうした会話をしているうちに、サクラの仲間達が待つ宿に到着した。


「さ、ここだよ。早速挨拶しに行こ」


ライトとサクラは、2人で宿の中に入って行った。それを周囲の大人達が、「まさか…」という眼で見ていた事を、2人は知る由もない。



「えっと…ライトです。よろしく」


エルトラム裏町の住宅地にあるアパートの一室。少し広めの部屋に、男が3人、女が1人が、目の前に座る黄色の装備の少年に視線を送る。


ライトが自己紹介をすると、小さな拍手が起こった。その後、双剣を背負ったロン毛の少年が、


「俺はトモ。主武器(メインウエポン)は双剣だ。よろしくな」


と、自己紹介をした。


「僕はヨスケ、槍を使うよ。よろしくね」


次に口を開いたのは、きちんと整えられた髪型の槍使いの少年。ヨスケは、槍を持つと、華麗に槍を振り回し、自分の槍の実力をアピールする。


「俺はザラキ。サクラと同じ、剣銃を使ってるんだ」


全身黒ずくめの剣銃使いは、剣銃を持ち、剣の切っ先をライトに向ける。そして、


「フン…お前になんか…絶対負けねーわ」


「は?」


訳がわからず、ライトは混乱する。すると、トモと名乗った双剣使いの少年が、


「こいつな、サクラに片思い中なんだよ」


と、ライトの耳元でち〜〜さな声でヒソヒソと言う。それを聞いたライトは、ザラキに近づいて行くと、


「仲間なんだから、仲良くやろうぜ」


と、握手を求めた。


なんだ、普通に話せるじゃん、と、思う人も多いと思うが、ライトは人と話すのは比較的得意だ。ただ、信じることができないだけで。


ザラキは、フン、と鼻を鳴らし顔を横に向けると、握手にも応じず、


「足手まといになるなよ」


と、上から目線で言う。


「はは…そっちもな」


「なにぃ!?」


ザラキが寄ってかかるが、ライトは笑みを浮かべ、まったく動じない。そこに、サクラが入ってきて、


「みんな、ライト君とフレンドになって!ならないと不便でしょ?」


と、手をパンパンと叩く。トモとヨスケは、それに従い、ライトにフレンド申請を送り、ライトは承認した。


その後すぐに、ザラキからも申請が届いた。ライトは、こいつは中々申請送ろうとしないだろう、なんて思っていたが、案外アッサリと来たので、少し驚いた。


全員のフレンド登録が済むと、サクラが突然提案をしてくる。


「さあさあ!レベル上げついでに、ライト君の実力を見せてもらうことにしない?」


「⁈」


抜き打ちテストをする、みたいなことを言われた気分になったライトは、声には出さずとも、表情が変わった。


「お、いいねぇ、それ」


「太刀使いとの協力も、始めてだし」


「ガッカリさせんじゃねぇぞ」


他のメンバーもすっかり乗り気だ。これで断れば、ただの腰抜けと思われてしまう。


「わかった。よろしく頼むよ」


まあ、いいか。このパーティーがどんな戦いをするのかも見てみたかったし。遅かれ早かれみんなの前で戦うことになるし。


「よし!じゃあ、早速行こっか!『ネテオキング』のクエスト貼るから参加してね!」


「気が早いな。まずクエストカウンターに行かないとな」


サクラが先陣を切って、部屋から出て行く。それに続くように、トモ、ヨスケ、ザラキも出て行く。


これが、しばらくお世話になるパーティーか。なんかライバル心全開のヤツもいるが、上手くやっていけそうな気がする。


『足手まといになるなよ』


先ほどのザラキの言葉を、頭の中で復唱する。


「上等だ…よし、行くか!」


ライトは、勢いよく扉から出て行った。







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