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ブレイヴ・ワールド  作者: 四篠 春斗
氷の都篇
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11 本当の信頼 II

氷狐の大宴会…エルトラム中心街の上級クエストを受ける資格を得るためにクリアーしたければならない、難易度高の最終関門のクエスト。


舞台はエルトラム・アイスバーグの氷雪地帯の一部に設置された闘技場。討伐対象(ターゲット)の狐型モンスター・フォルスは、闘技場に置かれた大好物の猪型モンスター・エポに食いつき、闘技場に侵入する。その侵入してきたところを討伐するのがこのクエストの最終目的だ。


エルトラム中心街・クエストカウンター前。5人組の少年少女のパーティーが、その難関クエスト『氷狐の大宴会』を受注しようとしている。


出現したクエスト選択ウィンドウから、『氷狐の大宴会』を選択するピンク色の装備の少女・サクラ。その後ろでは男4人が、操作完了を待っている。


その4人の1人、ライトは少なからずこのクエストの攻略に不安を感じていた。いや、「少なからず」ではない、「大きな」不安を感じていた。


ライトが不安に感じる理由、それは、このクエストに出現する狐型モンスター・フォルスの数が不明だということ。クエスト詳細を確認しても、クエストクリアー条件は『全てのフォルスの討伐』とだけしか記されておらず、具体的な頭数は伏せられている。もしかしたら、5人では討伐しきれない数が出てくる可能性もあるということだ。


そんな不安な気持ちを気づかぬうちに顔に出してしまっていたライトに気づいたトモが、


「大丈夫だってライト。このクリアーした先輩達によれば、出てきても5頭らしいぞ。1人1頭やれば勝てるって」


いつ調べたのだろうか、トモはどこぞの先輩に聞いた情報をライトに教える。


「そうなのか。ならいけるかな」


その先輩の情報を完全に信用したわけではない。だが、その情報がライトの不安を少し吹き飛ばしてくれたのも事実だ。


「さ!みんな、クエスト受注したよ!出発しよう!」


サクラが出陣の号をかける。


「おう!」


「うん」


「ああ」


トモ・ヨスケ・ザラキがそれに応答する。そして、みんなでクエスト出発口へと向かう。


「じゃ、頑張ろう!!」


ライト達5人は、氷雪地帯の闘技場に転送され、クエストカウンターから姿を消した。



零下の吹雪の中、空席の観客席に囲まれた円形のステージ。どんな材料で造られたのすら確認できないほど外壁には雪が付き、真っ白の綺麗な闘技場の中心に、5人のハンターが虚空から現れた。


「ここが闘技場…」


ヨスケが声を洩らす。普段は入れない特別フィールドだ。新鮮な感覚を覚えるのも当然だろう。


だが、油断してはいけない。ここはもうフィールド、氷狐・フォルスが現れるクエストはもう始まっているのだ。


ライトとザラキは周囲を警戒し、太刀と剣銃(ソードガン)を抜く。そして、気配を感じた。


『来るぞ!!!』


ライトとザラキが同時に叫ぶ。その瞬間(とき)、空から降りてきた3つの影がフィールドに着地、土埃ならぬ雪埃を巻き上げる。


大きさはライトの2倍ほど、氷色の肌、狼並みに鋭い牙。両手には肉をも裂く鋭爪。身体の周りでは寒風を上げ、ライト達を敵視しる眼で見る3頭の狐。今回の宴会の主催者、フォルス。


「フォルス…いきなり3頭か…」


「でも、こっちは5人いるから」


ライトとサクラが呟く。だが、異変に気づいたサクラが、


「あれ?」


と、ライトの肩を叩く。肩を叩かれてサクラの方を向いたライトも異変に気づく。


「トモ達は?どこへ行った?」


そう、トモ・ヨスケ・ザラキの3人がフィールドのどこを見てもいないのだ。今フィールド上にいるのはライトとサクラと、そして3頭のフォルス達。


「まさかリタイアしたんじゃ…」


ライトはフレンドリストから3人の現在地を追った。だが、3人とも現在地はここ、エルトラム闘技場になっている。


「なんで…って、え?」


「どうしたの?」


サクラがフォルスに警戒しながら問う。


「『隠密』スキル…発動条件なし、本人の意思でいつでも発動可能…」


隠密スキル。自分の気配を感じられにくくするスキルだ。近づき過ぎれば気付かれるが、中距離くらいだと、ほとんど気付かれることはない、勝つ気の無い者が使うスキルだ。


「隠密って…じゃあ、今トモ君達は…」


そう、このフィールド内で気配を消している。フォルスにも気づかれないよう、移動も控えているのだろう。


フォルス2頭がライトに、残り1頭がサクラに襲いかかる。


形勢が逆転した。数では優勢だったライト達が、一気に劣勢になる。


「くそっ…トモ!ヨスケ!ザラキ!お前らも戦え!!!」


ライトが怒声を上げる。だが、出てくるわけもなく、最悪の状況は変わらない。


ライトは2頭のフォルスの連携を太刀で受け流していたが、ようやく1頭を押し退ける事ができた。


だが


押し退けられたフォルスは、またライトに向かってくるのではなく、今フォルス1頭と相手をしているサクラに向かっていく。


「ああっ!!」


サクラが2頭のフォルスの連携攻撃を喰らい、吹き飛ばされる。HPが半減、尚もサクラのピンチは続いている。


「サクラ!!!くそ!邪魔だ!!どけぇ!!!!!」


ライトは1300のスタミナを300消費し、目の前のフォルス1頭に怒涛の15連撃を繰り出す。反撃も回避もする暇なく攻撃を受け続けたフォルスは、HPゲージが0になり、消滅。


「サクラ!!!!!」


絶対絶命のサクラの所へ、ライトは全力で駆け出した。

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