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ブレイヴ・ワールド  作者: 四篠 春斗
氷の都篇
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26 雑草たちの謀略 VI

『なんだ…これ…』


掌にある鍵。何処(どこ)にでもありそうな、何の変哲もない鍵。それを見て、ライトとレオは呟く。


「それは『虚空の鍵』だ。それを使えば、君たちが望む所に、その鍵は門を開けてくれる。どこにでも(・・・・・)、な」


黒ローブの男が穏やかな口調で言う。そして、ライトとレオに背を向け、


「必ず、救い出したまえ」


と言い、去ろうと歩き出す。


「ちょっと!!」


ライトは鍵を握りしめたまま、黒ローブの男を呼び止めようと叫ぶ。


「なんで、俺らにこれをくれるんだ?」


無視して歩き続けていた黒ローブの男は、その時初めて止まった。そして振り返り、


「言っただろう。君達にはまだ終わってもらっては困るのだよ」


「困る…?それは、どういう…」


「いずれ、解る時が来るだろう」


黒ローブの男は、ローブをはためかせて再び背を向けると、クエストカウンターから消えて行った。


「誰だったんだ…あいつ…」


「さあ…でも、僕達を助けてくれた…のだろう?」


「……そう…なのか?」


確かに、黒ローブの男はアイテム『虚空の鍵』をライト達にくれた。だが、本当にそれを使えばサクラ達の所へ行けるのかという保証はない。嘘の可能性もある。


ライトは鍵をアイテムBOXに戻し、なんとなくそれを確認しようと、『虚空の鍵』のアイコンをタップする。


「っな……?!?なんだよ…これ…」


「……?どうした?」


驚愕するライトに、レオが目を向ける。そして、ライトが眺めるアイテムBOXのウィンドウを、ライトの後ろから見る。


「レア度『∞(無限)』…??なんだ、それは…」


|∞(無限)。則ち未知数(アンノウン)。稀少価値、利用価値、入手難易度、全てにおいてが未知。そんな外部からの持ち込みチートアイテムのような物が、この世界(ブレイヴ・ワールド)に存在するのだろうか。


だが、今はそれを考えている暇はない。


あの黒ローブを完全に信じたわけではない。だが、試す価値は、充分にある。


「よし、行こう!!」


ライトはそう号すると、アイテムBOXから『虚空の鍵』をオブジェクト化、それを強く握りしめた。



暗転した意識が帰ってくる。まだ頭がボンヤリして、眼もしっかりと開かずに、視界はボヤけている。


あれ…?私……


混沌に呑まれた思考回路が、まだ寝起きの脳に刺激をかける。そして完全に覚醒する。


「お、目覚めたね?」


男の声。目の前には複数の男のハンターが、目を開けたサクラに気づき、待ってましたと声を上げる。


「あなたたち……」


男達に詰め寄ろうと脚を動かしたが、サクラの身体は何かに止められてしまう。


「何これ…」


気付くと、サクラの両脚はしっかりと足枷(あしかせ)で動きを封じられており、両手は頭の上で縛られ、更に頭上の木柱に結ばれている。


横を見れば、ユヅルもサクラと同じように(はりつけ)にされている。


「なんのつもりよ…」


ユヅルが鋭い口調で言葉を突き刺す。だが男達は、そんなユヅルに怯むよか、笑い始めた。


「怖いね〜お姉さん。ま、すぐには殺さないから安心しな」


男の1人が軽く言ってのける。


殺す…?私達を?


何故、殺されなければならないのか、ユヅルはさっぱり見当がつかなかった。だが、隣のサクラが、心当たりがあるような顔をしている。


「あの時は散々コケにしてくれたなぁ?たった14秒でKOとか、シャレになんねぇよ」


その台詞で、ユヅルは誘拐された理由を悟った。


兄・レオ&ユヅル対雑草たち(ウィーズ)の『乱闘』。そこでユヅルとレオは、雑草たち(ウィーズ)をホントあっという間に倒し、彼らの持つアイテムをほとんど貰ったのだ。


それの復讐という事は、目の前にいる男達は雑草たち(ウィーズ)幻鳥(げんちょう)・シグフィールの討伐を手伝って欲しいなんていうのは嘘で、始めからこれが目的だったのだろう。


今サクラとユヅルがいるのは、エルトラム・アイスバーグの森林地帯。ただの景観オブジェクトである木造の廃小屋の中だ。いくらボロボロでもオブジェクト、途轍もない衝撃が掛からない限り、この廃小屋は壊れない。サクラとユヅルの身体も、頭上の木柱がしっかりと支えている。


「私達を…どうするつもり…?」


サクラが雑草たち(ウィーズ)に問う。すると雑草たち(ウィーズ)の1人が答えた。


「じっっっっっくりと楽しんでから、殺すよ?あ、シグフィールもちゃんと片付けるから安心して、君達の苦労は無駄にはしないさ」


得意げなその口調に、サクラとユヅルは葉を食いしばり、悔しさを露わにした。そして、少しの恐怖。


「じゃ、始めようか」


誰かの号令と共に、雑草たち(ウィーズ)はサクラとユヅルの周りに集まる。


「きゃ…!!何を!!」


「な……やめてよ!!!」


サクラとユヅルが悲鳴を上げる。雑草たち(ウィーズ)が、サクラとユヅルの身体のあちこちを、ベタベタと触っているのだ。顔から胸、腹や太腿(ふともも)、複数の手に一度に触れられる気持ち悪い感触を拒絶するその声が、雑草たち(ウィーズ)を更に興奮させる。


「暴れるところを強引に、っていうのもイイけど、ちょっと大人しくしててもらおうかな」


サクラとユヅルの背後に、1人ずつ雑草たち(ウィーズ)が回り込む。そして、ウィンドウを操作して何かを取り出し、それをサクラとユヅルの首の根元に突き刺した。


「…っぁ……」


「……な…に…」


全身の力が抜けていく。やがて指の先すら動かせないくらいまで脱力し、サクラとユヅルはほぼ宙吊りの状態になる。おそらく、脱力剤かなんかを投与されたのだろう。


「ひっ……」


ニヤニヤと顔を近づけてくる雑草たち(ウィーズ)に恐れを感じたサクラが、喉から(かす)れた悲鳴を出す。


「ねぇ、知ってる?子どもを作る方法」


雑草たち(ウィーズ)がサクラとユヅルに問いかける。2人は横に首を振った。そんなものに興味はないし、今まで攻略に励んできた2人が、そんな事を知っているはずがない。


「そっか〜、じゃあ教えてあげるよ」


「異性と30分間、インターバル3秒は可能、というルールで濃密キスをし続ければ、女の方の身体に子どもが宿って、予定日が来ると生まれるんだ。どう?楽しそうでしょ?」


この世界(ブレイヴ・ワールド)での妊娠、それは30分間の濃密キスによって可能となる。途中に3秒のインターバルを挟む事も可能で、それを達成すれば、子どもを授かれるというわけだ。だが、キスという行為が必要なため、強制的な妊娠を避けるべく、女性側がキスされた時、女性本人のみが触れられるハラスメント報告ウィンドウが表示され、報告すると男性側が牢屋行きというシステムがあり、望まない妊娠の数は少なく収まっている。


今、それを話したという事は…嫌な予感に身も心も震えるサクラとユヅル。


雑草たち(ウィーズ)はニタッと気味悪い笑みを浮かべて、


「今ヤっちゃお!」


と強引にサクラの唇を自分の唇に押し付ける。


「っん!んん、んっ!!」


力の入らないサクラは、口を閉じる事すらできず、自分の口内を他人の舌でかき混ぜられる不快に耐え切れずに涙を流す。


目の前にはハラスメント報告のウィンドウ。だが、両手が縛られているため、サクラはウィンドウをタップできない。


ユヅルも、強引に濃密キスをされ、声だけで足掻いている。そんな彼女の身体を、別の雑草たち(ウィーズ)が下心のみ纏った手で触りまくる。


「んんっ‼…んっ…」


サクラの身体にも、すぐに汚い手が当てられた。この世界には『触られている』という感触しかなく、『感じる』とか、そんなものは一切ない。だが、女性として触れられたくない部分を触れられ、サクラとユヅルは悶え苦しむ。


何より、現実世界(リアル)でも未経験のキスを、つまりファーストキスをこんな男に奪われたという悔しさが、サクラの涙腺を一気に崩壊させる。


「いいネェいいネェいいネェ、お乳大っきいのいいネェ!!」


「お腹のラインもいいネェ!ホントにいいネェ!!」


発言も狂い始めた雑草たち(ウィーズ)。すると調子に乗った2人の雑草たち(ウィーズ)が、サクラとユヅルの方に分かれてしゃがみ、


「では!禁断の秘境に!!踏み込みます!!!」


と、サクラとユヅルのスカート型の防具の中に手を入れる。


「んんん!んんんんッッ!!!!!」


サクラとユヅルは無抵抗に濃密キスをされたまま、必死に逃れようと身体を動かす。だが、力が入らずに身体は動かない。


雑草たち(ウィーズ)の手が、サクラとユヅルの中に入り、そして………その手の動きは止められた。とても大きな爆音によって。



ボガアァァァォァアアン!!!!!!!!



その時、物凄い爆音と共に、廃小屋オブジェクトの入口が吹き飛んだ。


「な、なんだぁ!!?」


雑草たち(ウィーズ)が一斉に音の先を見つめる。おかげで、サクラとユヅルの唇は開放された。


室内は煙に包まれる。外から射し込む光が、それの一部を遮る2つの影をくっきりと映し出す。


「誰だぁ!!!」


雑草たち(ウィーズ)の1人がご立腹で入口に向かう。その時、2つの影は消えた。そして、


「うわあぁあぁぁぁあ!!!」


入口付近にいた雑草たち(ウィーズ)は呻き声を上げ、ヨロヨロと振り向く。その雑草たち(ウィーズ)の両腕が、ものの見事に無くなっている。


皆が視線を集める先、消えた2つの影の持ち主は、サクラとユヅルの目の前で、愛用のその剣を背中の鞘の中に収めた。

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