表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/16

最終話   半魔の娘に花冠を




  広く荒れた大地に、ふたつの影―――、




舞い上がる砂埃(すなぼこり)の中から声がした。


「素晴らしい!!オレ様が、ここまで追いつめられるとは、大した女だ!」

「さっき精霊達が、お前の核にマーキングをした!これでどこに受肉、転生しようとも、お前を見つけられる!ガブドル、お前にもう逃げ場は無い!!大人しくブラントの体を返しなさい!」


肩で息をし、片膝をついて杖にすがりながらも、アルテナは、ガブドルを睨みつけた。


「フッ、オレ様を睨むその目。……半魔でありながらよくやった。褒めてやろう。だが、所詮(しょせん)ここまで、」


ブラントの体に憑依したガブドルは、手を叩き不敵に笑いながら、そう言い放った。


「―――、結界も無く、お前が道連れともいえる、首飾り(それ)を使わない。いや、使えないのであれば、オレ様は消滅しないのだからな。クフフフッ」

「くっ!」


アルテナは、やり場のない(いきどお)りを表情に(にじ)ませ、攻めあぐねている。


だが、突然ガブドルの様子が、おかしくなった。


フラフラとしだしたのだ。


「うっ、―――何だ?」


ガブドルは、膝を折り手を地に着けた。


ガブドルの顔が、みるみる変わり、今度は優しい眼差(まなざ)しでアルテナに話しかけてきた。


「……やれ!、……アル・・テナ……」

「ブ、ブラント!?ブラントなの?!」


さっきまでの表情とは全く違う、その見慣れた笑顔に、アルテナは、すぐ感じとれた。


「あぁ、今、やっと奪い返した。だが長くは持たないだろう。これが最後のチャンスだ!ガブドルはオレが抑え込む」

「ダメッ!!できない!」


「何を迷っている?!もう時間が無い。だから早く!!」

「そんなの、―――」


肩を落とし、うつむくアルテナは、とうとう座り込んでしまった。


「それでは、あなたを救えない!!」

「アルテナ……」


ブラントは彼女に手を伸ばし、触れようとしたが、その手を固く握った。


「頼む、アルテナ。このままではオレたちが築き上げたもの全てが、無駄になってしまう」


震える体を杖で支え、自分に近づこうとするアルテナにブラントは、首を横に振った。


「君ならできる。いや、君にしかできない!やるんだアルテナ!!」


アルテナは、ブラントの言葉に杖をギュッと握り締め、揺れる心を必死に抑えている。


「そんなの…できないよ……」


肩を落とし、悲しげな表情でアルテナは、ブラントを見つめた。


「アルテナ」


迷っているアルテナに、ブラントは、彼女の名前を呼ぶと、優しく、優しく声を掛け、自分の左手の甲をアルテナに見せた。


「オレは、ここに……。君の(そこ)にいる」


ブラントは、自分の左手の甲を右手で優しく包み、そう言った。


そして、かすれる声を振り絞りながら、


「アルテナ……オ……レは……君……愛して……い……


すると、不思議とアルテナの体の震えが止まり、彼女の左手の甲にある黒い刻印が徐々に、そして、沸々(ふつふつ)白濁(はくだく)していく。


アルテナは、それを胸に押し当て愛おしそうに()でた。


「そうね、ブラント。あなたを感じるわ……」


片膝をつき、震える膝で立ちあがろうとうとするアルテナ。


倒れこんだブラントの体に再びガブドルが憑依し、体に付いた土を払いながら立ち上がった。


   ―――オイオイ、なに出しゃばってんだ?勝手に(しゃべ)んじゃねェよ、バーカ!気持ち悪いだろうが」


アルテナの頬を涙が、ひとつだけ伝いこぼれたが、目には闘志が(よみがえ)った。


「ブラント、私も……私も、あなたを愛してる」


そう、つぶやくとアルテナは、立ち上がった。


杖を投げ捨て、首にかかっていた魔石ごと首飾りを引きちぎり、呪文を唱え始めた。




   カァーーーーーーーーッ!!




次の瞬間、手のひらの魔石にヒビが入り、眩しく光りだした。


するとアルテナの体から黒みがかった炎のようなものが立ち昇り始め、全身を駆け回る痛みに、彼女は一瞬顔を歪ませたが詠唱を続けている。


「オイ、まさか?貴様!何をやってる!!」


アルテナは、苦痛を感じながらも詠唱を読み上げ、魔石は砕け散りさらなる光を放った。


術の固定に成功したである。


「くっ、安心して。この世で迷子になったあなたを、私が、あの世まで一緒に連れていってあげるわ」


自身の体をも覆う炎の中、アルテナは静かにガブドルを凝視(ぎょうし)している。


アルテナから出ていた炎のようなものは、みるみるガブドルをも包む。


「くそぉぉぉっ!!何だこれは?」


炎は勢いを増すと、ガブドルは、もがき苦しみ始めた。


「終わりよガブドル!!引導(いんどう)を渡してあげる!」


アルテナは最後の力を振り絞り、全身を駆け回る痛みの中でも、決して攻撃の手を緩めなかった。


「やめろぉぉぉっ!うぎゃーーーーーーーぁあぁあああ!!あぁ……」


ガブドルの叫ぶ声だけを残し、黒い炎に包まれた、ふたつの影は跡形もなく消滅した―――。




こうして、戦いを引き起こし、混沌(こんとん)をまき散らす邪神ガブドルは、存在の力を失った。


この事で、ガブドルの特性である絶対支配とカリスマの影響力から解放された多くの魔族は、人族との和解を望み、ようやく千年にも及ぶ長い戦いに終止符が打たれた、その瞬間だった。




戦いに明け暮れていた、このどうしようもない愚かな世界を救ったのは、紛れもない―――、




   嫌われ者だった半魔の娘だ。




   プルーバー作『魔王子と半魔の娘』より抜粋―――。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




この作品により、自分の身を犠牲に諸悪の根源だった邪神ガブドルを退け、平和をもたらしたアルテナの功績は、世界中の人々に知られることになった。


また、皮肉にも差別の対象だった色違いの瞳は、平和の象徴となったのだ。


そんな彼女を想い、死を(いた)む多くの人達の祈りは、存在の力となって精霊を介し、長い年月をかけてアルテナへと注がれた。


霧散した肉体は戻らなかったが、彼女の意思はやがて、女神アルテナへと形を変えた存在に、なってゆくのだった―――。




しかし―――、


あの戦いの本当の結末は、この本の物語とは少し違っている。


その事を知る者は、そう多くない―――。




時が過ぎ、ロリエッタは、久しぶりにペルムの森に来ていた。


「懐かしいのう……。この場所は、―――」


フッと笑ったロリエッタの横顔は、少し淋しそうにもみえる。


「ようやく書き終えたぞ……バカ弟子ども」


ロリエッタは、ふたつ並んだ誰も入っていない墓に一冊の本を置き、そして―――、


花の冠を、その上に静かに置いた。


「これをブラントの横に並んだ、お前の頭に載せてやりたかったよ……」


ロリエッタは目を細め天を仰ぎ、この思い出の地を後にした―――。




アルテナとガブドルとの戦いから、約300年後。


物語はゆっくり―――、


そして、……大きく動き出す。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


「嫌われ半魔の娘に花冠を」いかがでしたか?


短編?このボリュウムだと中編なのかな?と、いうこともあり、少々説明不足の点もありますが、私の次回作、長編小説で『Web小説から始まる恋物語』の作中に実は、この物語が登場します。


今回の物語の約300年後の世界を舞台に、今回の作品とリンクしていて、おおよそ100話を予定した長編となっています。


この長編を読んで頂けたら、今回のこの作品がより一層楽しめると思います。

現在執筆中で約50話程できていて完結確約です!!


近日中には公開する予定なので、是非チェックして下さい!


また、この作品『 嫌われ半魔の娘に花冠を』が好評の場合は、時間がなくてできなかった長編版も考えています。

もし、この物語が気に入ってもらえたなら、評価、感想、ブックマークで、作品を応援してください。


ここまで、読んでいただいた皆様に、感謝です!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ