【アジルマン】四季のピアノ 2
[場所:神殿・外]
[セフィル]:「さて、次のピアノの所に向かうぞ」
[繭子]:「ええ!? まだ歩くんですか~?」
[吹雪]:「当たり前じゃないか。全てのピアノを回らなければ意味がないだろう」
[繭子]:「ふーちゃん――」
[吹雪]:「却下だ」
[繭子]:「まだ何も言ってないのに~」
[吹雪]:「言わなくても分かるわ。何があろうとも俺はおぶわん」
[繭子]:「大丈夫、ワタシ軽いよ? 40くらいしかないよ?」
[聖奈美]:「そ、それしかないんですか? 先生は」
杠、何故そこに食いついている。
[繭子]:「うん、そうだよ? え? 聖奈美ちゃんは」
[聖奈美]:「え? あ、その……てい!」
[吹雪]:「がっ!? な、何すんだよ」
[聖奈美]:「何でもないわよ、別に」
[吹雪]:「じゃあどうして叩く!?」
[聖奈美]:「仕方なくよ」
[吹雪]:「仕方なくて叩くな!」
[セフィル]:「うん、私もそれくらい軽くなりたいな」
[カホラ]:「お母さん、お母さんがそんな軽くなったら骨と皮しか残らないわよ」
[セフィル]:「そうか?」
[カホラ]:「そうよ、吹雪と同じくらい身長あるんだから。繭子先生が軽いのは小さいからでしょ」
[セフィル]:「そうか、なら現状維持で大丈夫か」
一体何でこんな話になっているんだろう。
[繭子]:「ほらふーちゃん、おんぶ」
[吹雪]:「やらん」
[繭子]:「何で~? こんなに軽いのに~」
[吹雪]:「軽かろうが重かろうが、もう俺はおぶわん。もうしないって言っただろうが」
[繭子]:「えー? もうこれ以上歩けないよ」
[吹雪]:「さっき走ってただろうが。嘘を言うな嘘を」
[繭子]:「走ることはできるの。でも歩くことはできないの」
[吹雪]:「何だよそれは」
[繭子]:「とにかく疲れたのー、何とかしてー」
[吹雪]:「だー、くっつくなー!」
[舞羽]:「でも、確かにここから全てのピアノの場所までは距離があるね」
[カホラ]:「そうね、疲れるのは無理ないかもしれないわ」
[セフィル]:「そうだな、よし、じゃああれを使うか。おーい、繭子、吹雪、こっちに来い」
[吹雪]:「え? はい」
[繭子]:「んん~、くふぃが、くふぃがー!」
俺は学園長のところに向かう。
[セフィル]:「三人もこっちに来るんだ」
[舞羽]:「は、はい」
俺たちは学園長の周りに集まる。
[セフィル]:「よし、じゃあみんな目をつぶって、そして集中するように」
[聖奈美]:「え? は、はい、分かりました」
学園長の言従って、俺たちは目をつぶった。
[セフィル]:「エル・エルプリウス……………………はっ!」
……………………。
…………。
……。
[セフィル]:「よし、目を開けていいぞ」
[舞羽]:「……え? ここは?」
[セフィル]:「もちろん、神殿だ。ここは夏を司るピアノがある場所だ」
[吹雪]:「なるほど――ってそれもそうなんですけど、どうして俺たちここにいるんですか?」
[セフィル]:「ん、ああ、転移の魔法を使ったんだ。これなら移動時間もかからないからな疲労も軽減できるし一石二鳥だろう」
[聖奈美]:「学園長、転移魔法を使えるんですね」
[セフィル]:「まあな、これでも魔法は結構得意だからな」
[聖奈美]:「さすがですね」
でも、ちょっと待てよ?
[吹雪]:「学園長」
[セフィル]:「ん? 何だ?」
[吹雪]:「転移魔法を最初から使っていれば、もっと疲労も軽減できたんじゃないんですか?」
[カホラ]:「そうね、別に桜花のピアノまで歩いていく必要はないはずだものね」
[セフィル]:「…………」
[吹雪]:「…………」
[セフィル]:「よし、中に入ろうか」
なかったことにした!? でもまあ、運んでくれた人に文句はつけられまい。
[カホラ]:「……とりあえず、入りましょうか」
[吹雪]:「そ、そうですね」
俺たちは神殿に足を踏み入れた。
[セフィル]:「よし、三人はさっきと同じようにするんだ」
[三人]:「はい」
俺と舞羽は端の方で待機する。
[舞羽]:「今度は、誰が選ばれるのかな?」
[吹雪]:「どうだろうな? 何となく、夏ってイメージがするのは」
三人に目をやる。
[吹雪]:「杠、のような感じがするんだが」
[舞羽]:「吹雪くんはそう思うんだ?」
[吹雪]:「何となく、な。選ぶのはピアノだから何とも言えないけど」
[舞羽]:「そうだね」
[セフィル]:「よし、三人とも、目をつぶるんだ、そして集中だ」
[三人]:「はい」
そして、ピアノに意識を集中させる。
……………………。
…………。
……。
少しすると――。
[聖奈美]:「んんっ!?」
杠の右手が光を放ち始めた。
[聖奈美]:「…………」
さっき学園長に言われたように、杠は何も言わずにそのまま精神集中をする。やがて、光は収まっていった。
[聖奈美]:「あたし、ですね」
「そうだな、手を開いてみるといい」
[聖奈美]:「はい。……」
[繭子]:「わー、キレイだね」
[カホラ]:「舞羽とはまた違った色ね」
遠目からだが、確かに舞羽のジャスパーとは色が違う。
[セフィル]:「グリーンジャスパーになったな」
[聖奈美]:「この色って、季節毎に異なるんですね」
[セフィル]:「そうだな、それぞれの季節のイメージによって色は異なってくるようだ」
[聖奈美]:「そうですか」
[セフィル]:「それを無くすんじゃないぞ」
[聖奈美]:「はい」
[舞羽]:「吹雪くん、予想当たったね」
[吹雪]:「そうだな、当てずっぽうだったんだが」
[舞羽]:「でも、何となく分かるよ。杠さんって夏ってイメージが合うもの」
[吹雪]:「舞羽はそう思うのか?」
[舞羽]:「うん、杠さんの名前に“ナミ”って入ってるしね」
[吹雪]:「……ちょっとこじつけっぽくないか?」
[舞羽]:「そうかな?」
[吹雪]:「まあ、どう思うかはそれぞれの自由だけどよ」
[舞羽]:「うん。これで、後は二人だね」
[吹雪]:「ああ」
先輩とマユ姉だな。




