1-2 魔王を倒してほしいんだ。でも、そこは君の自由意思に任せるよ
光の人影もとい”神”は、淡々と語り始めた。
「本来なら、地球の魂は“地球の輪廻転生の輪”を通して新たな命に生まれ変わるんだけどね。たまにそこから外れる魂もあるんだよね。でも今回は僕がその輪から君を直接引っ張り出して、ここに連れてきたってわけ。もちろん、あらかじめに地球の神にはちゃんと断ってあるからそこは抜かりないよ。」
「おぉ~……なるほど……」
孝はよく分かっていないながらも、感心したようにうなずく。
神は微笑みを浮かべ、続けた。
「で、今回のお礼として、君を僕のいる世界――つまり異世界に“招待”したいんだけどね。少しだけ問題があって……」
その言葉に、孝の脳内では
(キタキタキタキタッ! おなじみの異世界転移イベントだこれ! チート授与の前に“ひとつ頼みがある”ってやつだ!)
完全に期待モードで目を輝かせる孝を前に、神は淡々と続ける。
「本来おとなしいはずの魔族の王である魔王なんだけど最近どうやら怪しい感じなんだよね。魔王はとあるものの防衛を任せてるのだけど他の土地に手を出して人族と小競り合いしてるらしいんだ。その使命を放棄しているとは断言できないからもし、君が魔王のところまで行ける実力をつけて向かうのであればその魔王の様子を見て彼が使命をはたしていないのであれば正してほしいんだけど、そこは君の自由意思に任せるよ」
「えっ!? 任意!?」
孝は思わず素っ頓狂な声を上げた。
神は軽く肩をすくめて笑う。
「いや、だって僕、一応“神”ではあるけど、個人の意思を強制する権限なんて持ってないし、今のところ”怪しい”ってだけで確定した情報でもないし、小競り合いと言っても世界レベルで見るとそこまで悪影響とかは出ていないからあくまで“お願い”って感じ。してもいいし、しなくてもいい」
「……はぁ」
「それにね、僕は自分の世界では“自由”を象徴する存在なんだ。だから、もし誰かの意思を強制したりしたら存在意義が矛盾して、最悪、僕自身が崩壊しちゃうからね」
サラリと恐ろしいことを口にする神。
孝は額にうっすら冷や汗を浮かべながら、心の中で思った。
(この神様、さらっとおっかないこと言ってるんですけど……!)
「ちょっと質問、いいですか?」
神の説明がひと段落ついたところで、孝が手を挙げた。
「ん? どうしたの? どこか分かりづらかった?」
「いえ……ちょっと気になったんですけど。元の世界に帰る方法ってあるんですか?」
神は少しだけ目を細め、静かにうなずいた。
「あるにはあるよ。でも、さっき話した“魔王”と関係してるんだ。」
するとどこからかワイプが出てきた。
「別の世界から僕の管轄している世界へ転移することは、まあ、比較的簡単なんだ。けどね逆方向、つまり君のいた世界へ戻るルートは、特定の“門”を通る必要がある」
神は片手を動かしながら、ワイプの中に小さな光の図を描き出す。
「イメージとしては“漏斗”かな。入口から出口へ流れるのは簡単だけど、その逆つまり細い方から戻るのは、相当難しい。そんな感じだよ」
「なるほど……つまり、その“逆ルート”を押さえてるのが……」
「うん。代々、魔族の王がその門の“番人”という使命を務めてきたんだ。でも、さっき言った通り今の魔王が領土的な野心を持ち始めていて、世界は今、人族と魔族の小競り合いがちょくちょく発生してるね。この行為自体を否定するつもりはないけど使命さえ果たしてくれればいいわけだし。」
神は静かにため息をつくと「あ、ちなみに、別の時代や別の種族として転生した地球人もいてね。君みたいにそのまま転移した人もいるし、気が向いたら探して仲間にしてみるのも面白いかもね」
「……シリアスなんだか、緩いんだか……」
孝は頭をかきながら、心の中でぼやいた。
神のペースに完全に振り回されながらも、どこか楽しげな笑みが浮かんでいた。
「僕が直接手を出せば一瞬で解決するけど――ほら、僕、自由とか秩序の象徴でもあるからさ。下手に動くと“世界”そのものを壊しかねない。だから、お願いという形で君に託すことにしたんだ」
”過ぎたるは猶及ばざるが如し”
度が過ぎるのは足りないのと同じく良くない
新見はとっさにこの言葉を思い出していた。
「おっと、話が長くなっちゃったね。――じゃあ、お待ちかねの“スキル付与”タイムといこうか。何がいい?」
神が軽く指を鳴らすと、その手元に光のリストが現れた。
次の瞬間、それはふわりと宙に浮かび、数えきれないほどのスキル名が孝の目の前にずらりと並んでいく。
「うおおお……! 本当に出た! スキル選択リスト! これこれ、こういうのだよ!」
孝はテンションMAXで食い入るようにスキル群を眺めた。
どれも、ラノベで見たことのあるおなじみのスキルばかりだ。
(おぉ~……マジで選び放題じゃん……! これ、完全にチート主人公の流れだぞ!)
ひとつひとつを吟味していた孝は、ふと一つのスキル名で手を止めた。
神は「あぁ、それか」と軽く頷き、説明を始めた。
「それはね、イメージした魔法を実際に発動できるっていうスキルなんだ。発想次第でなんでもできるはずなんだけど、問題があってさ」
「問題?」
「うん。成功条件がよく分かってないんだよね。使用者のコンディションとか、魔法に対する理解度とか、そのへんの影響が強すぎて。
たとえば、炎を武器にまとわせる魔法を作った人もいれば、“凍る炎の雨”を降らせた人もいた。成功すれば相当強いんだけど…」
神は軽く肩をすくめた。
「失敗すると、“爆発魔法”のつもりが“自爆魔法”になったり、瞬間移動を試したら“壁の中”に埋まって即死したり。要するに、ハイリスク・ハイリターンなんだよ」
「……なんか、クソゲーのバグみたいなスキルだな……」
孝はあきれ顔でぼやいた。
神は苦笑しながらも悪びれる様子はない。
「まあ、ロマンではあるよ。」
『ロマン』その一言に、孝の心は見事に撃ち抜かれた。
数々のスキルが並ぶリストの中で、孝は迷いなく指を伸ばした。
選んだのは――《想像魔法》。
「へぇ、それ選ぶんだ。なかなか物好きだね」
神はくすりと笑い、指を鳴らした。
「じゃあ、せっかくだし極めちゃってよ。歴代の成功例と失敗例をまとめたノートも、おまけでつけておくね」
「……おまけっていうか、それ、完全に研究の押しつけですよね!?」
「気のせい気のせい」
神は楽しげに笑いながら、さらに光を操る。
「ついでに、この世界で不自由しないように《生活魔法》と《言語理解》、あと折角だから《アイテムボックス》もつけちゃおっと♪」
その口調は、もはや神というよりノリのいい店員である。
「ただし、リストにあるような上位版の《アイテムストレージ》はさすがに無理だけど中の時間経過は極端に遅いから、食材とか腐らないと思う。便利でしょ?」
「そ、そうですね…ハハッ」
孝は感動半分、若干の不安半分でうなずいた。
神は満足そうに手を打つ。
「よし、準備はこんなものかな! あ、そうそう、再三言うけど、魔王を倒すのは“任意”だからね。
でも、もし魔王を倒した後君が地球に帰りたいって望むなら、その時は死んだことを無かった事にはできないけど戸籍とか最初からその人がいた感じでいきなり帰っても不自然にならないように調整するし、
その後の生活も、できる限りアフターフォローしてあげるよ。だからほどほどに、頑張ってね~♪」
その最後の言葉とともに、光が孝の体を包み込む。
「あ、ちょ、ちょっと待っ…!」
声を上げる間もなく、視界が白一色に染まった。
神の軽い声が、遠ざかる意識の中で微かに響く。
「じゃ、いってらっしゃ~い!」
そして、
孝の異世界での第二の人生が、幕を開けた。
だが、彼は知らなかったのだ、まさか異世界のメシがあまりにも元の世界とかけ離れていることに…
内容とかテンポとかどうですかね?遅かったり誤字があったらお伝えいただければ幸いです。




