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帰れるまではラーメンの屋台引こうとする元勇者  作者: 賽と札
2.はじめてのラーメンと屋台づくり

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4/11

2-1 そうだよ……ないなら、作ればいいじゃないか!

最近になっていろんな機能があることに気が付きました…未熟ですね。


そして私事ですがリアルのほうで時間に都合ができたので今後週2投稿をメインにいたします!

「昔バイトしてたラーメン屋……今もやってるかなぁ」

孝は、冷たい石の床に大の字になりながら、ぼんやりと天井を見上げてつぶやいた。

「懐かしいなぁ……仕込みとか、スープの灰汁取りとか……いろいろやらされたっけ……」

まさか魔王討伐して帰れると思った矢先、帰れないと知った孝はノスタルジーに浸っていた。

じんわり胸を締めつけるような郷愁が混じった時間が流れる。


と、その瞬間。


何かが脳内で弾けた。それはまさに天啓!

「…あっ!」

孝は勢いよく跳ね起き、目を見開く。

「そうだよ……ないなら、作ればいいじゃないか!」

誰もいない魔王城の大広間に、孝の声が反響する。

その表情には確かな光が宿っていた。


「そうと決まれば、まずは下準備だ!

え~っとまずは必要な材料と道具と、形式は店舗は保証人とか必要そうだから移動店舗かな…色々調べることが多いぞ…」


ぶつぶつと独り言を言いながら、孝は必要なことをメモ手帳に書き記す。

「あ、そうそう神様から忠告もらったから”勇者は元の世界へ帰っていなくなった”というシナリオにしないとな…」鎧兜を脱ぎ、床に突き刺した剣に鎧兜を被せた。

”勇者”(オレ)のギルドカードも置いておかないとな、うぅ…Sランクのギルドカード…結構苦労したんだけどなぁ…もったいないけど仕方ない…」とプラチナ色のギルドカードを鎧の隙間に未練がましく突き刺した。


フード付きの外套の下に動きやすい服装に着替え、予備の剣を携えた孝は魔王城の扉を押し開けた。

異世界の風が、彼の頬を撫でた。

「…よし。行くか」


こうしてかつて地球で一匹の猫を救い、異世界で魔王を倒した男、

新見 孝は“ラーメンのない世界でラーメンを作る”という、新たな戦いへと足を踏み出した。


「まずはどこへ向かおうか…材料の肉とか野菜とかは冒険者ギルドとか市場で取り扱ってるのを見たことあるからそこから仕入れるとして、調理器具はテボとかどこにもないしこの異世界で見たことないからこれはオーダーメイドだな。よし、いろいろ相談したいし久々に”おっさん”とこに向かうとするか!」

行き先を決めた孝は”想像魔法”で作成した”転移魔法”で王都へ向かった。


王都ハンチャーライ。

魔王討伐のために去ったはずがまさかの出戻りで訪れたその街は、以前にも増して活気に満ちていた。

商人の呼び声、馬車の車輪の音、鉄を打つ音、香辛料の匂い。

それらすべてが混ざり合い、まるで一つの巨大な生き物のように脈動していた。

(いきなり工房に転移したら大騒ぎになるけど裏口入ったことないんだよなぁ。ちょいと前に行ったことのある誰もいなさそうな裏路地の廃墟に転移して正解だったな。)


※新見のスキル”想像魔法”で開発した転移魔法は行ったことないところには行けないため(行ったことないところには行こうと思えば行けるらしいがバグって体がぐちゃぐちゃになってお亡くなりになるらしい。これは転生時にスキルと一緒もらったノートに変な死因の一つとして書かれていた)※


工房へ向けて足を進める孝だが、その賑わいの裏で聞こえてくる噂はどれも新見の耳に痛かった。


「なぁ、聞いたか? 魔王城が光ったって話!」

「勇者タカシ様が魔王討伐に向かってからしばらくだがこれは決着か!?」

「いや、それでも魔族どもの軍勢はいまだに進行を続けてるって話だから、もしかして勇者がやられたって噂もあるぜ?」

(いやぁ~噂ってのは怖いねぇ…あれはめんどくさくなって雷魔法で魔王城門のふもとのエルダートレントの森を焼き払おうとしたらまさか魔王城に避雷針があるとは思わずそこに当たって光っただけなんだけどなぁ…しかも魔王討伐の1日前だし…)

新見は建物の陰に身を寄せ、聞こえないふりをする。


井戸端会議でも、酒場でも、市場でも。

王都中が、“勇者のその後”を知らないまま勝手な物語を紡いでいた。


新見は苦笑しながら肩をすくめると、

「まぁいいさ。どうせいずれ、誰も覚えちゃいないさ」と、

軽く笑いながら足を進める。


道中に緑の屋根の冒険者ギルドがあったため立ち寄ることにした。

(身分証がないってのも地味に困るし、何気に不法入国してるんだよな…)


昼下がりのギルドは、いつも通りの喧騒に包まれていた。

報酬を手に浮かれる冒険者、依頼票の前で揉める若者たち、酔いどれ気味のベテラン。

その中を抜け、ギルドカウンターへ向かう孝。

が、カウンターに向かうと丁度依頼を受注しようとする冒険者達にもみくちゃにされる孝。(あ、しまった。この時間帯は混むんだった…Sランクになってからギルド経由で俺個人への依頼しか来なかったから忘れてた…)

もみくちゃの中孝はとある人物に目が止まった。


腰まで届く銀髪を高く束ねたポニーテール。

その毛先が揺れるたび、光を反射して柔らかく輝く。

だが、その碧眼にはどこか深い影が落ちていた。

背に背負うのは精緻な細工の弓。

腰にはおそらく純ミスリル’製だがかなり年季の入った杖を携えていた。

エルフだ。しかも、ただのエルフではない。

(へぇ……珍しい。ハイエルフじゃん)

新見はすぐに目を逸らした。

(関わらない方がいいや。どうせ俺みたいなの、気にも留めないだろうし)

そう心の中で呟きながら、何とかカウンターまでたどり着き猫の獣人の受付嬢にギルドカードの新規発行までこじつけるのであった。(やはり猫こそ至高や…)


用紙に記入中…

(さすがに勇者と同じ”タカシ”って書くわけにはいかないな…ならば)

”ニィミ”

あえて姓側のほうの名前を異世界の発音に合わせて綴る孝。

難なく新しくギルドカード発行してもらった”孝”もとい”新見”。

革色のギルドカードを眺めながら(最低ランクのEランクスタートかぁ。依頼は”おっさん”に会ってからやるか)と目的地である”おっさん”のところへ再度足を進めるのであった。

徒歩ではかなり距離があったため気が付けば日は落ち、日中の喧騒はすっかりどこへやら、町は夜の顔に変わり始めている。

街灯の魔石がぽつぽつと灯り、通りの酒場からは樽ジョッキを打ち鳴らす音と笑い声が響く。


そんな喧噪を横目に、新見は人通りの少ない裏路地へと足を向けた。

目指すは、かつて何度も世話になった鍛冶場である。

裏口に回り、壁に埋め込まれた鉄扉を前に立つ。

彼は軽く息を整え、トン・トトン・トンと独特なリズムでノックした。


ギギ……と重い音を立てて扉が開く。

そこにはランプの明かりに照らされた豊かな髭をもつドワーフの頑固一徹そうな屈強な老人がいた。


「…久しぶりだなぁ、おっさん!」

新見はフードを外しながら声をかける。

「ん?…その声…まさか…タカシか!?」

太い眉を吊り上げたドワーフの男が、目を見開いた。

「お主、魔王討伐に向かったきり、元の世界とやらに帰ったんじゃなかったのか!?」

驚きの声を上げるのはこの工房「ゴリオン工房」の長。”おっさん”ことゴリオンであった。

このエピソードから主人公を”孝”から”新見”表記に置き換わります。

場合によっては改名の経緯を知らないキャラには”タカシ”呼びする場合もありますが混乱しそうですがどうでしょうか…(ゴリオン以外にも主人公をタカシ呼びする人が構想段階であと2名います…)

改名のくだりは初期構想からあったのですが、もし混乱させてしまったらごめんなさい…。

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