【77】工事現場にコンビニを建てました
『カワグチさんっ! 出来ましたよ』
昼過ぎにサールさんから連絡をもらって、俺とペロは急いで魔導塔に行った。
俺達がいくと、サールさんとセレディオさんが嬉しそうに笑っていた。
「全部で100セットアクセサリーが出来ました。既に洗脳されている人はピアス。まだされてない人はネックレスですね」
「おお、じゃあ結構出来ましたね!」
見たところピアスが20セットのようなので、それはセイワ共和国にセインさんからどうにか渡してもらおう。
残り80セットをナーミャとラングスチアで山分けするとしたら40セットずつになる。
王族関係者で20セットずつ、俺やサールさんのように主要で動いてる人物がつけるとなると……。
「でも鉄道関係者全員ってなると、この数でもギリギリ、というか厳しいんですよね……」
考え込んでしまった俺を察したのか、サールさんが苦笑いになった。
「いや、でも一日でこれだけの量を作ってくださるなんて。本当にありがとうございます」
「……もっと、作った方がいいですかね?」
俺が礼を言うと、ちらっとサールさんがペロの方を見る。
すると、セレディオさんが難しい顔をする。
「……とはいえ、キリがないからな。これから外部からただの作業員や日雇いの者も雇うことになる。工事が大規模なものになる予定だしな。その際、さすがにネックレスを渡して、万が一持ち帰られても困るんだがな」
その言葉に俺も考えてしまう。
「確かに……。とはいえ、洗脳された人を助ける為のピアスはもうちょっと作っておいてもいいかもしれないですね。せっかく僕達もナーミャにいるのであと一回ペロの能力を抽出させてもらった方がいいかもしれません。……ペロもそれでいいか?」
「ああ、大丈夫じゃ」
そう言われて、昨日と同じ部屋にもう一度行った。
魔法陣の中心にペロがちょこんっと座ると、再びパアアアッと光り、上にある容器が青い液体で満たされていく。
サールさんがそれを真剣は顔で取り外していくが、ペロの息が少しだけ浅く、ハッハッと呼吸している。
「……ペロ。大丈夫か?」
心配になって覗き込むと、ペロが頷く。
「ああ。大丈夫じゃ。じゃが、調整してくれてるとはいえ、流石に続けてじゃときついのう……」
恐らく本当は結構キツそうに見える。だが、状況を理解しているだけに我慢してくれたのだろう。
「……ペロ。ごめんな」
俺はギュッとペロを抱きしめると、好物のカレーせんべいをあげた。
流石にこれ以上はペロに無理はさせられないので、アクセサリー作りは一旦これでやめさせてもらおうと思う。
「っ、すみません! 調整したつもりだったんですけど、今日はイレギュラーで採取したので辛かったですね……。もう、暫くはやめておきましょう。今日の分だけで一旦どうにかなると思うので」
サールさんも申し訳なさそうに言ってくれたので、一旦ペロのスキルの力を採取するのは落ち着きそうだ。
「すみません。それじゃ、ペロも疲れてるみたいなので、僕達は一旦帰りますね。アクセサリーについてはナーミャの分は国内の判断で渡す人を決めて頂きたいです。」
俺がそう告げると、セレディオさんが頷く。
「ああ、とりあえず王族と私達、それに駅が出来る土地の領主には渡すことになるだろうな。ラングスチアの分と、セイワ共和国の分は出来上がり次第セイン様宛で送っておこう」
俺達はセレディオさんとサールさんに見送られながら魔導塔を後にした。
「ペロ、何か食べたいものや行きたいところはあるか?」
俺が尋ねるとペロの耳がピンッと立った。
「そうじゃのう。どうせなら温泉に行きたいのう」
そう言われて、俺は今朝のことを思い出した。
測量隊が消失したというが、詳細はまだわかっていない。
「じゃあせっかくだからフォンティーヌ領の温泉に行くか。公爵も行ってるみたいだし。公爵婦人とクリスさんにも聞いてみよう」
すると、ペロは嬉しそうに尻尾を振った。
「とりあえず温泉に行けるのならワシは嬉しいわいっ」
家に帰ると、公爵夫人に俺は切り出した。
「今公爵が行ってくださってますが、今駅ってどんな感じなんでしょう? 僕達、ペロも力を取りすぎて体力落ちてますし、温泉に行くついでにフォンティーヌ領に行こうかと思ってまして。その、状況も気になりますし」
「まあ!! だったら私達も行くわ。今は王都での仕事はほとんどないし」
クリスさんと婦人が準備している間、俺達も荷物をまとめて、タロウに餌をあげる。
公爵家の方でたくさん美味しいチキンを用意してくれたので、ありがたく頂くことにした。
タロウも嬉しそうである。
「それじゃ行きますかー。タロウ、よろしくな」
俺達が乗ると、タロウはグルォオオオオオオッと咆哮すると、フォンティーヌ領に向かって飛び立った。
ホテルにタロウを預けると、俺達は荷物を置いてから鉄道工事をしている現地に向かった
「おおっ! カワグチ殿っ!」
現地に行くと、公爵が駆け寄ってきてくれた。
ついでに現地のスタッフに、アイテムボックスに入れていたドーナッツを差し入れする。
皆さんとても喜んでくれていて良かった。多めに買ってきておいて本当によかった。
「……どうでしたか? 測量の人達がまるっと全員いなくなってしまったんですか?」
俺が尋ねると、公爵が頷いた。
「ああ、だが、血痕もないし、戦闘した形跡もない。しかも、荷物もほぼ残っていて、貴重品だけ消えている」
公爵の説明を顎に手を当てながら聞いていたクリスさんが顔を上げた。
「ふむ……それはおかしいですね。攫われたというより、自分達で移動した感じですか……?」
「そう考えるのが自然だろうな。別に商人に中で入札した外部の者を雇っただけだから、また入札し直せば良いが……。地味に時間を食うし、他のスタッフに時間を取らせているから給料は払わない訳にはいかない」
そう言って公爵は唸り声を上げた。
俺の脳裏にはカミシロさんの顔が浮かぶ。
「……もしかして洗脳でしょうか」
「その可能性も高いな。いずれにせよ、魔導士を派遣してもらっておかしな動きをしている者がいないか、今後は確認せねばならない」
その言葉に俺はハッとする。
「そうだ! 監視カメラ……監視の魔道具のようなものはなかったんですか?」
すると、公爵は眉尻を下げた。
「ここは確かに駅の予定地だが、流石に建設段階だ。流石に、その状況で高価な魔道具だけ設置するのは難しくてな……」
確かに、出来上がった駅ならともかく現状、ただの工事現場におくのは難しいかもしれない。
……そうだ!
俺は連絡の魔道具でセインさんに連絡し始めると、すぐに出てくれた。
『やぁ、カワグチ殿。さっきサール君から連絡貰ったよ。スキル無効化のアクセサリーが無事できたそうだね。今日追加分が出来上がったら、すぐに送ってくれるらしい』
「はい、良かったです。ところで、今ナーミャの鉄道の測量隊が姿を消したらしくて、フォンティーヌ領に来てるんです。ただ、現状ただの工事現場に監視カメラをおけないとのことでして。そこでですね、駅の予定地に、監視カメラ目的で、コンビニと休憩所を作っていいでしょうか」
すると、少しの沈黙のあと、セインさんから了承の言葉が返ってきた。
『ああ。いいよ。どうせ駅の中にはコンビニを作ってもらう予定だったからね』
「ありがとうございます! では作ってしまいますね。今度から各領主に、現場の人達に休憩時間に誰かと話す時は休憩所を使うように指示を出すように伝えます。今度から人が集まる前に建設予定地が決まった駅の周りから、休憩所と駅を作っていきますね」
俺は電話を切ると、公爵にその旨を話した。
「おお!! 確かにそれなら誰かが接触してきても監視カメラがあるから安心だな」
「ええ。まあ、それでも街中で内密に話されたりしたら厳しいですけど。少なくとも大人数がごそっといなくなる可能性は低いでしょう」
俺はそう言うとスキルを発動させた。簡単な事務仕事が出来る場所や打ち合わせ室、それにお昼ご飯が食べられるような場所があるようにしたいので、役場の建物を立てることにした。
「はい、皆さん。では、ちょっとどいてくださいねー」
人払いをすると、俺はスキルを発動させた。
『コンビニと、役場を建設しますか?』
脳内に浮き出た言葉に俺が頷く。
次の瞬間。
ゴゴゴゴゴゴ!!!
音を立てて土の中からコンビニとコンクリート造りの立派な建物が出現した。




