【39】ソフィア王女の爆弾発言。
「これはどうだろうか?」
俺は、リオネルさんの格好を見て目をひん剥いた。
何故か受験生が来そうなハンテンを着てきた。しかも某アンパンのキャラクター柄だ。
「あー、えーっと少なくともデート向きではないっすね」
「じゃあこれは?」
──そう言って、ついに、着ぐるみを着てきた。
「…ある意味可愛いんじゃないっすかね」
(この人、わざとやってるんじゃないよな?)
ペロは俺の隣で「おおっ、いいではないか!」とブンブン尻尾を振っている。
「それはどういう意味だ?」
「可愛いけど、ちょっとデートには不向きじゃないかなぁと。
…あの、お願いです。僕が選ぶか、もういっそのこと、マネキンの服をそのまま買って下さいませんか?」
俺がそう言うとリオネルさんはシュンとしてしまった。
「…わかった」
結局リオネルさんはマネキンの服をそのまま買った。顔はイケメンなので、ちゃんとした服を着るとかっこいい。
「ところで、リオネルさん。ソフィア王女とどこで会うんですか?」
「え? もちろんショッピングモールだが。ソフィアたんはこの街の最寄りのヴァラの宿の泊まっているらしくてな」
(…え。それって魔力検知されるのでは)
「…そうなんですね。あれ、ランチを食べる約束なんんでしたっけ」
「そうだ。どこがいいと思う?」
リオネルさんに尋ねられて俺は首を傾げる。
「うーん、女の子ですから、イタリアンはどうですか? 好きな人多いですよね? デザートの種類も多いですし」
「そうかっ! ではそうしよう」
そう言ってリオネルさんはショッピングモールに入っているチェーンのイタリアンの個室席を予約しに行った。
その間に俺はグレイスさんに魔道具で連絡する。
「あ、もしもし? グレイスさん?」
『…カワグチ様、どうしました?』
訝しげな声で答えるグレイスさんに俺はソフィア王女の事を伝える。
「実は、リオネルさんがヴァラのソフィア王女とショッピングモールでデートするらしいんすよ。
で、何故か僕も呼ばれちゃいまして」
俺がそう言うと、受話器の奥でグレイスさんが黙り込んだ。
「あれ? グレイスさん? もしもーし…」
『…聞こえています。すみません、驚いてしまって。…リオネル王子にカワグチ様と会いたいと言ったのはヴァラのソフィア様の方からですか?』
「はい。そうですね…」
すると、グレイスさんは受話器の向こうで沈黙した後ボソリとこう言った。
『公式に言わずに、リオネル殿下に言ったとなると、王女が独断で動いている可能性が高いですね。
わかりました。魔力は検知されるでしょうが、ヴァラの本国には連絡がいかないようにします。
あと、護衛にも通すように言っておきましょう。
その代わり、ソフィア王女の考えを、私に面会が終わった後報告頂けますか?』
その言葉に俺は頷く。
「わかりました。あ、じゃあそろそろリオネルさんが戻ってきちゃうんで、またあとで連絡します」
『…あ、待ってください!』
電話を切ろうとしたらグレイスさんに呼び止められた。
「なんですか?」
『相手はか弱い女性だと侮らないでくださいね。一応王族なのでそれなりに強い魔力は持っているかと思いますし。十分に警戒してください』
そう言われて俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。
「…わかりました」
俺は電話を切ったあと、ふと思った。
(そういや、魔力を持ってるってことは、リオネルさんやフィオナさんも魔法使えるのかな?)
そんな事を思っていると、リオネルさんが走ってきた。
「カワグチ殿ー!! 個室の一番いい部屋が予約できたぞ!」
「それは良かったっすね。そしたら、あと10分後に約束の時間ですし、そろそろエントランスに迎えに行きましょうか」
リオネルさんが満面の笑みで頷いた。
「ああ、楽しみだ」
こうして俺達はエントランスへと向かった。
◇◇
「リオネル様、カワグチ様!」
エントランスにあるベンチでリオネルさんとペロとグミを食べながらだべっていると、ソフィア王女がやってきた。
プレオープンの時の礼装ではなく、水色の質の良さそうなワンピースを着ていた。
──お付きの侍女と護衛はたった一人ずつである。
「えーっと、馬車を停める駐車場があるんで、停めてください。外、結構日が照っているので、良かったらショッピングモールの中で待ってください」
そう言って、護衛と侍女に俺は指示を出す。
「おお、ソフィアたんっ!!」
リオネル王子は鼻の下を伸ばして嬉しそうだ。
「…リオネル様、カワグチ様。この前はありがとうございます」
そう言ってソフィア王女は俺とリオネルさんにお辞儀した。
「あーちょっと僕、二人を駐車場に案内して来るから先にレストランに行ってて下さい」
俺の言葉にリオネルさんがウキウキと頷く。
「っああ!」
「ではお二人とも。地下駐車場にご案内します。…外から見えない方がいいですよね?」
俺が護衛と侍女の方に話しかけると、二人はどこか必死な顔で頷いた。
「はい…」
ペロは案内するようにたたっと地下駐車場に向けて走り出す。
馬車を止めてもらうと、俺はショッピングモールの中に二人を案内した。
本来であればアルカディアの住民カードかショッピングモールの会員カードがなければ買い物出来ないため、俺は二人をフードコートに案内し、座らせてから二人分のセットのハンバーガーとジュースを渡した。
「ちょっとソフィア様お借りしますんで、二人でここで待ってて下さいね」
「──あの!」
俺とペロが立ち去ろうとすると、侍女に声をかけられた。
「…疑わしい、と思ったりはしないんですか?」
その言葉に俺なら満面の笑みで頷く。
「大丈夫です。ここ、セキュリティ効いてるんで」
その言葉に二人は目を丸くした。
◇◇
「おおっ、カワグチ殿!ここだ!」
レストランに着くと、丁度注文した料理が来たところだったらしい。
手を振るリオネルさんの横で緊張した様子のソフィアさんが頭を下げた。
「おお、うまそうっ!! まずは食べますか。護衛と侍女の二人もショッピングモールに案内してきたんで」
そう言って三人とペロで食事を楽しむ。
最初はたわいもない話をして、リオネルさんがデレデレしていただけだったが、デザートのティラミスを食べ終わった後で、ついにソフィア王女が切り出した。
「──実は、我が国はセイワ共和国と共に水面下でこの国を攻め込むように支持されているのです」
「あー、それははい。何となく、知ってました。えーっと、そんで、ヴァラはどういう意向なんですか?」
俺がそう答えると、ソフィア王女は暗い顔をした。
「──実は国内で二分してまして。一緒に攻め込むべきだという派閥と、戦争を防ぎたい派で割れているんです。前者は武器や弾薬を既にセイワ共和国から運び込んでいるのですが、私は防ぎたくて!!」
その言葉にリオネル殿下は目を見開く。
「…そうだったのか。ちなみに侵略派は誰なんだ?」
「──姉と母、そして宰相様です。母はセイワ共和国から輿入れしましたので。そして、姉もセイワ共和国の貴族に嫁ぐのが決まっているのです。宰相様はこれを機会に王位に就くのを狙っておりまして」
必死でそういうソフィア王女に俺はキョトンとする。
「あれ?でも、国王様は侵略しようとは思ってないんですよね?」
すると、ソフィア王女が微妙な顔をする。
「はい。ただ、父は、実は病に侵されており、実質実権を握っているのは宰相様なんです。王太子である兄も、なんとかしようとしているのですが、何を言っても覆されてしまっている状況で」
「え、この前来た時はそんな風に見えなかったけど」
俺が戸惑っていると、ソフィア王女が頷いた。
「──はい。あれは影武者です」
その言葉に俺達は目を見開いた。




