2-6 全く新しいセキュリティシステム
魔石には二種類あって属性魔法を発動するタイプと付与魔法の魔力のストックになる魔石があります。
前者は発動者が触れて、その人の魔力を元に発動するのに対し、後者は魔力だけチャージしとけば離れていても付与している魔法をずっと発動し続けられます。
この世界では屋台のセキュリティは基本無いに等しい。
金目の物は置かないため、盗難はそもそも稀なのだ。
だが、この屋台はただの屋台じゃない。
使われている素材は最高級のエルダートレント。
側板一枚切り取って売るだけで金になる。
さらには魔石を使った魔道具も内蔵してるから屋台丸ごと売れば莫大な金額になるのだから
盗賊にとっては貴族の屋敷を狙うよりも楽な仕事になりそうだ。
新見は腕を組み、二人に問いかける。
「この屋台ってさ、分かるヤツには素材だけで宝の山なんだよ。
だから、それを見越した対策したいんだけど……見境なしだとお客さんに被害が出るだろ?」
「そりゃぁそうじゃが…ここには屋敷につける仰々しいのしか無いぞ。屋台にも合わないしあまりおすすs目はしないぞ。」
とゴリオンが顎ひげをしごきながら答えた。
「じゃあさ、俺や従業員を登録して、それ以外が触ったら屋台本体が“超重くなる”ってのはどうだ?
客にとっては屋台本体の重さなんて関係ないし。」
「おぉ……!」
「なるほど……!」
ゴリオン親子が素直に感心の声を上げる。
しかし次の瞬間、ゴリオンは目を細めて言った。
「じゃがな、新見よ。
重力魔法の術式を常時発動型で刻むのは……並の職人では無理じゃ。
魔石の消費量も常軌を逸するし、採算が合わん。屋敷のセキュリティに使うならまだしも屋台に施すなんて
普通なら誰もやらんからのぉ…」と新見をちらっと一瞥するゴリオン。
「わかったよ、俺法で何とかしてみるけどあまり期待はするなよ…」
(ここは想像魔法の出番だな……)
新見はふと付与魔法の応用で何とかならないかスキルと向き合う。
(意外とスムーズだぞ…)
重力魔法のトリガーと威力を設定。特定人物を登録するインターフェースと識別をするセンサーをイメージ。
識別範囲を屋台に触れたものに限定するとすんなりと完成し術式が現れた。
「あ、できたわ。」とあっけなく言う新見。
「ほほぉ~!さすがじゃのぅ!ならばさっそくお手並み拝見といこうかの!」
と鼻息を荒くしながらぐいぐいと屋台のほうへ新見を引っ張るゴリオン。
(いや、なんでおっさんが食い気味なんだよ。てか力つよ…)
「よし、新見!早速その“超重くなるセキュリティ”とやら、見せてもらおうかの!」
「慌てるなって…」
早速屋台に作ったばっかりのセキュリティ魔法の術式を展開する。
(登録した以外の魔力の波長を検知したら即発動。
重力はとりあえず100倍でいいか。
マスター登録は俺。
調整用のインターフェースも……よし、固定)
「重力セキュリティ(グラビセキュリティ)付与!」
屋台がふわりと淡く光を帯び、そして静かに沈黙する。
ゴリオンが眉をひそめる。
「…終わったんか?」
「終わったぞ。まずは、インターフェースだな」
新見が屋台を指で“ツンツン”とつつくと
ピコンッ
まるでステータスウィンドウのような光の板が浮かび上がった。
《従業員登録》
《登録者:タカシ・ニイミ(マスター)》
《従業員一覧》
「 」
ゴリオン「……なんじゃこりゃ」
「よし、出たな。まずは仮登録でおっさんを登録するから、どっか適当に触ってみて」
「こうかの?」
ゴリオンが手を触れるとインターフェースが反応。
《新規従業員を検知。登録しますか?》
「お、きたきた、早速登録っと…ほい、完了。」
「もう手離していいぞ」
「よっしゃ、では早速。」
ゴリオンは屋台の前棒を掴み、ぐい、と力を込める。
「……おおっ!軽い軽い!これはええのぉ!!」
軽く一周するとゴリオンは他のドワーフにも声をかける。
「今度はお前らが引いてみぃ」
すると力自慢のドワーフ達が集まってきた。
「おう任せろ!」
「どれだけ重いんじゃ?」
「ふんぬぉぉッ!!」
力自慢のドワーフたちが束になって挑むが、思いのほか苦戦しており、
10m動かすだけで汗だくになるほどだった。
「こりゃすごい…!全く新しいセキュリティシステムじゃ!」
ゴリオンも満足げにうなずく。
「よくやったな、新見。あとはこの付与魔法の魔力源の魔石をセットするだけじゃな。
定期的に魔力をためるだけでずっと続きそうじゃ。早速セットするからリンクを頼むわい」と四角く黒い魔石を屋台の屋根の裏にセットするゴリオン。
(付与魔法の魔石はいつ見てもモバイルバッテリーみたいだなぁ)
セットし終わるのを見届けると新見はこのセキュリティ魔法と魔石をリンクさせた。
「じゃ、今度は営業モードに切り替えるぞ」
新見は屋台本体の柱側に取り付けられた小さなボタンへ指を伸ばした。
ボタンを押すと、軽い魔力反応のきらめきとともに、閉じていたテーブル板が静かに展開していく。まるで生き物のように滑らかに動き、折りたたまれていた厨房器具が次々と姿を現した。鉄と木が組み上げるその内部構造は、昨夜見た設計図よりもはるかに洗練されている。
ボンドは、腕を組んで満足そうにうなずいた。
「おお……なんか、元の設計よりすごいんじゃね?」新見が思わず感嘆の声を漏らす。
するとドノバンが、まるでボンドの代弁をするように笑って答えた。
「スペースを有効活用しつつ、格納と展開の動線を考えたらこうなったんだとよ。
設計の段階で何度も組み直してたからな」
ボンドはそれを聞くと無言のまま、ほんの少しだけ口元を緩めた。
展開が終わるのを確認するとまずカウンター席に腰を下ろしたのは、ゴリオン親子とボンドだった。
三人はそれぞれ、机の縁に手を置いたり、肘を立てて頬杖をついたりと、思い思いに屋台へ触れている。どうやら重力魔法の影響を確かめているらしい。
しばらくして、三人は顔を見合わせ、同時に小さくうなずいた。
「……問題なさそうじゃな」
「だな」
「……コクッ」
動作確認も終わりついに納品となる。
「いやー、お疲れさん。今までで一番と言っても過言ではないくらいの大仕事じゃったわい。」とゴリオンが清算書を手に持ちながらいう。
「代金なんじゃが…」
新見は手持ちが足りるか不安になった。
「占めて丁度100万ゴルド!」
(アッ)
予算オーバーの金額を提示され吐血しながら無言で倒れる新見。
「…といいたいところじゃが余ったエルダートレントの木材をこっちで買い取らせてもらったところ丁度±0じゃ。」
「え?そんなに高級だったのかあの木材。」
寝そべりながら質問する新見
「これでも少ないほうじゃ。ホントはもっとあるんじゃが端材じゃしその分を差し引いた値段じゃ。」
何とか懐が痛むことは無くなった新見。
「じゃぁさっそくラーメンを売りに行きたいんだけどどこで売るのがいいんだ?」
とゴリオンに問うと
「そうじゃのぅ…自由広場はどうじゃ?貴族の通りはそこそこで庶民の行き交いが多い場所じゃ。」
「よっしゃ!さっそく…」と自由広場に向かおうとする新見を首根っこをつかんで止めるゴリオン。(どうやってつかんだのやら)
「待て待て、自由広場で屋台をやるんだったらやることがあるじゃろうて。」
「やること…?」新見はゴリオンに首根っこを引っ張られて仰向けで首をかしげるのだった。
というわけで初めてのラーメンから屋台づくり編はここでひと段落です!
結構書きたかったんですけどかなり文字数が多くなってきてテンポ悪くなりそうだったのでいろいろ割愛したのですがそれでも結構ありましたね(;'∀')




