【カンタービレ】決戦! マジックコロシアム! 3
[実況者]:「では三回戦いってみましょう! 島貫翔選手(二年)VS後藤鮎美選手(三年)です」
[翔]:「みなさーん、こんにちはー、島貫翔でーす! みんな、元気ですかー?」
[観客]:「…………」
[翔]:「あれ、みんな元気がないな。もう一回、こんにちはー!」
[観客]:「…………」
[翔]:「おっと、まだみんなにエンジンがかかってないようだな。分かった、オレの熱い戦いで、みんなにエンジンをかけてやるぜ!」
翔、そこはライブ会場とはわけが違うんだぞ。
[実況者]:「えー、対するは、後藤鮎美選手、今年でマジックコロシアムは三年連続の出場、今年最後、この舞台で大輪を咲かせることができるでしょうか」
[後藤]:「みなさん、よろしくお願いします」
[観客]:「わー!」
[翔]:「えー!? ちょっとちょっとー、みんなー、さっきと全然勝手が違うんじゃないのー?」
お前が出しゃばってるからだろうが。
[翔]:「くそーみんなオレの力を試してるんだな。よし分かった。オレの力、全て出し切ってやるぜ!」
それ以前に使える魔法がお前にはあるのか? そういえばさっき秘策があるとか何とか言ってたが。
[舞羽]:「吹雪くん、翔くん、大丈夫なの?」
[吹雪]:「どうだろうな、多分瞬殺だと思うが」
[舞羽]:「善戦、はちょっと無理かな?」
[吹雪]:「多分な」
どうやら、舞羽でもフォローは難しいようだ。
[舞羽]:「やりきっては欲しいね。せめて」
[吹雪]:「まあ、な」
秘策が秘策であれば、だが。
[翔]:「ふん、ふん、よし、体調も万全だ」
[吹雪]:「(不安だな……)」
[実況者]:「さあ、それではいってみましょう。三回戦、レディー・ゴー!」
試合開始の鐘が鳴った。
[後藤]:「行くわよ――エル・エルアス・グローリア、水の精よ、我に力を与えたまえ。スプラッシュ!」
[翔]:「うおお!? な、なんだ!?」
大地が激しく揺れだし、翔は体をよろつかせる。割れ目からは、勢いよく水柱があがり始めていた。
[実況者]:「出ました、スプラッシュ。水系の高位魔法。島貫選手、果たしてこれを交わすことはできるのか!?」
[翔]:「うわ、すげぇ、何だよこれ」
[舞羽]:「翔くん、初めから後藤さんにペースを持ってかれてるね」
[吹雪]:「まあ、当然って言えば当然なんだけどな」
何にも魔法を使えないような奴だ。ペースを握られても何ら不思議はない。
[翔]:「お、やべぇぜ」
[実況者]:「島貫選手、徐々に逃げ場を失っていく。尚周りから上がる水柱、このピンチ、逃れることはできるのか」
[翔]:「ふっふっふ……」
[舞羽]:「翔くん、ひょっとして笑ってる?」
[吹雪]:「ああ、俺にもそう見えてる」
[翔]:「ふっふっふ……苦節二日、頑張って練習したかいあってようやくこの技を会得することができた。もう今までのオレとは違う。オレは覚醒したんだ」
翔は大きく手を振りかぶった。
[翔]:「いくぜ! エル・エリアーデュス・精霊よ、我を守りたまえ。――マジックバリア!」
翔がそう唱えると、目の前に透明の壁のようなものが姿を現した。その壁は翔を覆い、水柱をはじき返す。
[舞羽]:「翔くん、あんな技使えたんだね」
[吹雪]:「みたいだな」
二日で覚えたようだが、どこで一体覚えたんだか。
[翔]:「はっはっは、この技がある限り、オレに攻撃は通らない。どうしますか? 後藤さん」
[後藤]:「く、バリアか」
[実況者]:「島貫選手、見事なディフェンスを見せました。後藤選手、この状況をどう変えていくのか」
[後藤]:「なら、これでどうかしら。エル・エルフィディウス・雷よ我の力となれ、――ボルテクス!」
[翔]:「おお、何だ!? 手から稲妻らしきものが!」
[実況者]:「おおっと、ボルテクスです。雷系の中でかなりの威力を誇る攻撃魔法。この攻撃が、果たして島貫選手に届くのか」
[舞羽]:「後藤さん、すごい攻撃を連発してるね」
[吹雪]:「だな、ボルテクスは俺も初めてみた」
さすが3年生か、高度な魔法も何のそのってところだろうか。この攻撃、翔は切り抜けることができるのか?
[翔]:「もう一回だ。――マジックバリア!」
翔の前に、また透明の壁が現れる。
[後藤]:「これもダメか……」
[翔]:「ふっふっふ、通りませんよ、攻撃は」
[実況者]:「これも島貫選手に通りません。島貫選手のバリアの前に攻撃が通りません」
[舞羽]:「翔くん、すごい」
[吹雪]:「マジかよ、あれを抑えたのか?」
しかもバリアだけで、あいつどんだけの強度のものを出現させてるんだ。
[舞羽]:「これって、ひょっとしちゃうのかな?」
[吹雪]:「いや、言っても相手は経験者だ、翔よりもたくさんの苦難を乗り越えてきてる。簡単にはいかないはずだ」
[舞羽]:「そうだよね、後藤さんにも意地があるはずだしね」
[吹雪]:「ここからだろう、きっと」
向こうだって、このままで終わるわけはない。
[後藤]:「攻撃は効かないってことね、なら――」
[吹雪]:「……瞑想か」
[舞羽]:「瞑想?」
[吹雪]:「ああ、精神を集中させて、己の力を引き上げるんだ。翔のバリアを、能力をあげて突き破ろうって考えたんだと思う」
[後藤]:「大地の精霊よ、我の奥に眠りし力を解放したまえ、――ふっ!」
[実況者]:「後藤選手のオーラが変わった。パワーが溢れているのが伝わってきます」
[翔]:「おっと、パワーアップってことですかい?」
[後藤]:「さっきのようには行かないわよ。――エル・エルフィディウス、雷よ、我の力となれ、ボルテクス!」
[実況者]:「おおっと、すごい威力の雷が指から迸っています。島貫選手、これを切り抜けることは可能なのか!?」
[翔]:「威力が上がったって、こっちにはバリアがあるんだぜ! 精霊よ、我を守りたまえ、マジックバリア!」
[舞羽]:「――あれ? 出てこないよ」
[吹雪]:「……ついにやらかしたか」
[翔]:「あれ? 出ない? 何で?」
[実況者]:「おおっと、島貫選手、バリアが現れません」
[翔]:「――あ、そうか。バリアは魔力の消費が激しいから多用しちゃいけないんだったっけ。授業で習ったの、忘れてたぜ、えへ、翔大失敗」
[後藤]:「喰らいなさい!」
[翔]:「え? マジで? あ、ひ、いぎゃあああああああああああああああああああああああ!!」
[吹雪]:「あーあー」
[翔]:「……でも、後藤さんみたいな女性の技を喰らって負けるなら、痛さも快感、だぜ」
[後藤]:「う……」
[観客]:「キモっ!」
おそらく、会場全員がどん引きしたに違いない。
[実況者]:「し、島貫選手、立ち上がれるかどうか?」
[翔]:「こんなことなら、攻撃魔法も何か覚えてくればよかった、ぜ、ふっ」
って覚えてなかったのかよ! あいつは防御系だけで張り合おうとしてたのか。
[翔]:「オレの、屍を越えていってください」
[実況者]:「し、試合終了、勝ったのは、後藤選手です。二回戦に駒を進めました」
[舞羽]:「負けちゃったね、翔くん」
[吹雪]:「まあ、誰もが予想した結果だろう」
攻撃を防いだのは、結構驚いたけどな。
[吹雪]:「おっと、次は俺だな。召集場所に行かないと」
[舞羽]:「あ、いよいよ吹雪くんかー。じゃあ、私も繭さんのところに行かなくっちゃ」
[吹雪]:「頑張って勝つぜ」
[舞羽]:「うん、私、信じてるよ」
俺は召集場所へと向かった。




