<EP_001>新兵ペイトリオス。運命の決意
<登場人物>
ペイトリオス:通称ペイト。18歳 新米兵士
リーザ:ヒロイン。18歳。「難攻不落のリーザ要塞」
ヴォルクルス:リーザの父親。通称ヴォルス
テリウス:ペイトの先輩であり、ペイトとは仲が良い
それはペイトリオスが18歳になった朝であった。
(今日から俺も軍に入れるんだ。リーザ、待っててくれよ)
ペイトリオスは、獣の血と酢を煮詰めた漆黒のスープを飲み干した。
喉を焼くような酸味が、18歳の若き血潮を戦士のそれへと作り変えていく。
(リーザ、待っていてくれ。君を抱くために、俺は今日まで生きてきたんだ)
朝食が終わると、6歳からの12年間学んだ学舎を後にし、兵舎へと移動する。
兵舎につくと将軍から直々に鎧と盾と槍を渡され、15人組と呼ばれる仲間を紹介された。
その中にはかつて学舎で寝食を共にしたテリウスの姿があったため、ペイトはホッと胸を撫で下ろした。
「よう、ペイト。久しぶりだな……随分と、いい身体になったじゃないか」
差し出された手をペイトは力強く握りしめる。
差し出されたテリウスの手は、岩のように硬く、そして微かに湿っていた。 握りしめられた右手の骨が、歓喜に震えてミシリと鳴った。
「テリウス先輩。お久しぶりです。先輩と同じ組に入れて、俺も嬉しいですよ」
そのまま、テリウスはペイトの身体を吟味するように、テリウスの手が首筋を撫で、胸板に指先を滑らせていく。
ペイトは懐かしいテリウスの手で触られ、少し頬を染めてしまった。
「テリウス。旧交を温めるのは後にしろ」
隊長のガイウスがテリウスをたしなめると「は。失礼しました」とテリウスは背筋を伸ばして応えた。
「ガイウス隊長も、よろしくお願いします」
そこからガイウス隊長を始めとした隊員たちに挨拶をしていく。
全員が言葉少なにペイトの入隊を歓迎してくれた。
「では、訓練の前に兵舎を案内しよう。テリウス、お前が知り合いなら案内してやってくれ」
「わかりました」
「では、ペイトリオス、後でな」
そう言うとガイウス以下の他隊員は部屋を出ていった。
テリウスに連れられ兵舎を案内されていく。
「いやぁ、お前とまた一緒になれるなんてな」
テリウスに肩を組まれ、懐かしい臭いを感じて、ペイトは頬を染めてしまう。
「俺も先輩と一緒なら心強いですよ」
「ああ、わからないことがあれば俺に聞いてくれ。また、面倒を見てやるよ」
そんな会話をしながら一通り兵舎を案内して貰い、訓練場へと戻った。
二人が訓練場に戻るとガイウスが待っていた。
ガイウスは他の隊員を集め、訓練を始めようとした。
その時、訓練場に大きな声が響いた。
見ると、訓練場の中央に全裸の男が立っており、声は男が発したようだった。
訓練場にいる兵士が男に注目する。
男はふしをつけ歌うように絶叫する。
「私は、この歳にもなって結婚できない未熟者です。私は兵士として男として未熟なんです。どうか皆様、未熟な私を叱咤して下さい〜」
そんな歌詞であった。
男を見ながら隊員たちはボソボソと話をしていく。
「あの人、また結婚を失敗したのかよ」
「なんでも、今回は14歳の子を狙ったけど、入れる前に絞め落とされたらしいぜ」
「うへ、ダセェ……」
「前回みたいに花嫁の家に行く途中に野犬に噛まれて行けなかったよりはマシじゃねぇか?」
「ああはなりたくねぇよな……」
そんな話が交わされていった。
(俺はああはならない。俺にはリーザがいるんだ。)
涙を流して歌う男を見ながら、ペイトは決意を新たにした。




