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スキル『マンション』で異世界無双 〜不労所得で一生ダラダラします。  作者: 間宮芽衣


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【22】スカイファームタワー


「「カワグチ様!!本当にありがとうございました!!」」


──二日後。村人達は次々と俺に御礼を伝えながら引っ越しをして行った。


 空は澄み渡り、今日もとても良い天気だ。


「あー、まあ、困った時はお互い様なんで! その代わり、僕が困った時は助けてくださいよ?」


俺がそういうと村人達が頷いた。


「「もちろんですっ」」


「引っ越してもお元気で! 僕、ショッピングモールにきっと沢山出没すると思うんで宜しくお願いしますっ」


俺は営業スマイルを浮かべると、大半の村人達を見送る。


 後にはザイルさんと少数の村人が残った。


 そのうち一人が前に進み出る。


「初めまして。カワグチ様。ミラノと申します。ハンナさんから話があったようですが、私達はずっと引っ越して来る前から農家をやってまして。


 その、今回ご対応頂けるとのことでありがとうございます。せっかくショッピングモールという素敵な職場を用意してくださったのにも関わらず、申し訳ありません。


 ──ですが、私達はやはりこの仕事が好きでして。


 それでその…。私達の職場となる畑はどの場所になる予定でしょうか」


ミラノさんは日に焼けた浅黒い肌に黒い髪に、掘りが深くて人の良さそうなら顔をした男性だった。


「大丈夫ですよ。とても良い場所を用意するつもりでいます」


俺がニヤリと笑うと、ミラノさんは顔を曇らせる。


「…アクセスの良いところだと確かに嬉しいのですが、作物の事を考えると、日当たりの良い場所の方が嬉しい…と思っておりまして。


 ──といっても、毎日徒歩で通うので遠すぎても困るのですが。周りがショッピングモールやマンションなので、大丈夫か心配でして」


ミラノさんはそう言って困ったような顔をしている。


 俺はできるだけ安心させるように頷く。


「──大丈夫ですよ。ちゃんと考えています。では、皆さんここでちょっと休んでいて下さいね」


「そうだ。大丈夫じゃぞ!カワグチはこう見えて信用の出来る男じゃ!」


隣でパタパタ尻尾を振るペロ尻目に俺は手を翳してタブレット画面を出す。

 そして、空いたマンションに手を触れる。


『──マンションを移動しますか?

 ※MPを20消費します』


と出てきたのでYESを選択する。


 すると、マンションがふわっと宙に浮いた。


(おおっ!すげぇ…、映画みたいだ)


「な、なんだ?!」

「建物が浮いたぞ?!」


ミラノさん達が驚きの声を上げている。


 俺が手をかざすと指定した場所の真上にマンションが移動した。


「──よし、こんくらいかな」


俺はマンションを着地させた。


 衝撃があるかと思ったが驚くほどふんわりと着地してホッとしてしまう。


 ──さらにタブレットで違う項目を選択する。


『建物のグレードアップ(SP5消費)をしますか?

※MPを100消費します」


YESを選択した瞬間、建物がゴオオオオオッと光の柱に包まれてどんどん上に伸びていく。


 ──そう。普通のマンションをタワーマンションに変更したのだ。


「「…ひ、ひいいいいいい!!!!」」


見ている人達は驚いて腰を抜かしている。


 そんな人達を尻目に俺は走ってタワーマンションに近づいていく。そして、両手をいっぱいに広げた。


『マンションの骨組み以外の基本素材を強化ガラスに変えますか?他は農業用に特化した素材に変更します、

 消費MP:5』


(…マンションでもシャツでもマジックポイントの消費は同じなのか。)


俺がYESを選択した瞬間──。


 キラキラと光が降り注ぎスケルトンのタワーマンションが出現した。


「──透明な塔じゃと?! …なんて神秘的なんじゃ」


そう言ってペロは感嘆の声を上げる。


「──よし出来た!!!ペロ!畑を出していくぞ」


俺はペロと一緒にマンションの中に入ると最上階から順番に畑を出していく。


 一番上はいちご、次がミニトマト、きゅうり、いも、にんじんなどフロアごとに植える野菜を変えていく。


 エレベーターで一瞬で違う作物の所に移動できるので便利だと思う。


 俺はどこに何の畑を出したかわからなくならないようにエレベーターの横に付箋で作物の名前をつけていく。


「なるほど。高い場所に畑があるんじゃな。こりゃいいわい」


「だろ?元の世界に『垂直農業』っていう方法があってさ。実際高いところで農業されてたんだよ。


 ──ま、低い階層はオフィスや休憩場所として使ってもらうわ」


どうやらエレベーター横の壁にボタンがついており空調や湿度も自由に変えられるらしい。めちゃくちゃ便利な能力である。


(うーん、農業用に特化って書いてあるし、多分これで大丈夫なんだろう。


 ──なんか、床が俺の世界でもちょっと見た事ない素材だし。よく見たら壁や床に水が通れるようなパイプも通ってる)


俺は一通り問題ないか確認してから、エントランスに看板をつけることにした。


(うーん…。空中に畑があるから…。この建物の名前は『スカイファームタワー』にしよう)


俺がエントランスに手を翳すと、『SKY FARM TOWER』とオシャレなロゴが出現した。


「うん、いいじゃん」

「うむ。これは凄くかっこいいのう」


ペロと褒めあって満足した俺は、スタスタと歩いて元の場所に戻っていく。


 結構作業していた時間が長かった筈なのに、ミラノさん達とグレイスさんは直立不動で待っていた場所で呆然としていた。


「おーい! 皆さん。…出来ましたよ?」


俺が呼びかけると、驚いたように全員の肩がびくりと揺れた。


「──なんていうことだ。畑が空中に見える」


そう言ってミラノさんがワナワナ震えている。


「はい! これなら日当たりも問題ないでしょ? 湿度や水もボタンひとつで調節出来ますんで」


俺がそう言うと、グレイスさんが物凄い形相で叫んだ。


「──カワグチさん!! これは凄いですっ!! この世界にはない発想と技術ですよ?! これがもし国中に広がれば世の中がガラッと変わります!」


「え、あ、そうですか。それは良かったです」


俺が反応に困ってテキトーに答えると、グレイスさんにガクガクと肩を揺らされる。


「──良かったです、じゃないですよ!


 カワグチさんっ! あなたっ! この凄さをわかっていないでしょうっ」


「あー…。僕としてはまあ、これで快適に農業やってもらえたらと思って建てただけなんで。

 あ、それでですね。三階以下の日当たりがあんまりよくないエリアは根菜でもいいですし、オフィスとして使っても良いと思います。


 ──では、一緒に見に行きましょうか」


俺の言葉にミラノさんをはじめ、農家の人達が弾かれたように顔を上げた。


 グレイスさんも溜息を吐きつつ、ちゃっかりついてきた。


「…近くで見ると信じられないほど神秘的ですね」


ミラノさんがそう言って声を震わせる。


 エレベーターからはガラス張りなので各階の野菜達が見える。


「──すごい」

「…芸術ですね」


他の皆も感嘆の声を漏らす。


「一番上が苺で、その次がトマトになってます。壁の隅にパイプがあるでしょ? そこに水が通っています。ここにあるボタンで調整して下さいね。」


俺が説明すると、皆真剣な顔で聞いてくれた。


 色んな質問が飛んできたので丁寧に答える。


「この建物はなんて呼びましょう?」


グレイスさんの言葉に俺は笑顔で答える。


「あ、『スカイファームタワー』と名付けました。これで農業をやりたい若者が増えるといいんですけど」


「こんな凄いものを見たら、きっと増えるに決まっています!!」


グレイスさんが熱い目で頷く。


 ──こうして農業問題も、一棟まるまる空いたマンションの問題も無事解決する事が出来た。


 ホッとしているとフィオナさんがマンションから出て来てギョッとした顔をしている。


(あ、やべ。呼んであげるの忘れてた…)


「──な、なんですのあの建物はぁあああ!」


フィオナさんの声が赤茶けた大地に響き渡った。


◇◇


「…ひどいですわ、また呼んでくださらないなんて」


そう言ってフィオナさんにコンビニのイートインスペースで延々と拗ねられてしまった。


「…あー、すんません…」


俺は、次に何かするときは必ずフィオナさんも呼んであげようとその日、決心した。



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