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ブレイヴ・ワールド  作者: 四篠 春斗
氷の都篇
19/60

18 音速の破壊者 IV

「明日でいい、俺らと勝負しようぜ」


ときめく青春の1ページが刻まれるこのエルトラム・メイン広場。現実世界(リアル)で「爆発しろ」と叩かれる…訂正、嫉妬の対象となるリア充の思い出作りが盛んなこの場所で、何やら争いが起ころうとしている。


噴水の外周に腰掛けるリア充(カップル)…否定!兄妹と、その2人の前に立つ黄色と桃色の2人組。


「『乱闘(・・)』をするってこと…?」


兄妹の妹・ユヅルが問う。乱闘を申し込まれる理由を悟ったからなのか、少し呆れたような顔を薄っすらしている。


「まさか…昼間の仕返しか?」


「おい…まず妹の質問に答えさせろよ」


ユヅルの問いに間を入れずに追加質問してきた兄・レオに、黄色の少年・ライトが疲れたように息を吐く。


「ユヅルちゃんの質問の答えだけど、一応『乱闘』なんだけど、形式としては2対2のタッグマッチってところかな」


今度はピンクの少女・サクラがユヅルの質問に回答する。この『ブレイヴ・ワールド』には、命を危険に晒さずに手合わせや決闘をする場が『乱闘』以外には存在しない。乱闘と言うと、ケンカっぽく聴こえたりしてしまい、必要なら(・・・・)行うが、好んで積極的に(・・・・・・・)乱闘を行うハンターは少ないらしい。今回ライト達が申し込んだのは正当な『決闘』であって、雑草たち(ウィーズ)がやりそうな『大乱闘』とは全く違う。


「ほう…決闘をね…昼間の仕返しにかい?」


レオのこの日2回目の質問。


「まさか。『昼間の件』はせっかく出会えた『音速の破壊者(あんたら)』と接触するための口実として利用しただけ」


ライトが得意げに答える。それを聴いた『音速の破壊者(ソニック・ブレイカー)』は安心したのか、それとも「いい度胸だ」と思ったのかは解らないが、笑みを浮かべて立ち上がり、黒ずくめと白ずくめ、それぞれの羽織るマントをはためかせる。


「いいだろう。その『決闘(・・)』、受けて立とうじゃないか」


兄・レオが妹・ユヅルの手を取り、そのまま前に突き出す。


「決まりだな。じゃあ明日の10時、総督府3階のカウンター前に集合。それでいいか?」


「ええ。いいわ」


突如決まった決闘の前夜、この日もいつもと変わらずに雪で化粧をした街が、部屋から漏れる灯りに照らされている……。



決闘当日。


決闘の舞台は、かつて総督府が構えていた街、エルトラム中心街。だが、世界の王(オシリス)襲来によって壊滅し、現在のエルトラム中心街が完成、ここは完全に放置され、廃墟となっている。


その元エルトラム中心街の中に、隕石が墜落したような大穴(クレーター)がある。直径は500mほど、地上からの深さは軽く50mを突破しているだろう。


大穴(クレーター)の中に、2人の剣士。


1人は黒ずくめのマントの男。中型飛竜ボスモンスター・デウスの素材を使用した黒いマント、右手に同じくデウスの堅い外殻を存分に使った片手剣【黒氷(こくひょう)デウス】、左手には片手剣とセットの盾を装備している、『音速の破壊者(ソニック・ブレイカー)』の兄・レオ。


そのレオと対峙しているもう1人の剣士、狼型ボスモンスター・デディロンの黄色いロングコート型の防具で身を包み、狐型ボスモンスター・フォルスの牙や爪や皮膚を使った氷色の太刀【氷刀(ひょうとう)(うたげ)】を背中の黒い鞘に収めている、『舞う銃剣(ダンス・ベイオネット)』の剣士・ライト。


そして大穴(クレーター)の岸壁。お互い大穴(クレーター)を挟んで向き合う形で立つ2人の少女。土風が吹く中、マントやコートを(なび)かせながら、大穴(クレーター)の中を見つめている。


少女の1人、フォルスの白い素材を使った白ずくめのマントを羽織り、腰のホルスターには何十本の矢が蓄えられている。扱う弓は兄同様、中型飛竜ボスモンスター・デウスの鱗を使用した【黒威(こくい)氷弓(ひょうきゅう)】。『音速の破壊者(ソニック・ブレイカー)』の妹にして、最高の弓使い・ユヅル。


反対側の岸壁、一際目立つピンク色のセミロングコートとミニスカート型の防具は、エルトラム氷雪フィールドにある湖に生息するサメ型ボスモンスター・シャロームの装備だ。最初は(みにく)い茶色だったが、武器屋のおじさんに染料を渡してピンクに染めてもらったらしい。そして両手で胸の前に持つスナイパーライフル【マグニレボルズ・ライフル】は、武器屋に渡し加工する事で武器となる鉱石『武鉱石(ウエポンズ・ストーン)』を加工した事で得たレアな銃だ。それを持つのは、『舞う銃剣(ダンス・ベイオネット)』の狙撃手(スナイパー)・サクラ。



こうして行われる『舞う銃剣(ダンス・ベイオネット)』vs『音速の破壊者(ソニック・ブレイカー)』の決闘のルールは次のようになっている。


1.制限時間は180秒。時間切れ(タイムオーバー)の場合は引き分け(ドロー)

2.両チーム勝利条件は『相手の剣士の脱落』。ただし、『乱闘』自体は勝利条件を満たしても終わらないため、脱落した剣士の仲間は自爆するか、もしくは棄権(リザイン)しなければならない。

3.麻痺効果や拘束能力のある武器やアイテム、もしくは弾や矢の使用は禁止。



「そろそろ始まるか…?噂通りか見せてもらうぜ?」


「フフ…君も二つ名を持つのに相応しいか、確かめさせてもらうよ」


ライトとレオが、開始の合図(ゴング)が鳴るまでの間、ちょっとした駆け引きを行う。


「しっかり実力を示せ」とプレッシャーを与え、相手を萎縮させようという、ほぼ100%無駄になる駆け引き……。


「ところで…」


「ん…?」


「このめっちゃ飛んでる物体なに?」


ライトは空を飛ぶ物体を指差し、レオに問いかけた。


「あれは多分、カメラだよ。生中継されてるんだ」


「生中継?なんで俺らが『決闘』するって漏れてんだ?」


「さぁ…昨日誰かが盗み聞きでもしてたんじゃないのか?」


そういえば今朝はクエストカウンター前はやけに人が多く集まってると思ったが、皆がこの『決闘』の見物人なら、合点がいく。レオが推測した、盗み聞きの線も濃くなる。


まぁ、どうでもいい話なのだが


ライトとレオの会話が終わり、沈黙が訪れる。サクラは【マグニレボルズ・ライフル】を構え、スコープを覗いている。ユヅルも矢を装填し、指を離せば矢が放たれる状態。


戦闘準備は整った。そして、カウントダウンが始まる。


5…4…


ライトとレオが鞘からそれぞれの剣を抜く。


2…1…


ゴオォォォォォォン…


0と表示された残り時間が、180の文字に変わる。


舞う銃剣(ダンス・ベイオネット)』vs『音速の破壊者(ソニック・ブレイカー)


『決闘』の始まりを告げる【開始の合図(ゴング)】が、エルトラム中心街の廃墟に甲高く、そして沈むように鳴り響いた。



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