3-1 商業ギルドへ
女将ドワーフのイメージは完全にラ〇ュタのドー〇の様な肝っ玉母さんですw
最近こういった肝っ玉母さんは現実では見ないですね…
「自由広場で屋台を開くには本人の営業許可が必要じゃ。しかも初出店となると販売で出す屋台と販売する品目も登録しなければならん。」
厄介そうなお役所作業になることを予感した新見は露骨に嫌そうな顔をする。
「露骨に嫌な顔してもダメじゃぞ。こういう手続きはちゃんとしとかないと真似る奴らが出てすぐ無法地帯になるんじゃから。」とゴリオンが諫める。
「昨今そういう不法者の対策は年々厳しくなっておるからつかまりたくなかったらおとなしく書類作業するんじゃな。わしの知り合いに詳しい奴がいるから、そいつを通して許可証をもらうんじゃな。」
へーいと言わんばかりに返答する新見。
数日後、新見の下宿先(さすがにずっと工房の世話になるのも悪いので宿をとった)に工房のドワーフが訪ねてきて、曰くゴリオンの知り合いが訪ねてきたから一緒に来てほしいとのこと。
工房へ向かうと工房前にはなぜか人だかりができていた。
「ちょっと…ごめん…通して…」
人込みを抜けるとゴリオンともう一人のドワーフが何故か取っ組み合いの喧嘩をしていた。
「この石頭!硬すぎて石どころか岩頭!」
「んなにを~このつるっぱげが!毎日グリスが欠かせないから滑って仕方ねぇ!」
「ど、どういう状況…?」新見が困惑していると知っている顔の女性ドワーフが人ごみの中から出て、二人の喧嘩以上の大声を出した。
「あんたたち!いつまでやってんだい!」
辺りは一瞬で沈黙する。
「か、かぁちゃん…いや、こいつが」頭頂部が涼しそうなほうのドワーフは急に弱気になり、自然と正座する。
「い、いや…その…こんなつもりじゃ…」ゴリオンも同じように自然に正座する。
それを見下ろす女将ドワーフはまさに般若の様なオーラと相貌をしていた。
こんな弱気なゴリオンは付き合いの長い新見も初めて見た。
「あ、女将の姉さん!」新見が声をかけると女将ドワーフは般若の様な顔から一転。笑顔で新見を出迎える。
「あら、あんただったのかいうちの旦那のとこに用があるヒューマンってのは。やっぱり”ラーメン”関係?」
ん?旦那?
「うちの旦那ねぇ、こんなんだけど商業ギルドのギルド長やっててねえ…けどここの工房の工房長とは幼馴染らしいんだけど昔っから反りが合わなくてねぇ、顔を合わせる度に喧嘩になっていつもあたしが止めるまで辞めないんだから、全くいつになったら大人になるのやら…」
ため息交じりに紹介から愚痴になりだしたところで「た、大変だねぇ、姉さんも。」と新見が相槌すると「そぉなのよ、うちの人ったら…」と女将が語り出す。
~30分後~
「孫ができたら性格ぐらい丸くなると思ったんだけど、丸くなったのは頭だけで…」
~さらに30分後~
「あたしに隠れて何かこそこそ浮気でもしてると思って白状させたらまさかの育毛剤でねぇ、未練がましいってそりゃ…」
~さらにさらに30分後~
「最近は仕事が忙しくなって来たらしくて帰りが遅くなりがちで…別にここの治安が悪いというわけじゃないんだけどね…」
「あ、あのぉ~姉さん姉さん。」新見は何度目か女将の話の合間にこの長話を終えようと声をかける。
「ここからはいいとこ…あらヤダいけない、ついつい話し込んじゃったわぁ…」
「ハハハ…話題が尽きませんね…」といいつつ女将の後ろを指さす。
「?」女将がその指先につられて後ろを振り返ると正座のしっぱなしで足がしびれて悶絶するドワーフ二人がいた。
「ちょっと何やってんのよあんたたち!こんなところで!」
「か…かぁちゃん…」
「やっと…止まった…」
~しばらく二人が回復するのを待つ~
合計約4時間も時間を取られて
(やっと本題に入れる…)ほとんどが女将の長話に付き合わされて辟易した新見。
改めて自己紹介に入る。
「あたしはアンっていうんだ。んで、こっちが旦那で商業ギルド長やってる。」
「ピンです…今日はよろしくお願いします…」喧嘩の生傷の手当の跡が生々しいギルド長が手を伸ばす。
新見はとっさに手を取り握手する。
「こ、こちらこそヨロシクオネガイシマス。」ちょっと片言になった新見だが
「では早速屋台のほうから確認しても?」と眼鏡をかけ、早速仕事に取り掛かるピン。
工房に保管してあるラーメン屋台を見て何かいろいろと紙に書きこんでいる。
「ふーむ、これは展開するタイプの屋台のようですが、実際の営業はどんなかんじです?」
と聞かれたので新見は営業用に屋台を展開して「これぐらいですかね」と回答する。
「ふむふむ…」と別の用紙にまた何かを書き込むと。
「これならすぐに許可証を発行できそうですね。お手数ですが商業ギルドまでご一緒願います」
最初の印象とは全然違う仕事モードのピンもといギルド長。そのギャップ戸惑いつつも屋台を元に戻したのち、商業ギルドへ足を運んだ。
商業ギルドに入ると二から三階が吹き抜けでステンドグラスで採光をしている受付。
そこにはいろんな種族が受付をしながらカウンター越しに接客をしていた。
従業員専用の出入り口から入ると中にいる狐の獣人の男性スタッフが
「おや、公爵さん、遅かったじゃないですか。しかもあなた直々にヒューマンの対応なんて珍しいですね。」
「まぁな。」
今度は「あ、公爵さん、先日の例の件についてのアポの連絡が来てましたので午後に会議をしたいんですが。」
「おぉそうでしたか、ありがとう。こっちが片付いたらすぐにやろう。」
「またあそこの幼馴染と喧嘩して奥さんに説教されたんすか?」と茶化すドワーフ。
「うるさいやい。」
(結構慕われてるなぁ…ん?聞き間違いか?デュークって公爵って意味だよな…)
新見はギルド長の呼称に疑問を抱きつつ応接室まで通された。
「いや~、すまないね。どうやらここ最近魔王が倒されたって噂がたってて事実確認とその噂の影響で物流が増えていてね。」
「いや~でも実際魔王は倒されてるんじゃないですか?」
「ハハハ、だといいんだけどね。」
(まぁ、魔王倒した本人目の前にいるんですけどね。)
「さて、世間話はこれぐらいにして今回の屋台で販売する商品についてだけど。えーっと、飲食物で”ラーメン”…飲食物の申し込みなんて珍しいね、しかも初めて聞いた料理。」
眼鏡をクイっとする。
「しかもあのいs…工房の長が推薦するぐらいだから相当なものなんでしょうね…」と推薦状らしき書状を見る。
「飲食物となるとレシピの提供…と言っても原材料だけ申告するだけですのでこれにレシピとこの用紙に記入してそれぞれの欄にサインしてもらえる?」
「あぁ、はい。」ととんとん拍子で申し込みが進む。
最後にギルド長の判を押し終わると
「お待たせしました。こちらが自由広場での許可証となります。インクに特殊な魔術が施されているので偽造はできないのでご安心ください。時々見回りの衛兵が確認に来ますがその際に魔道具が出てきますのでこちらの許可証を掲げるだけで確認が取れます。」
と丁寧に説明しながら許可証を手渡すギルド長。
「あ、ありがとうございます!」許可証を受け取った新見はとある疑問をギルド長に問いかける。
「ちょっと気になったんですけど…いいですか?」
「えぇ、なんでしょう?」
「先ほど入った時の公爵呼びってなんですか?」恐る恐る聞いてみる新見。
「あぁ、それね。」
「実は僕、爵位持ちの貴族…の息子なんだけど。
十数年前に父が升爵して公爵になったのをきっかけにみんなが敬意をもって次期頭首の僕を公爵って呼ぶようになったんだ。」
「ふぇ?」まさかの貴族でおったまげる新見。
「貴族の跡取りなんて今どきそんな珍しくもないでしょ。あそこの工房にはもっと珍しい…」
コンコンコン
ギルド長の話の途中でノック音がした。
「あぁ、ごめんね。そろそろ会議の時間だ。送れずにすまないね。君の売るラーメン、期待してるよ。」
とギルド長は呼びに来たスタッフとともに会議へ向かった。
すぐに別スタッフが来て従業員出入り口から許可証を手に商業ギルドを後にした新見であった。
ドワーフは喧嘩っ早いイメージですが男ドワーフだけが反りが合わない相手だと喧嘩っぽくなる習性があるらしいです。




