【60】義実家訪問で海辺に高級ホテルを建てました。
「グルォオオオオオオ!」
タロウが嬉しそうに咆哮する中、俺とフィオナさんとペロはナーミャへと向かっていた。
「フィオナさん、アルカディアに住んでから初めての里帰りじゃないですか?」
俺の言葉にフィオナさんが目を丸くする。
「……そういえばそうでしたわね。ふふっ、向こうでの生活が毎日楽しくて、時々家族にも会っていましたし、そんな事考える暇がなかったですわ」
そう言ってもらえてなんだか嬉しくなる。
「……それはよかったです。お土産、喜んでくれるといいですね」
「まあ、微妙な反応だったら、ワシが全部食ってやるわい」
三人でそんな事を話している間にあっという間にフォンティーヌ公爵家に着いた。
前回、庭園の広いところにタロウを停めていいよと言われたので、遠慮なく停めさせてもらう。
「──フィオナッ!!」
タロウを降りて水とサラダチキンをやっていると、フォンティーヌ公爵達が慌てた様子でやってきた。
「……お父様!!それにお母様にノエルも!」
フィオナさんも嬉しそうな感じで駆け寄っていく。
俺はタロウに水をやりながら会釈した。
「──こんにちは!」
すると、フォンティーヌ公爵に感極まったように抱きつかれた。
「カワグチ殿っ!! いえ、アルカディア伯爵! この度はフィオナと結婚して下さって……! 何とお礼を申し上げたらいいか……」
「あ、いえ。僕が結婚して欲しいってお願いしたので」
すると、フォンティーヌ婦人が嬉しそうに口元を抑えた。
「……まあ!!」
「カワグチ様、ペロ様も入ってください。お茶の用意が整っておりますので!」
弟のノエルさんに促されて俺達はは屋敷の中に入っていく。
ふかふかにも高そうなソファに座らされて、なんだかいい匂いのする高そうな紅茶を入れられた。
「あ、これ。お土産です。せっかくなんでみんなで食べましょう」
そう言って俺がドーナッツやワインなどショッピングモールで買ったお土産を次々と出すと、公爵家の人達の目が輝いた。
「……まあ!! これは、プレオープンでアルカディアに伺った時にあまりにも長蛇の列で買えなかったドーナッツだわ……! ありがとうございます」
フォンティーヌ夫人が興奮してドーナッツを見ていると、使用人が取り分けてくれた。
「……それで、今更ですが、僕がフィオナさんと結婚するに当たって、その、貴族だとどうしたりするんですか? チラッと聞いたところによると夫の家が結納金のようなものを奥さんの家に贈るって聞いたんですけど」
「……そんな! 滅相もない! 結婚して姉を守ってくれるというだけで僕達は……」
ノエルさんがそう言って手を振っているが、そういう訳にもいかないだろう。
「いや、でも、僕も一応向こうで伯爵になったんであんまり常識外れなことはしたくないなぁと思ってまして。ただ、恐らくフォンティーヌの家の人達の基準からすると、お金はそんなにないと思うんですよ。だから、僕のスキルで何か作ろうと思ったんですが」
実際、フィオナさんが持ってきた宝石だけで軽く一億円超えていたのだ。
それをポンと出せる家にお金を少しあげたからって喜ばれるか微妙なところだ。
だからこそスキルで何か建てる許可をセインさんから貰ってきたのだが。
「……素晴らしいですね。本当にいいのですか? こちらとしては願ったり叶ったりですが」
ノエルさんがそう言って嬉しそうに笑った。
「何がいいですか? 流石にショッピングモールはラングスチアの国家プロジェクトなんで無理ですが、テナント付きのマンションか、コンビニ、ホテルくらいなら作りますよ? テナントの入ったホテルもできるみたいですし」
ちなみに来る前にきちんとスキルAIに確認しておいた。
「では、ホテルを作ってもらってもいいだろうか? ここは王都のタウンハウスだが、領地の方に作って貰えたらありがたいのだが。──綺麗な海があるのだが、どうにも廃れていてな。いい宿があればきっと貴族が避暑に来てくれると確信している」
公爵の言葉に俺は頷く。
「わかりました。ではちゃちゃっと行っちゃいましょうか。道案内してくれますか?」
フォンティーヌ家の人達が頷いてくれたので、皆でタロウに乗る。
大体ドラゴンだと、40分程度で行けるらしい。
フォンティーヌ公爵はドラゴンで行ったり来たりして領地を治めている……ということだ。
皆でお土産を食べながらまったりと話していたらあっという間にフォンティーヌ領まで来る事が出来た。
「──へえ。綺麗な場所っすね」
案内されたのは海辺の街でハワイのような美しい砂浜がある。白い砂は見ているだけでも美しく、海亀も泳いでいる。
ペロはおっかなびっくり、海亀をつついている。
「ホテル、どこら辺がいいですかね?」
「うむ。海が見えた方がいいからな。ここら辺はどうだろう?」
フォンティーヌ公爵の言った場所は、少し高台に登った静かそうな見晴らしの良い場所だった。
「いいですね!ここにしましょうか。災害があってもここなら津波も安心そうですし」
そう言って、オレは手をかざす。
──その瞬間。
ゴゴゴゴゴゴ!!!!
地響きがして、巨大なホテルが地面から姿を現した。
「……なっ!」
フォンティーヌの家の人たちは驚いて呆然としている。
だが、ペロとフィオナさんは見慣れてきたのか笑顔のままだ。
そして、海の近くの崖の中に通路ができている。通路の前にはシャッターも降りるようになっているようだ。
「あそこが地下入り口みたいです。行きましょうか」
俺が声をかけたらフォンティーヌの公爵はハッとして頷いた。
「あ、ああ。すまない。驚いてしまって」
ノエルさんとフォンティーヌ夫人もよほど驚いたのか少し挙動不審になっている。
「──落ち着いてくださいませ。カワグチ様と一緒にいたらこれくらいで驚いていたら心臓が持ちませんわ」
フィオナさんの言葉にフォンティーヌ家の人達が頷くと、俺はペロに声を掛ける。
「おーい、ペロも行くぞ」
ペロは鼻の頭に砂をくっつけて慌てて駆け出した。
◇◇
「……すばらしいわ」
そう言って、フィオナさんが目を見張っている。
エレベーターを上がると、ホテルの内部についた。
まず、地下にはコンビニはもちろん、ケーキ屋やパン屋、服飾店、雑貨屋などが入っていた。コンビニは俺たちのマンションよりさらに高級感があるタイプの店舗で、少し高級そうなお惣菜やフルーツの盛り合わせ、輸入物のお酒やお菓子なんかも置いてある。
さらに一階に上がると、ロビーや受付の他にカフェがある。そして、13階にはレストランが三店舗入っており、最上階である14階には、なんとプールやスパまで入っている。
最上階からは海やフォンティーヌ領の絶景が、見渡せるようになっており、街の灯りが幻想的に光って見えた。
ちなみにここから見える一番大きな建物がフォンティーヌ家の領にある本邸らしい。
「……普通に私が泊まりに来たいくらいだわ!」
フォンティーヌ夫人が大興奮している。
「人を雇えばすぐに稼働できますよ。あ、あと契約書を交わさないと売上が僕に来ちゃうんで、あとで、サインする羊皮紙下さい」
「──ああ! カワグチ殿。本当に感謝する。人はすぐに集まるだろう。まずはナーミャの国王陛下と王妃様を招待する事にする」
フォンティーヌ公爵の言葉で俺は頷いてタロウの元へ向かおうと思った時だった。
「ねえ、カワグチ様」
フィオナさんに呼び止められた。
「──なんですか?」
「せっかくなので今日はここに皆で泊まって行きませんか?」
幸いフォンティーヌ家の皆さんも予定はない、とのことだったので、俺達は新しく建てたホテルに一泊する事になった。




