【31】いよいよプレオープン
「カワグチ様ー!! 新しく公開したゾンビ映画を見に行きませんこと?」
次の日。俺は夕方にグレインさんとグレイスさん、クリスさんと海外が入っていたが基本的に昼間は暇だったので、フィオナさんとペロとまた映画に行くことになった。
「おおっ! いいのうっ! ワシは今日は映画を見ながらホットドッグを食うぞっ」
「まあ! 私も挑戦してみますわっ。サルサソースの辛い味のものが出ていたんですの」
…なんだかんだで暇人同士でつるんでしまっている。
フィオナさんは毎日唐揚げちゃんTシャツを着ているが、どうやら全ての色を取り揃えたらしく、毎日微妙に色が違う。
今日は水色の唐揚げちゃんTシャツだ。
(そういえば、リオネルさん、遊びに来てくれなくなって寂しいな。フィオナさんも面白いけど、男の友達出来て嬉しかったんだけどな)
ちなみにペロもオスだが、やっぱり人間の友達も欲しい。
そんな俺の心の声を読んだのか、フィオナさんがこんな事を言い出した。
「そう言えば、リオネル様。ドラゴンでこっちに遊びに来ていたのが国王陛下にバレて怒られたらしいですわ。お父様から魔道具に連絡がきました」
(やっぱりかー!)
「そ、そうだったんですか。いや、来るって言ってたのに来ないなとは思ってたんですよ。そうかなとは思ってたんですけど」
「でも、ショッピングモールの開設に合わせてナーミャ王族とフォンティーヌ公爵家含め何家かが、プレオープンでこっちに来るらしいですわ。
ドラゴンも登録した個体であれば乗っていいことになったらしいです。
うちの両親とリオネル様も来るらしいです。
セイン様からも連絡が来ると思いますが、ナーミャとラングスチアの王族とカワグチ様に会う機会を設けるとのことでしたわ」
その言葉に俺は固まる。
「…え。そうですか。じゃあ正装した方がいいですかね…」
「映画の前に服を見にいきます? 見繕ってあげますわ」
その言葉に俺はガバッと頭を下げる。
「いいんすか! ありがとうございます」
「いえいえ。こちらこそいつもお世話になっておりますので」
こうして俺達は映画の前に服を買うことになった。
「えーっと。あ、こちらですわ」
そう言われて俺は地下のテナントに出来た新しい服屋に入っていく。
(そう言えば、買い物屋と娯楽施設しか見てなかったけど、こっちも充実してきたな)
そんな事を思ってしまう。そういえば、この前タブレットで見たエクセルの表に店名が入っていた気がする。
結構ショッピングモールは近隣の住民達で賑わっていた。
よく見ると、昨日挨拶に来ていた文官もモールに買い物に来ている。
「こんちはー」
俺が挨拶すると店主が目を見開く。
「ま、まあカワグチ様っ!! ラミア村からの引越しではお世話になりましたわっ、ポリアンナと申しますっ」
そう言って慌てて頭を下げた。
(に、人数多すぎてちゃんと話した人以外覚えてなかったんだが、確かにこの人いた気がする…この機会に覚えよう…)
「いえいえ。どうですか? ここでの商売は」
「はい。異世界の服屋も人気があるのですが、やっぱりこの世界の服がいい、と買いに来てくださるお客様もいっぱいおりまして。ラミアの時より人口が増えましたので今の所売上は引越し出来てからの方が伸びております」
嬉しそうにポリアンナさんが笑った。
「そうですか。それはよかったです。今日は礼服を買いに来たんですけど」
「まあ、そうでしたか。礼服でしたらこちらにございます」
そう言われてフィオナさんとペロと一緒に礼服売り場に行く。
(うーん…なんか、よくわからんな)
「フィオナさん。どれがいいと思います? 俺よくわからんくて」
俺が尋ねるとフィオナさんが『うーん』と考え込む。
「そうですわね。カワグチ様は髪と瞳の色が黒いのでこちらがいいと思いますわ」
そう言って、黒に少しだけ肩に金色のピラピラしたやつ(エポーレットというらしい)と金色のボタンの服を選んでくれた。
「あ、じゃあそれでいいっす。それにしまーす」
俺が即決するとポリアンナさんとフィオナさんが目を見開いた。
「え、え、もう少し考えたりしなくていいんですの?」
「いやー、どうせ偉い人と一瞬会う為にだけ着る服なんで、普段は楽な格好したいですし。なんでもいいんすよ」
俺がテキトーに言うと、何故かフィオナさんがクスクス笑い出した。
「ふふっ、カワグチ様って面白い方ですね」
「そうですか? テキトーなだけですけど」
するとペロが暇だったらしく、早く映画館に行きたいと言い出した。
「あ、じゃあこれ買うんで」
「ありがとうございます!」
礼服は結構高くて金貨15枚だった。
(あー、結構痛い出費だな。まあ、文官や騎士達の家賃とショッピングモールの売上も入ってくるからいっか)
こうして礼服をゲットした俺はペロとフィオナさんと一緒に映画館に行った。
映画館はオープン当初は結構閑散としていたがちらほらお客さんがいた。
「おー、だんだん賑わってきましたね」
「ええ。いい席を取りたいので、ホットドッグを買ったら早く行きましょう」
結局俺たちはホットドッグとチュロスとコーラを買って、後方席の真ん中ら辺に席をゲットした。
ゾンビ映画はこの前見たパニック映画よりは、チープな感じでそこまで怖くなかった。
なんというか、俳優さんと女優さんを白塗りにしてとりあえず『あ”ー…』と言わせながら主人公達をひたすら追いかけている感じだった。
だが、ヒロインもゾンビ化して主人公を締め殺そうとした時はさすがに少しビックリした。
俺が思わず飛び跳ねると、フィオナさんは恍惚とした表情で言った。
「…まあ。これも愛の形ですのね…」
──俺はこの人の思考が正直よく分からない。
ペロは何故かこの前のパニック映画よりビビって、『仲間がゾンビになったら嫌だのう…』と震えていた。
映画を見終わった俺達は、今日はフードコートでうどんを食べた。フィオナさんは天ぷらを10種類も買って、明太子おにぎりまで食った。
ペロは釜揚げうどんを大盛りで食べて、俺は明太釜玉にした。
こうして暇人である俺達の一日は過ぎていった。
◇◇
「カワグチ殿。この度はショッピングモールのプレオープンに招待してくれて誠に感謝する。
セインと一丸となって励んでくれ」
三日後。俺はガラス張りの役場のカフェテリアでラングスチアの皇族、そして、ナーミャの王族に囲まれていた。
その中にはリオネルさんの姿もある。近くにフィオナさんのお父さんもいた。
俺がチラッと見ると、目が合ってリオネルさんが少しはにかんでくれた。
(リオネルさんが泊まるなら今日俺もホテルに泊まっちゃおうかな)
今話しているのはラングスチアの皇帝、つまりセインさんの父親である。
ちなみに女性はハイヒールが多いとのことでホテルの部屋で待機してもらっている。
(うーん…。ショッピングモールまで近いが800mくらいあるからな。何かバスみたいな移動手段をそのうち作らないといけないかもしれないな)
「はい。勿論です。帝国の繁栄の為に力を尽くします」
俺がそう言うと、皇帝陛下は満足そうに頷いた。
「ナーミャからも何かカワグチ殿にないか?」
すると、奥の方に座ってた少しリオネルさんの面影を感じさせる五十代くらいの男性が前に進み出た。
「私がナーミャの国王だ。この街の施設は見たこともない素晴らしいものだと公爵からも聞いている。今日は是非視察も兼ねて楽しませて貰いたい。招待をしてくれて、感謝する」
そう言って笑いかけてくれた。どうやらその隣に座っている温厚そうな男性がナーミャの王太子、つまりリオネルさんのお兄さんらしい。
その他にも高貴そうな人達が集まっているが、この国境を取り囲んでいる国の王族や貴族らしい。
物珍しそうにカフェテリアをチラチラと見ている。
「父上。では、早速、ホテルに母上達や貴族令嬢を迎えに行ってからペロモールへと向かいましょうか」
そう言ってゾロゾロとホテルへと向かう。
(いよいよだな。なんもトラブルとかおきなきゃいいけど)




