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第89話 ペンダントと魔石と精霊と――知らねばならない真実

読みに来てくださる皆さま、本当にありがとうございます。

中央の広場から少し離れた森の中、ジルクが木の上に登って大きな枝に腰掛けている。


「どうしたら虫を使わず高起魔力を得られるだろう?」


手のひらにある三つの高起魔力装置を見つめながら呟いていた。


「小さな虫からあんな大きな出力が出せるなら、ここにある木からだって……」


そう言ってジルクが、目の前に広がる樹木を見ると、


「デカすぎるんだよなぁ」


と、ため息を吐く。


そして、木々の隙間から見える空を眺めながら言った。


「もっと、こう、生命力があって小さいものが……」


その時だった。


ザッ、ザッ。


下の方から人の足音が聞こえ始めた。


「誰だろう?」


ジルクが木の上からその足音の方に目をやる。


するとそこには、鋭い目つきで怪しげな笑みを浮かべながら歩いてくるセイラスタンの姿があった。


そして、片腕には小さな動物、もう一方の手には青く光る魔石らしきものを握り締めていた。


その動物は必死にもがいているようにも見えた。


「セイラスタン……さん?なんでこんなところに……」


思わず背筋がゾッとしたジルクが小さく呟く。


セイラスタンは、その声に気づくことなく、ジルクが登っている木の下を通り過ぎていった。


ジルクが木の上から目で追うと、少し先にある岩壁の前でセイラスタンが止まった。


セイラスタンがあたりの様子を伺うと、次に、岩壁に向かって手をかざした。


そして、何かつぶやく声が聞こえたかと思うと、彼の目の前に、突然、扉が浮かび上がった。


「扉!?」


ジルクが思わず声を上げると、とっさに木の上で身を小さくして息をのむ。


その声に気づいたのか、セイラスタンが再びあたりを見回す。


その時――


バサバサバサッ。


一羽の鳥がジルクの登っている木の上の方から飛び立っていった。


その鳥を見ると、セイラスタンは特に気にすることもなく、扉を開けて中へ入っていた。


ジルクは、ホッと肩をなでおろす。


次の瞬間、彼は木から飛び降りていた。


そして、扉の前まで駆け寄り、恐る恐る扉を開けた。


その先は洞窟のような通路が奥へと続いていた。


少し中へ入ると、冷気がジルクの足元に漂い、水の滴る音に混じって、セイラスタンの足音が奥から微かに聞こえてくる。


ジルクはゴクリと唾をのみ、音を立てずに洞窟の中へ足を踏み出した。


洞窟の中は暗闇であったが、壁の所々に光る苔が付着し、そのわずかな光でジルクは前を確認しながら進んでいった。


ジルクがしばらく歩いていくと、少し先に明かりが見えてきた。


その明かりの方から、


「ハッハッハッ!」


と、セイラスタンの高笑いが響いた。


ジルクは、彼の声が聞こえるところまで慎重に近づき、小岩の陰に身体を潜めた。


セイラスタンがいる場所――そこは小部屋でドアがついていたが、今は半開きになっている。


「とうとう手に入れたぞ。精霊と守り人のペンダント、そして魔素を多く含む魔石。いっぺんに手に入るとは!」


その半開きのドアからセイラスタンの嬉しそうな声が漏れる。


(精霊?守り人のペンダント?)


ジルクは、心の中で考えた。


(どういうことだ……守り人のペンダントってリーファさんが持っていたものだよな)


そして、さらに注意深く耳を傾けるジルク。


「ルクゥゥーッ!」


(何の鳴き声だろう……?)


ルクピーは一生懸命声を出してセイラスタンを威嚇しているようだったが、そんなことを知る由もないジルクであった。


部屋の中では、セイラスタンがグラスを片手に椅子に座っていた。


彼の前には、青く光る魔石とペンダント、そしてルクピーが小さな檻に入れられている。


その檻は天井の吊り具からぶら下がっており、


ガタッ、ガタッ、


ルクピーが内側から檻の網に体当たりを繰り返すたびにその振動が吊り具自体を揺らしていた。


セイラスタンは、その様子を特に気にも留めず一人で思いにふけっていた。


「200年か……長かったが、今日この日を迎えることができたのだから文句はない」


そう言って、セイラスタンはグラスの中身を飲み干すと、目の前のペンダントを自分の首にかける。


次に魔石を手に取って、じろじろと見回すセイラスタン。


「それにしても、グラントの奴。いいものを作ってくれたものだ。これが人工の魔石とは思えん」


そう呟き、セイラスタンは魔石を軽く放り上げ、再び手の中に収めた。


首元では、守り人のペンダントが静かに揺れている。


(グラントさんが作った魔石?)


扉の外で身を潜めているジルクにはセイラスタンが語る内容が理解できないことばかりであった。


しかし、セイラスタンが何か良からぬことを考えているということだけは、直感的にわかっていた。


(どうする?みんなに知らせるか。いや、今の情報だけではセイラスタンさんが何を企んでいるかまでわからない。もう少し情報を知ってからでないと……)


ジルクが一人頷くと、さらにドアの隙間に近寄り、聞き耳を立てた。


その時であった。


ドンッ、ゴロゴロゴロッ!


「ルクっ!!」


何かが下に落ちて転がる音とルクピーの鳴き声が聞こえた。


ジルクがその音に驚き、身を後ろに引いたとき、


「暴れるな!檻が壊れるところだったろ!」


と、セイラスタンが怒鳴った。


ルクピーが檻の中で暴れていたため、天井の吊り具から檻が外れて机の上に落ちたのであった。


「ルークゥゥゥ―ッ」


檻の中でルクピーが唸る。


「ふっ。可愛げのないやつだ」


セイラスタンが、檻を立て直して机の上に置くと、ルクピーを見つめながら低く言い放った。


「お前もミオルネと同じように殺すぞ!」


扉の隙間からその声が、洞窟内に妙に響く。


(殺した!?ミオルネさんを?)


ジルクが息をのんだ。


(ミオルネさんって……リーファさんのお母さんのことだよな?)


突然の話に混乱状態に陥るジルク。


扉の中では、セイラスタンがさらにルクピーに話し続けていた。


「もっとも、お前を殺したら元も子もないがな。ハッハッハッ」


ルクピーが毛を逆立ていた。


そんなルクピーにセイラスタンが続ける。


「強がるのも今のうちだ。お前は私の言うことを聞かざるを得なくなる……」


一瞬の沈黙の後、セイラスタンが大声で放った。


「なにせ、リーファを人質にとって、お前を従わせるからな!」


その声がジルクの耳を直撃する。


(リーファさんを人質に!?)


次の瞬間――


ギィィッ、


と扉が軋む音を立てて開いた。


「族長……今のは、どういうことですか?」


扉の外にはジルクが立っていた。


逃げるべきだと分かっていながら、ジルクは真実を求めて一歩も引くことができなかった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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