1-1 猫一匹に人類の命運を握らせる神様
初めまして、初投稿です。
木っ端な文章ですが楽しんでいただければ嬉しいです…!
「これで――終われぇぇぇーーーーっ!」
一人の男の叫びが轟いた。
閃光のような一撃が魔王を貫き、その巨体がぐらりと揺れる。
うめき声をあげながら、魔王はその場に崩れ落ちた。
黒い靄が立ちのぼり、やがて音もなく霧散していく。
「よっしゃああああああっ! 苦節八年、ようやく……ようやく元の世界に帰れる……!」
男は腕を突き上げ、勝利の雄叫びを上げた。
その名は新見孝。異世界に召喚されてから八年の歳月を経て、ようやく魔王を討ち果たした勇者である。
だが、彼の人生は本来そんな英雄譚とは無縁だった。
-----------------------------------------------------------------------
高校を卒業した彼は、どこにでもいる平凡な新社会人として、いわゆる“ブラック企業”に2年も勤めていた。
月に一度だけ、ささやかな癒しを求めて通う猫カフェが、彼の心と身体のオアシスだった。
その日も、仕事帰りに猫カフェへと足を運ぶ途中のことだった。
一匹の黒猫が突然、道路へと飛び出した。
咄嗟に身体が動いた。考えるより先に、彼は走り出していた。
次の瞬間、トラックのクラクションと眩しいライト。
そして、意識が遠のく中で、彼はぼんやりと思った。
(猫ちゃんは……無事か……? これがラノベなら、異世界行き確定だな……猫、いるかなぁ……)
その想いを最後に、彼の意識は闇に溶けていった・・・
次に彼が目を覚ますと視界いっぱいに白い光が広がっている。
やがて、その光はゆらめきながら形を成し――人の姿を形どった。
輪郭は淡く、顔立ちもぼんやりしているが、かろうじてミディアムロングのウェーブがかった髪だけはわかった。
「……え? ここどこ? 知らない天井じゃない!」
思わず口から出たのは、ツッコミを待ちのボケの様な叫び。
見覚えのない空間だが妙に体は軽い。
そんな彼に向かって、人型の存在が穏やかな声を発した。
「こんにちは。ここはね、君がいた世界とはちょっと違う場所なんだけど…」
「うお!びっくりした! あんた誰!? まさかとは思うけど、神様!?」
孝の問いに、光の存在は一拍置いて、苦笑したように肩をすくめた。
「…うん、そんな感じ。まぁ、気持ちの整理もあるだろうし。説明するから、ちょっと座ろうか」
そう言うと、人型は軽く指を鳴らした。
パチン。
突如、孝の尻の下から椅子が飛び出し、勢いよく彼を支える。
思わず声を上げたながら着席する。
神様らしき人型も同じように隣に椅子を生み出し、静かに腰を下ろす。
二人いや、一人と一柱は、光の中で向かい合った。
「さて、まずはここについてだけど……ここは、簡単に言えば“世界の狭間”ってところかな。君がいた世界とは違う場所、そう思ってもらえばいいよ。」
柔らかな声でそう告げる人型の存在。
その言葉を聞いた瞬間、孝の目が輝いた。
そして
「ついに…ついに異世界デビューキタ――(゜∀゜)――ッ!!」
両手を突き上げ、まさかのガッツポーズ。
神の前だろうと関係なし。興奮のボルテージは最高潮である。
人型は少し苦笑しながら肩をすくめた。
「……うれしいのはわかったから、続けていいかな?」
「どうぞどうぞっ!」と孝。完全に前のめりだ。
「僕はね、君がいた世界とは別の世界の神なんだ。そもそも、君がここに来ている時点で“特例中の特例”なんだよ。」
「うんうん、それでそれで!?」
興奮気味に身を乗り出し、鼻息まで荒い。
人型の神は、少し引き気味に間を取ってから言った。
「…君が最後に助けた猫、いるでしょ? あの子、実は今、僕がいちばん推してる猫なんだよね。」
「へ?」
「で、君が助けなかったら、あの子は間違いなく死んでた。そうなってたら……僕、悲しみのあまりに二千年ぶりくらいに、地球の神に頼んで地球をリセットしちゃうところだったんだ。」
サラリと放たれたその一言。内容は洒落にならない。
「お、おぅ…」
孝は固まった。
まさか自分が異世界より先に自分の世界を救っていたとは思いもしなかった。
“猫一匹に人類の命運を握らせる神様”そんな存在がいるとは、この時の彼は夢にも思っていなかった。
出来れば週1更新目指して頑張ります…!




