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第94話 空が裂け、狂者は笑う

読みに来てくださる皆さま、本当にありがとうございます。

本格的な戦闘が始まります。

切断された片腕が宙を舞う。


「ぐっわぁぁぁーーー」


悲鳴をあげたのは、ルーインであった。


「ルーイン!!」


リーファが叫ぶ。


ルーインは、左上腕を右手で押さえながら膝をつく。


「バッカヤロー!気を抜くな!」


ルーインがリーファに叫び返すも苦痛で顔が歪む。


「あ、相手を……ちゃんと見……ろよ……」


そう言ってルーインが倒れ込む。


咄嗟にリーファがルーインの元へ駆け出そうとした時、


「大丈夫だ!リーファ!」


リーファの背後から力強い声が聞こえた。


思わずその声の方へ顔を向けるリーファ。


そこには幻扉から出てきていたアマトの姿があった。


そしてアマトがルーインを見て続けた。


「ミィナがいる」


その声に促されるようにリーファが再びルーインを見ると、すでにミィナがそこにいた。


彼女に迷いはなかった。


バルナックの治療を終えると、すかさず片腕を拾い上げてルーインの治療を始めていたのだった。


「ミィナさん……」


リーファはそう呟くと、右手を力強く握りしめ、セイラスタンに体をゆっくりと向ける。


「あいつがセイラスタンか?」

「あいつ……相当な悪人ヅラだな」


ルノアとエメルダがニヤけながらリーファに声をかける。


「えぇ、そうね。思い知らせてあげる必要がありそうだわ」


リーファもそう言ってほくそえむ。


「手伝うことはないな」


ルダルも声をかけた。


「えぇ、私一人で十分」


リーファが覚悟を決めたように返すとゆっくりと弓を構え始めた。


(ありがとう、みんな。私は一人じゃない)


その思いが、確信として胸に刻まれる。


その様子をグラントはどこか安心した顔つきで黙って見つめていた。


そこへエアデランがリーファへ向けて言った。


「リーファよ。あやつの狙いはティル・ナ・ノーグじゃ」


「ルクピー、いえ、精霊の力で常若«とこわか»の世界へ行こうとしてるってわけね」


頷くエアデラン。


リーファが弓矢の照準をセイラスタンに合わせると、その男が不敵に笑う。


「おいおい、エアデラン。そう簡単に私の目的をバラしてくれるな。後片付けが面倒になるだろ」


「お前の後片付けなどない。私がここで止める」


そう言うと、リーファが光の矢を放った。


その閃光が一直線にセイラスタンへ走る。


しかし――


セイラスタンはニヤリと笑うと、その矢を難なく剣で叩き落とした。


「ふっ。つまらん攻撃だ。ミオルネの娘とは思えん」


その言葉にリーファも笑みを溢して言った。


「準備運動よ。ここからあなたは避け切れないわ」


リーファがひと呼吸置き、弓を引き絞る。


「"連矢"」


そう唱えると、リーファが構える光の矢がさらに輝きを帯びる。


次の瞬間、連続して無数の矢がセイラスタンに向かって飛んでいく。


セイラスタンは、その矢を次々と叩き落としていく。


「この程度の攻撃、造作も無い」


その男は、余裕を見せつけるためか、その場から一歩も動かなかった。


しかし、リーファは弓を構え続けている。


そしてその弓からは、未だ連続して光の矢が放たれ続けていた。


(……どういうことだ?矢が途絶えない)


セイラスタンが疑問を抱き始める。


(しかも……矢のスピードが速くなってきている)


その男は、それまでの余裕がなくなり、焦りを隠せなくなっていた。


そしてついに、


「くっ」


と言って、その場から横へ跳び退くセイラスタンの左腕に、一本の矢が突き刺さっていた。


その様子を見てリーファが弓の構えをやめると、


「どうしたの?あなたの力はこの程度?」


と笑って見せた。


「よっしゃ!」

「あいつ、焦ってるぞ!」


ルノアとエメルダが歓喜の声を上げるも、エアデランが静止する。


「いや、まだじゃ。あいつの底力はここからじゃ。かつての戦士は伊達じゃない」


セイラスタンはしばらく沈黙した。


だが、


「なるほど……面白い」


と言って静かに笑うと剣を構えた。


それに応えてリーファも再び弓を構える。


一瞬の間«ま»、周りの草木だけが風でざわついていたーー


次の瞬間、両者が動いた。


セイラスタンは、一直線にリーファを目がけて駆け出すと、リーファは再び"連矢"を放つ。


その矢を交わしながらリーファへ近づくセイラスタン。


切り掛かってくるセイラスタンを交わしては距離を置き、弓を放つリーファ。


一進一退の攻防が続く。


「面白い。面白いぞ!リーファよ。やはり狩りはこうでなくてはならない」


そう言って笑みをこぼすセイラスタンに、


「狩りね……あなたはそう思っているかもしれないけど……」


と言って弓を強く引くリーファが唱える。


「"速矢"」


次の瞬間、弓から矢がスッと消えたかと思うとーー


「ぐっ!」


セイラスタンが突如吐血した。


その矢はセイラスタンの腹部を貫通し、後ろが僅かに見えるほどの穴が空いていた。


「これは狩りじゃない。戦いよ」


腹部に手を当て膝をつくセイラスタンの顔に冷や汗が流れる。


「へぇ、やるねぇ」

「単調な攻撃の後の不意の一撃か」


ルノアとエメルダが感嘆の声を漏らした。


セイラスタンをじっと見つめるリーファの拳が震える。


「セイラスタン。あなたは母の仇……色々聞き出したいことはあるけど……」


リーファが弓を構え終わると、彼女の眼から一雫の輝きが頬をつたわる。


こみ上がる様々な思いを断ち切り、静かに声を発した。


「私はなぶり殺しはしない。一思いに楽にさせてあげる」


体を起こすことができないほどの苦痛で顔が歪むセイラスタンがリーファを睨み返すと、その先の空間が僅かに揺れる。


すると、セイラスタンの口元が、不自然なほどゆっくりと歪んだ。


そんなセイラスタンの様子を断ち切るかのようにリーファが


「ふぅ」


と深呼吸をしたその時だったーー


バリバリバリィィィーーー!


リーファたちのはるか後方の空が、突如、裂けた。


――いや、裂けたのではない。


“こじ開けられた”のだ。


重く、黒い影が、その向こうから滲み出してくる。


その光景を見上げながら、セイラスタンの口元が、歓喜に歪む。


次の瞬間、腹部を押さえたまま、狂ったように笑い声を上げた。


「ふっはっはっはっ! 見ろ、リーファ!」


剣を天へと突き上げる。


「私にまだ“ツキ”があるようだな!いや……違う。これは必然だ!」


裂けた空の向こうで、黒い影がはっきりとこちらを一瞥すると、


「グオォォォーーーッ」


と、太く世界を震わせる咆哮を上げた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

再び、魔獣が現れましたね。

実はこの魔獣、これまでの魔獣とは違ってきますが、そのお話は次の次?いや次の次の次かも?・・・とにかくあと数話で、本小説の世界観にかかる話になりますので、お楽しみに。


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