【30】俺の力、AI搭載だったらしい。
(さあてっと。今までちゃんと見てなかったけど、このタブレット画面で何が出来るか調べてみるか)
俺は家に帰り夕飯を食べた後、ペロと一緒にポテチを食べながら寛いでいた。
だが、今日、ショッピングモールでセキュリティの件でクリスさんとフィオナさんからツッコミが入ってしまった。
そして、改めて自分の能力について、きちんと知っておくべきだと判断した俺は、改めて検証することにした。
ペロがお腹いっぱいになってイビキをかき出したのを見計らって、タブレット画面が出るように念じてみた。
そしたら特に用事はなかったが普通に出てきた。
──考えてみれば今まで用がある時以外出した事はなかった。
(普通は異世界転生とかしたら命の危機とかにあった場合を考えて、色々調べまくるんだろうけど。
俺、すぐに衣食住足りて金の心配なかったしな…)
そんな事を思い遠い目をしてしまう。
用がない時はメッセージは表示されず、普通のタブレット画面のトップページのようになっているようだ。
フォルダ分けがされていて、アイコンをクリックすると、スキルやマジックポイントを使って今まで作ったもののログや、セキュリティを発動したログなどが、別々にデータとして保存されていた。
(…これかな?)
セキュリティのデータフォルダの中にエクセルのデータのようなものが保存されていた。
そこにはセキュリティを発動させた日時、人の名前、ATMを使った人のデータが店舗ごとに出ていた。
ちなみに、ATMを使った人は勿論俺だけだ。
そして、セキュリティに関しては、ペロマートがペロ、ハーマンさん、そしてペロモールは今日拘束されていた夫婦の名前が載っている。
(ふーん。普通に確認できるんだな。あれ、なんだこれ?)
そして、トップページのフォルダの下に、見たことのないアイコンを見つけて、俺は恐る恐るタップする。
『──何か御用ですか?』
そう出てきて俺は目を見開く。いつもと違い、ウインドウにはメッセージを打ち込むスペースがあった
『──あなたは誰ですか』
俺がそう打つと、メッセージが表示される。
『私は貴方のこの世界での”チカラ”です』
そのメッセージ俺は目を見開き、メッセージを打つ。
『チカラ? 魔力やスキルと違うの? てか、もしかして”人格”あったりする?』
『いいえ、根本的に魔力やスキルを取りまとめるシステムが私なので、違うとは言い切れません。人格はありませんが、思考する事はできます。
また、私は貴方のこの世界での身体と結びついているので、それを読み取り最適なものを提案しています』
表示されたメッセージに俺はこんなことを呟いてしまった。
「──つまり、AIみたいな感じ? 相談とかもできんの?」
『はい、その通りです』
すると、音声を聞き取っているのか打ち込んでいないのに返事が返ってきた。
「すっげぇ…、じゃあ何かあったら相談するわ」
『お待ちしております』
こうして、俺の能力にはどうやらAI的なものが組み込まれていることが判明した。
◇◇
「カワグチ殿! これから宜しくお願いしますっ」
──数日後。文官達とこの街の警備にあたる騎士達が王宮から派遣されてやってきた。
総勢50人程度だ。
「いよいよ賑わってきたのう」
そう言ってペロが目をぱちぱちさせた。
さらに、三日後にはいよいよプレオープンでセインさんや貴族達がやってくることになっている。
「あー、皆さんこれから是非頑張って下さい」
(俺が楽するためにもな!)
新しく来た人達はマンションやスカイファームタワーを見てキョロキョロしている。どうやら驚きながらもワクワクしているようだった。
「人数もだいぶ増えたので、ショッピングモールについては任せて下さい。面接や取りまとめなど全てやらせて頂きます。
あとは、住民の意見を取り入れながら問題点などをまとめていきますので」
グレイスさんがそう言って張り切っている。
が、やはり少人数で回していたせいだろう。大分最初に来た文官達に疲れが見えている。
明日、やっと交代で休みを取るようだ。
「騎士達はショッピングモールや住宅のある場所を中心に警備することになる。
それまでは皆訓練に励めよ! カワグチ殿が素晴らしい環境を用意してくれたので、心して励めよ!」
グレインさんが号令をかけると、騎士達が頷き、宿舎に向かう為に動き始めた。
文官達も自分のマンションに荷物を置きにいく。
あとにはグレインさんとグレイスさん、それにクリスさんと俺とペロだけが残った。
「カワグチ殿。改めて紹介する。
この街にクリスが団長として残ることになった。」
するとクリスさんがニヤリと笑った。
「カワグチさん。宜しくお願いします。すっかりこの街の魅力に惹かれてしまいまして。団長に志願させて頂きました」
「あ、どうも、宜しくお願いします。知ってる人が残ってくれるのは話しやすいので嬉しいですね」
俺の言葉にグレインさんが頷く。
「クリスは頭の回転が早く、我が騎士団でも知略を巡らせて作戦を考える能力が秀でている。恐らくこの街を良い方向に導いてくれることだろう」
そう言われて俺は嬉しくなってしまう。
(多分建物にセキュリティ効いてるからそこまで武力はぶっちゃけ必要だとは思わないんだよね。
だから、頭の回転が早い人で嬉しいかも!)
「それは助かります。これから宜しくお願いします」
俺がお礼を言うと、クリスさんが頷く。
「はい。それで、早速なんですが、ショッピングモールで品物を持ち出しすると自動で警報音が鳴って拘束してしまう件、どうなりそうでしょうか?」
「はい。どういう仕組みかわからないのですが、僕に実は事前にセキュリティを働かせるかどうか確認がくるんですよ。
だから、鳴らさないようにする事はできるんです」
「…そうですか。でも、『誰がやったか』はわかった方がいいんですよね。内々で処理するときに必要なので。名前ってカワグチ様の方でわかりますか?」
クリスさんに言われて俺は頷く。
「はい。昨日家に帰ってから調べたのですが、きちんと記録に残っているようでした」
まさかAIっぽいものが入っているとは思わなかったが。
「そうですか。では、基本的にショッピングモールについてはセキュリティを発動しないようにお願いします」
「わかりました」
俺達の会話を聞きながら、グレインさんがボソッと呟いた。
「今はトラブルになったのはショッピングモールや、コンビニの『中』だけだが…。仮に外側が攻撃されたらどうなるんだ?」
その言葉に俺は思わず目を見開いてしまった。
「それは…。そういうことになったことがないので、今はなんとも言えないですね…」
「外側であれば、程度はあれど、逆にセキュリティが効いて欲しいですけどね。兵器を使ったものなんかだと、物凄い脅威になりますし」
クリスさんがなんだか物騒なことを言い出した。
「え、またまたー。そんな事ありえないですって!」
笑いながらそう言った俺に、今まで空気のように黙り込んでいたグレイスさんが首を振った。
「いえ、それがありえるから言っているんですよ? 国境にこんな高いものがたくさん出来たら、周辺の国はきっと警戒はするでしょうし」
そう言われて俺は思わず口をポカンと開けてしまった。
(はぁあー? まじ? やだやだ! 普通に怖いんだが)
「ま、今の所は大丈夫でしょう。いざとなったら我が国が守りますので! ですが警戒はしておくことに越した事はありません」
クリスさんの言葉で俺のテンションが一気に下がった。
(うわぁ、防災グッズの用意とか、食料の備蓄とかしとくべきかな…)
そんな事を心の中で叫びながらビビる俺だった。




