夏花火に微笑む君がいた
掲載日:2026/04/29
「あのさ」
ある七月の夜のこと。
花瓶が映える窓際で。
隣に座る君が。
おもむろに口を開いた。
みんなで花火を見に行こう。
生温い夏の海岸の風。
君の長い髪をなびかせる。
君の鼻歌が聞こえてる。
古い駄菓子屋の風鈴が鳴る。
遠くから人の声がする。
太陽はとっくに沈んでる。
ふと顔を上げると、月が夜空に浮いていた。
花が、一輪二輪三輪。
夜空に咲き誇る夏花火。
つまらない事なんか。
全部ほっといて息をする。
どれだけ月日が経とうとも。
この夏の日の思い出だけは。
忘れないように。
「あのね」
暑苦しい八月の夜のこと。
河川敷が見える窓際で。
隣に座る君が。
おもむろに口を開いた。
二人で夏祭りに行こうよ。
畦道を歩いて三分間。
君だけを認めて息をする。
君の鼻歌が聞こえてる。
田んぼの水音が響いた。
前に沢山の灯りが見える。
提灯の灯りだと気づく。
ふと顔を上げると、楽しそうな君がいた。
りんご飴を食む君がいた。
祭りを楽しむ君がいた。
目に焼き付ける八月の。
忘れられないこの記憶は。
どれだけ月日が経とうとも。
この夏の日の思い出だけは。
いつまでもそばにいて。




