スパルタ純情伝 捕捉
基本的にプルタルコスの「リュクルゴス伝」を下地に、一部、誇張と筆者の妄想を入れて捕捉解説していきます。
プルタルコス自身がラコニア人ではなく、アテナイ人だったりしますし、古代スパルタはBC800〜700年ぐらいに成立したポリスです。
古代スパルタを紹介したのはBC450〜350ぐらいを生きたクセノポンぐらいですし、プルタルコスはAC50〜120ぐらいの人なんですよね。
年代の隔たりが酷いので、絶対に史実とは言えません。
事実、最新の史料からすると、だいぶ違っていたという説も強くなっています。
しかし、面白いので、今回は「一応の史実」として扱うことにします。
面白さは全てを凌駕するんだい!(暴言)
・ペイトたちの食事について
ペイトたちが飲むスープはメラス・ゾーモスといって、豚肉を煮た汁に血・酢・塩などを加えた、スパルタ名物の黒い煮汁です。
味は極めて不味いらしく、捕虜になったスパルタ兵が敵国の食事の美味さに涙を流したとされています。
想像するだけで、クッソ不味そう……
・訓練前に歌ってる男について
古代スパルタでは30歳になると兵舎から出ることになるのですが、この時点で結婚していない兵士は「未熟者」とされます。
なので、兵舎から出る間近なのに結婚していない兵士は、全裸で訓練前に本編のように全員の前で歌うことになっていたらしいです。
……嫌すぎ。
・ヒュアキンティア祭について
毎年、夏のヒュアキントスの月始めに3日間行われる祭りだそうです。
2日目には街のいたるところで若者たちがキタラ(弦楽器)やアウロス(二股の木管楽器)を演奏して盛り上がり、アミュクライの街ではパレードが行われたそうです。
全裸の女性たちを見て男たちは未来の花嫁を見定めたりするのが習わしだったそうです。
・スパルタの女性について
古代スパルタの女性は基本的に街に残り、男たちの出征中に街を守る予備兵でもありました。
なので、女性たちにもスポーツが認められ、日々、鍛えていたわけですね。
後述しますが、スパルタでは軍事訓練という名の辻斬りが横行していたらしいので、鍛えておかないと普通に死ぬというのもあります。
・スパルタの未亡人について
古代スパルタにおいて、当時のギリシアでは珍しく、女性にも財産権が認められていました。
というか、男たちは戦争や訓練で死ぬ確率が高めなので、女性側に財産権を認めないと、所有者不明の財産が多く生まれてしまうからですね。
なので、財産目当てに未亡人を狙う兵士がいたりしたそうです。
・訓練場に背中を向けて歌っていた男について
兵舎を卒業する直前まで結婚できなかった未熟者の兵士はヒュアキンティア祭に参加することは許されませんでした。
ですので、ヒュアキンティア祭の訓練を見ることはできなかったわけですね。
いや……ヒュアキンティア祭って嫁探しを兼ねたイベントだろ……余計に婚期を逃すだけじゃん。
・スパルタの子どもについて
古代スパルタ市民は生まれたと同時に部族の長老から面接を受けます。そこで弾かれた者はタイゲトス山の洞窟へと遺棄されたそうです。
現代なら一発アウト。
男女ともに7歳になると、学舎に入ることになります。
ただ、学舎に住み込むのは男の子だけで、女の子は自宅から通ってたりしたそうです。
・兵舎での食事について
兵舎では全員が揃って食事をするのですが、基本的に食事量は少なく、同じものしか出なかったそうです。
これは、常に飢えていたほうが良いという理屈だそうで、夕食に出る果物やナッツ類は年長者が独占するというのが日常だったらしいです。
・古代スパルタの男色文化について
古代ギリシャでは男色は兵士間での絆を深め、お互いを守り合う意識を高めるということで積極的に奨励されていました。
この行為も、同級生同士ではなく、年配者から年少者への手ほどきということになっており、本編のようにテリウスとペイトという年の近い者同士というのは少なかったらしいです。
学舎の学生同士でもあったそうなので、そこは割り切りました。
アッー!
・古代スパルタでの通い婚について
本編の記述どおり、兵士たちは夜に兵舎から抜け出して、妻の下に通っていました。
この行動も隠密行動の訓練の一種とされ、見つかった場合は鞭打ちの刑が課せられます。
なので、妻のもとに通うのも、兵士にとっては命がけなのです。
プルタルコス曰く「これぐらいスリルがあれば、毎回、夜の営みは激しいものだろう。それこそが強い子どもを産むのだ」とのこと。
ホンキか?
・スパルタ兵士の朝は寒い
これも事実です。
ギリシアは緯度が高く、古代スパルタは福島県から茨城県北部ぐらいの緯度にあります。
なので、結構、寒いです。
さらに、古代スパルタの兵士は、7歳の時に渡される布切れ一枚の服以外の衣服を支給されません。
なので、朝はとっても寒いんですね。
・スパルタの食事について
前述しましたが、基本的にスパルタの兵舎での食事量はとても少ないです。
なので、兵士たちは常に腹をすかせており、兵舎を抜け出して食料調達するしかなかったのです。
・ヘイロタイの殺害について
前述のとおり、古代スパルタでは兵士や学生は常に空腹です。
そのため、軍事訓練として奴隷を襲うことがあったそうです。奴隷を対象にはしていますが、女性などが辻斬り対象になることもあったらしいです。
だから、女性も鍛えないといけなかったんですね。
ていうか、ただ、歩いていたら殺されそうになるって、北斗の拳も真っ青の世界ですね。
・メッセニア遠征について
古代スパルタは、市民は全員兵士(及び予備兵)という扱いですから、非常に生産性の乏しい国家でした。
これは、国家内が市民と、30〜100倍近いヘイロタイで構成されているため、スパルタ市民一人でヘイロタイの100人をぶち殺すぐらい強くなければならない、という狂った思想から生まれたものです。
そのため、タイゲトス山脈を挟んだ隣国のメッセニアに、軍事訓練と称した、出兵が頻繁に行われ、略奪によって国家が運営されていたんですね。
メッセニア人にとっては災難としか言えません。
・古代ギリシャの戦いかたについて
重装歩兵が盾を並べ、一糸乱れぬ足取りで前進し、槍で敵陣を押し崩していく戦法です。これが有名なファランクス戦術です。
・戦いの後
前述の通り、メッセニア出征の目的は略奪です。
守備兵がいなくなれば、後は略奪の時間。
兵士たちはメッセニアの集落に上がり込み、貯めてあった食料を食べ漁り、服の中に溜め込んでいくわけです。
腹を空かせた兵士たちはここぞとばかりに、食い散らかしたと思われます。
集落後方に避難していた女子供をみつければ、女たちを凌辱し、子どもたちは奴隷にするため捕縛して連行することになります。
阿鼻叫喚の地獄絵図の中でリーザへの愛を誓うペイトの精神力は素晴らしいですね。
・古代スパルタの結婚式について
本編で書いた通りです。
花嫁は坊主にされ、男物の服を着させられて、小屋で花婿候補を待ちます。
花嫁が坊主で男物の服を着ているのは、「若い花婿が花嫁との初夜で驚かないように」という、現代感覚では斜め上過ぎる理由とされています。
花婿候補が小屋へ忍び込み、花嫁と初夜を迎えます。
基本的に力づくらしいです。
初夜を済ませたら花婿の実家へと物理的にお持ち帰りして結婚成立となります。
これは、略奪行為の訓練とされているそうです。
女性は初潮を迎え12歳になるとヒュアキンティア祭のパレードに参加できるので、その時点で結婚okとなります。
ですから、リーザがペイトと結ばれるためには、彼女は12歳から18歳までの6年間、迫りくる花婿候補を物理的に退ける他に手は無かったわけです。
結果として、彼女は吉田沙保里かギャビ・ガルシアになるしか無かったわけですね。
また、ペイトの両親は既に他界しているので、ペイトがリーザをお持ち帰りする場所はリーザの実家になってしまうのです。
いやぁ、スパルタで純愛を貫くのって大変ですねぇ。
ここから先は、本編では書かなかった、古代スパルタの貨幣事情についてです。
・古代スパルタの貨幣事情
古代スパルタでは「富を溜め込むのは悪徳」という思想があったそうです。
そのため、リュクルゴスは「物理的に貯められないようにしよう」という制度にします。
そのため、古代スパルタでは鉄の槍(棒)が貨幣とされていました。
6オボロス=1ドラクマとされていて、100ドラクマ=1ムナとされていたそうです。
1ドラクマは熟練工の日当相当とされていたらしいので、現代日本の感覚なら、おおよそ1万円程度の日当と考えるとイメージしやすいでしょう
問題は、その重さ。
1ムナで約150kg程度の鉄塊とのことなので、1ドラクマは約1.5kg程度。1オボロスで約250g程度のはずです。
この鉄棒貨幣は当然スパルタ以外では使えないため、スパルタ出身者が他の土地で使おうとしたら笑われたという記述が残っていたりします。
これらは、前述の通り「物理的に貯められないようにしよう」というのと、「国外に資金流出させない」ということで使われました。
いやさぁ……他に手があるんじゃねぇか?税制とかさ……
ここから、妄想を膨らませると面白いことになります。
兵士たちの給料日、兵士たちが並んでるのは、鉄棒がうず高く積まれた資材置き場のような場所。そして、週給5ドラクマと仮定すると、約7.5kgの鉄塊が渡されるわけです。
「わーい、給料日だー!」
ダンベルがドーン!
「今週は、ちょっと頑張ったな。少し加増してやろう」などと言われると、更に重量が増加。
これを自宅に持ち帰るまでがミッションです。
常に筋トレだー!嬉しいな〜!(棒)
「お隣の家、床が抜けたらしいわよ」
「なんでも、3ムナも貯め込んでたらしいわよ……」
「やぁねぇ……」
という井戸端会議が日常的に行われていたのかもしれません。
散らかった家だと、床に転がっていたドラクマ棒に小指をぶつけて悶絶する人がいたかもしれません。
街での買い物もなかなかにハード。
約1.5kgの鉄棒を持って市場に行くわけですが、前述のとおり「歩いているだけで、殺されかける」のが古代スパルタの日常です。
貨幣であるドラクマ棒自体が凶器になりそうです。
リーザなら、襲ってきた暴漢をドラクマ棒で撃退してそうですね。
血まみれのドラクマ棒を市場の店主に渡して、30kg近い大麦とその他の食料を抱えて帰宅。
やはり筋肉。筋肉は全てを解決する……
血まみれのドラクマ棒を渡された店主はどんな気持ちだったのでしょう?
日常茶飯事だから平然と受け取っていたりしたのかもしれません。
「今日はいっぱい売れたなぁ」とホクホク顔で振り返ると、店の裏には血まみれの15kg以上の鉄塊が鎮座してるわけです。
怖ぇぇよ、古代スパルタ……。
古代スパルタに関しては、どっからツッコんで良いのか、わかんねぇよ!
「スパルタの中心で、愛を叫ぶ 新解釈ギリシャ神話・スパルタ純情伝」に最後までお付き合いいただきありがとうございました。
物語はフィクションですが、捕捉で書いたようにスパルタの生活や結婚様式はプルタルコスのリュクルゴス伝を極力なぞりました。
一部、誇張や妄想は入れてますが、この物語に石を投げたい人は私にではなく、プルタルコスかリュクルゴスに投げて下さい。
この物語はスパルタで一途な純情を貫いた二人の物語です。
純愛?
純愛なのだろうか?
純愛とはいったい……
純愛と言ったら純愛なんだい!
そんな疑問を持った方はコメントなど下さりますと今後の執筆活動の励みになりますので、よろしくお願いいたします。
では、また会える日を楽しみにしております。




