【ア・テンポ】選ばれた者 4
[吹雪]:「大分、揃ったな」
[ダルク]:「うん、次はこれを綴じ込まないとね」
[吹雪]:「このファイルに入れるのか?」
[ダルク]:「うん、これでパッチンしてからね」
ダルクは穴開けパンチを持ってやってくる。
[ダルク]:「これが終われば、一段落するよ」
[吹雪]:「よし、じゃあ早速やるか」
[ダルク]:「うん、頑張ろう」
一旦これをこっちに置いてと。しかし、本当にたくさんあるな。よく見ると10年前の資料とかも中から出てくる。卒業生の意見を参考にするのも大切なことなんだろう。
[ダルク]:「気になる? 吹雪」
[吹雪]:「ん、少しな。こうして見ると結構おもしろい」
[ダルク]:「忙しいけど、やってみると色々分かることもあるんだよ。完全な雑学だけどね」
[吹雪]:「そうなのか、例えば?」
[ダルク]:「そうだねー、じゃあ。マジックコロシアムで優勝した人でも、テストで実技試験を受けなきゃいけないよね」
[吹雪]:「ああ、成績を付けなきゃいけないからな。当然のことだな」
[ダルク]:「当時、マジックコロシアムで優勝した人は、魔法関連のテストは全て免除になるっていう特権があったんだ」
[吹雪]:「何ー? それマジか!?」
[ダルク]:「うん、優勝できる力を持ってるなら実技でも結果は見えてるってことで、しなくても最高点を上げるってことになってたんだって」
[吹雪]:「何だそれ、教師も楽がしたかっただけなんじゃ」
[ダルク]:「どうなんだろうね。でも、今からは考えられないくらいとっても素敵な特権だったんじゃないかな」
[吹雪]:「まあそりゃあ嬉しいだろうな」
[ダルク]:「でも、その当時、ちょっとした問題があってね。多分それがあったからそういう特権を設けたんだと思うの」
[吹雪]:「問題?」
[ダルク]:「うん、マジックコロシアムの出場者が激減したんだって」
[吹雪]:「ああ、なるほど」
[ダルク]:「年々出場者が減っちゃって、このままじゃ大会がなくなってしまうんじゃないかって言われてたんだって。でも、伝統行事を途切れさせるわけにはいかない。それで思いついたのがその特権ってわけ」
[吹雪]:「で、効果は?」
[ダルク]:「もう絶大。テストが免除になるならって人がたくさんいたみたいでその年の出場者は50人を越えたみたい」
[吹雪]:「50人? そりゃ多いな」
今年の出場者を倍にしても足りないぞ。
[ダルク]:「おかげで生徒会も保健室もてんてこ舞いの忙しさで、一日じゃ終わらないから大会日程も二日に変更になったんだって」
[吹雪]:「じゃあ、大盛況だったんだな」
[ダルク]:「うん、予想以上のものだったみたいだけどね」
[吹雪]:「その特権は約束通りに適応されたのか?」
[ダルク]:「うん、優勝者は実技テスト諸々免除、来年も出る意思を見せてた人もたくさんいたみたい」
[吹雪]:「ほお」
[ダルク]:「でも、学生の本分は勉強なのに、テスト免除っていうはやっぱりやりすぎだって声が大きくなってきて、その年から三年後くらいにその特権は廃止されたんだ。それでも、マジックコロシアムのおもしろさは生徒に伝わったみたいで、出場者は今年ぐらいをキープできてるみたいだよ」
[吹雪]:「そうか、じゃあ特権はもうないのか」
[ダルク]:「どうだろう。ひょっとしたら、少しは評価されてるのかもしれないけどね」
[吹雪]:「でも、廃止にしたのは間違ってないかもな」
テストしたくないから頑張るっていうのは、動機が不純だしな。
[吹雪]:「当時の優勝者に会ってみたいもんだ」
[ダルク]:「まだこの島にいるのかな?」
[吹雪]:「どうだろうな」
……………………。
[吹雪]:「ようし、終了」
全ての整理と綴じ込みが終了した。
[ダルク]:「お疲れさま」
[吹雪]:「ダルクもな」
[ダルク]:「うん。ふう」
ダルクは急にキョロキョロとし出す。
[吹雪]:「どうしたんだ? ダルク」
[ダルク]:「え? ううん。ちょっと座りたいなーって思って」
ああ、なるほど。ずっと浮いてるのも疲れるんだろうな。だが、ここら辺、埃が多いから躊躇ってるわけか。
[吹雪]:「ダルク、俺の頭使いな」
[ダルク]:「え、ええ!? 吹雪の?」
[吹雪]:「ああ、別に構わないぞ。座る場所ないんだろ」
[ダルク]:「そ、そうだけど、悪いよ」
[吹雪]:「本人が了承してるんだぜ? 気にすんなって。それに、使い魔って言ったら頭の上が相場だろう?」
[ダルク]:「そ、そうなのかな?」
[吹雪]:「というか、俺から頼む。乗ってみてくれ」
[ダルク]:「う、うん。じゃあ」
ダルクはふわふわと俺の頭上にやってくる。そして――。
モフ。俺の頭に乗った。
[吹雪]:「おおっと?」
[ダルク]:「あ、大丈夫?」
[吹雪]:「ああ、全然。うん、なるほど、こんな感じなのか」
[ダルク]:「え? 何が?」
[吹雪]:「うん、よく使い魔って頭の上に乗ってるイメージが俺の中ではあってな。一度味わってみたかったんだよ」
[ダルク]:「そうなんだ」
[吹雪]:「思ったよりも、重くないものだな」
[ダルク]:「まあ、吹雪たちみたいに大きくないからね」
[吹雪]:「それもそうか。どうだ? 俺の頭」
[ダルク]:「うん、すごくいい感じ。ほっとするよ」
[吹雪]:「ならよかった。しばらくそこにいていいからな」
[ダルク]:「ありがとう、吹雪」
モフモフ。
[ダルク]:「ど、どうかした?」
[吹雪]:「いや、ちょっと触ってみたく。ふかふかだな、ダルクは」
[ダルク]:「そ、そうなのかな? 聖奈美にもよく言われるよ」
[吹雪]:「そうなのか?」
[ダルク]:「うん、冬の日とかは、よく抱きしめられてたよ。寒いからって言って。湯たんぽ代わり、かな?」
[吹雪]:「なるほど、気持ちは分かるな。現にダルクは暖かい」
[ダルク]:「女の子はただだけど、男の子からはお金取りますよ?」
[吹雪]:「何ー? それは困ったな」
[ダルク]:「えへへ、タッチまでなら許すよ」
[吹雪]:「よし、なら今のうちに体温を奪っておこう」
[ダルク]:「あはは、くすぐったいよ、吹雪」
[聖奈美]:「ダルク、今年度の補修費の金額の資料――な、何やってるのよあんたたち!」
[吹雪]:「おおっ!?」
[ダルク]:「きゃ!?」
[聖奈美]:「お、お、大久保吹雪、あたしの使い魔に何してるのよ!」
[吹雪]:「は? い、いや、ただ少し休憩してただけだぞ?」
[聖奈美]:「嘘おっしゃい、今、ダルクの体触ってたでしょう? あたしは見たわよ。この変態、スケベ」
[吹雪]:「ち、違う。それは誤解だ」
[聖奈美]:「何が誤解なのよ! しかもダルクを自分の頭の上に乗せたりして、親密な関係になりすぎなのよあんたたち!」
[吹雪]:「お、落ち着け。話せば分かる」
[聖奈美]:「氷魔法打つわよ!?」
[吹雪]:「やばい、何だかおかしくなってる」
[ダルク]:「聖奈美、誤解なんだって。私の話聞いてよ」
[聖奈美]:「ダルク、あんたは被害者なのよ? 何こいつの肩持とうとしてるのよ!」
[ダルク]:「だからそれも違うんだって。今から話すから落ち着いてよ」
……………………。
[聖奈美]:「ふうん、だからそんなにじゃれてたのね? 二人で」
[ダルク]:「じゃれてたって……私は吹雪の好意に甘えただけだよ」
[聖奈美]:「むう……」
[吹雪]:「な、何だよ?」
[聖奈美]:「変態」
[吹雪]:「な、何でだよ。誤解は解いただろ?」
[聖奈美]:「あなた分かってるでしょ? ダルクはメスの使い魔なの。それにタッチしてるんだから、それはもう完全な痴漢よ、痴漢」
[吹雪]:「痴漢て、ダルクからオーケーもらったぞ、俺は」
[聖奈美]:「もらったってダメ! あなたは男でダルクはメス、それは変わらない事実なんだから」
[ダルク]:「聖奈美、そんなに怒らないでよ。私が悪かったんだよ、吹雪は悪くないの」
[聖奈美]:「何でダルクはそこまで大久保の味方をするのよ?」
[ダルク]:「だって、吹雪は友達だもん。当然じゃない」
[聖奈美]:「……なんだから」
[ダルク]:「へ? 何?」
[聖奈美]:「ダルクはあたしの使い魔なんだから。あたしより仲良くなっちゃダメ!」
[吹雪]:「…………」
[ダルク]:「…………」
[聖奈美]:「――しまった。あたしとしたことが! ――キッ!」
[吹雪]:「うっ……」
[聖奈美]:「今、何か聞いた?」
[吹雪]:「え?」
[聖奈美]:「聞いてないわね?」
ここは聞いてないと言うしかあるまい。俺は首を縦に振った。
[聖奈美]:「ならいいわ、とにかく、今後は軽率な行動は慎むことね。ひどかったら、氷魔法で氷づけの刑に処すわ」
[吹雪]:「あ、ああ。気をつける」
[聖奈美]:「……ぷい」
踵を返して杠は向こうに戻っていった。
[吹雪]:「なあ、今のってさ」
[ダルク]:「うん、あれだよね」
これからは、時と場所を選んだほうがよさそうだな。杠にあんな一面があったとは、ちょっとびっくりした。
[吹雪]:「ダルク、頑張れよ」
[ダルク]:「う、うん。もちろんだよ」
生徒会での出来事だった……。




