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ブレイヴ・ワールド  作者: 四篠 春斗
氷の都篇
47/60

46 氷山の帯 X

ディオルガの尾の鞭を平然と止めて見せたライト。


サクラ達が唖然として見つめる中、ライトは『超人』の脚力で飛躍、【祭囃子(まつりばやし)】に『火事場』の馬鹿力を纏わせ、ディオルガの弱点(ウィークポイント)

である顎に強烈な斬撃を喰らわす。


呻き声を上げ、ディオルガは後ろに仰け反って倒れた。まだ、ディオルガの激昂状態は収まらない。


「ライト君…今のは……」


HP全回復アイテム・ヒールジェラートでHPを満タンにしたサクラが、赤い煙を噴き上げるライトに駆け寄り、訊ねた。


「わかんない」


「え?」


想定外の答えに、サクラの声は裏返る。


「わからないって…」


「ホントにわかんねぇんだ。気づいたら、なんか俺、鋼鉄みたいに硬いみたいだしさ」


ライトは頭を掻きながら、そう話した。


「おいッ!!!ディオルガが起きるぞ!!!!」


ウェルゴがライトとサクラに大声で伝える。皆も、回復アイテムとスタミナアイテムでHPとスタミナを回復させたようだ、HPゲージとスタミナゲージが皆(ライトを除く)満タンだ。スタミナゲージはライトも満タンだが。


「詳しい話は後だ。つっても、俺自身も全然わかってねぇんだけどな」


「うん」


ライトとサクラは、武器を構える皆の元へと向かった。


残りHPは30パーセントほどのディオルガが、蛇状の身体をくねらせながら上体を起こす。


ォォォォォォォォォォォオオオオオオォォォォォォォォォォォォォオォォォオオォオオォォォオオオオォォォオォォォォォォオォオオォォォオォオオォッッッ!!!!!!


起き上がったディオルガは、もはやディオルガとは言い難い姿になっていた。


身体は真っ赤っか。怒りのあまり体温が急上昇しているのだろう、全身から湯気が噴いている。(なんだかライトに似てると、サクラが思ってしまったのは秘密)


「皆!!俺がディオルガの気を引く!!その隙に持ってるだけの『落とし穴』仕掛けてくれ!!!!」


「待ってくれ。囮になるなら、僕もなろう」


最後の作戦を告げたライトに、レオが話しかけた。そのレオの隣には、妹・ユヅル。


「大丈夫か?死ぬなよ」


「私達を誰だと思ってるのよ?」


ユヅルが不敵な笑みを浮かべる。


ライトは敵わないと両手を小さく広げ、思わず苦笑い。


「わかった、よろしく頼む。シーフ、ウェルゴは『落とし穴』を仕掛けてくれ」


ライトは持っていた『落とし穴』を地面に落とす。レオやユヅルも、同じように『落とし穴』を落とした。


「了解」


「気をつけてくださいね」


ウェルゴ、シーフがこれを受諾。作戦は整った。


「サクラ。俺のサポートを頼む。今の俺はHPが減らないみたいだけど、またいつ元に戻るかはわからないしな」


ライトとサクラは向かい合い、目を合わせた。



「それに、守りたいやつの前に立ってないと、守ってる感じがしないだろ?」


サクラは、心臓が爆発しそうなくらいドキドキしているのを隠し、ライトに笑みを見せた。不謹慎ではあるが、「守りたいやつ」なんて男の子に言われたら、ドキドキしない方がおかしいだろうと、サクラは思う。


「うん!任せて!!!」


サクラは頬を赤いリンゴの色に染めて、【マグニレボルズ・ライフル】をしっかりと抱き、ライトに笑顔で返事をした。


「さぁ、行こう!!!!」


ライトは赤い煙を纏い、かなりの激昂状態となって湯気を噴き上げるディオルガを見据える。


ディオルガが気になるように、ライト、サクラ、レオ、ユヅルは走り回る。ライトに至っては、あっかんべーまでしている。


ライトのあっかんべーが効いたのかはわからないが、ディオルガは寒気・冷気を一気に集めてアイスボールを作ると、ライト達4人を目掛けて発射した。


致命傷になり得るアイスボールは、空中で何かに複数の穴を開けられ、そのまま大気中に散っていった。


ユヅルの『連射』スキルによる、文字通りの連射攻撃だ。少しだけ狙いをズラして放った矢は、狙いから誤差なく命中し、アイスボールを破壊したのだ。


どうやらそれが気に食わなかったようで、ディオルガは何発ものアイスボールを繰り出してきた。その度にユヅルとサクラは狙撃で対応し、レオは『跳躍』の応用で地面を素早く蹴って()わす。ライトは避ける必要などない。


激昂すると気が短くなるというのは、人間もモンスターも同じなようで、たかだか2、3発アイスボールをあしらわれただけで、ディオルガの苛立ちは最高潮に。凄まじい咆哮と共に、(くれない)に染まった尾を振り上げた。


その時、ディオルガの巨体は、ガクンと傾いた。見ると、大きな右前脚が穴にスッポリとはまっている。シーフとウェルゴが仕掛けた『落とし穴』だ。


『落とし穴』は、普通のボスモンスターを嵌めるのに有効な罠で、ディオルガのような超巨大モンスターには、こんな小さな『落とし穴』は通用しない。


だが、1つ1つでは小さな『落とし穴』を、大きな丸を作るように並べたらどうだろうか。


そう、大きな『落とし穴』を作る事が可能なのだ。小さな『落とし穴』を多く使って大きな『落とし穴』を仕掛ける。塵も積もれば山となるというのは、まさにこういう事だ。


「一斉攻撃だぁ!!!!」


動きが制限されたディオルガに、ライト達は容赦なくダメージを与える。ディオルガのHPは、みるみる減っていく。


ディオルガのHPが残り僅かとなった時、大きな『落とし穴』は暴れたディオルガによって破壊された。


ォォォォォォォォォォォォォォオオオォォォッッッ!!!!!!!!!!


ディオルガの雄叫びによる音波が、ライト達に襲いかかる。


今は無敵のライト、盾を持つレオとユヅル以外のメンバーは、その音波に吹き飛ばされてしまう。


吹き飛ばされたサクラ達は、ダメージを負っているようだが、そこまで大きなダメージではなかったようだ。だが、今のディオルガの攻撃力は計り知れない。ディオルガも危うい状態なら、ここはライト達が押し切るしかない。


「レオッ!!!!!」


「OK!!!!!」


ライトは【氷刀(ひょうとう)祭囃子(まつりばやし)】に、レオは【黒氷(こくひょう)・デウス】にありったけのスタミナを纏わせ、刃から神々しい光を発光させる。


ライトは『超人』の脚力で、レオは自慢の『跳躍』で、空を翔けた。


向かってくる人間を返り討ちにしようと、ディオルガはアイスボールを生成し始めた。寒気・冷気の塊は、どんどん大きくなる。


「うおおおぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」


「ハァァァァァァァァァァアアアァッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」


神々しい輝きを得た2本の刃が、ディオルガの顎を斬り割く。


ライトとレオは顎を完全に断ち、ディオルガの顔と胴体の境界をなぞって刀を、片手剣を振り切った。


ディオルガのHPが左端に到達し、やがてその表示は消える。


作りかけの寒気・冷気の塊は、この氷山を漂う空気の姿に戻っていく。


宙で敵を討ったライトとレオは、それぞれの武器を鞘に納める。


チンッ


その瞬間、巨大な蛇型モンスター・ディオルガは淡い光に包まれ、やがて光の塵となって爆散した。


クエストクリアーのファンファーレが、開放感に満ちた氷山フィールドに響き渡る。


ライトとレオは着地すると、仲間達の方を向いた。


サクラ、ユヅル、シーフ、ウェルゴは、皆が喜びに満ちた笑顔でこちらに視線を送っていた。


「ライト君!!!」


サクラが愛用の【マグニレボルズ・ライフル】を片手に、ライトに飛びつく。彼女の顔は、少しだけ涙に濡れていた。勿論、悲しい涙を流しているのではなく、嬉しいから涙を流しているのだ。


「…終わったね」


「ああ…第一関門突破だ」


ライトはサクラの頭をそっと撫で、優しい声で、サクラにも聴こえないほどの小さな声でボソリと言った。


「ずっと…守り続けるから」



エルトラム中心街・最終クエスト『氷山の帯』


アイテムを使い切るほど死力を尽くした6人のハンター達は、1人の犠牲者も出すことなく、蛇竜との闘いを制したのだった。





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