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第83話 侮る者、あしらわれる者となる――

読みに来てくださる皆さま、本当にありがとうございます。

テンプレバトルで、開き直って読んでいただけたらと・・・。

一面を黒雲が覆い、泉の畔に重苦しい気配が沈み込む。


バナムは前回と同様に精霊発見装置を手にしていた。


おそらく精霊探しを続けていたのであろう。


だが、今は違う。


その目は、すでにアマトたちを“敵”と断定していた。


「この辺りに精霊がいるはずだとは思うが……まぁいい。まずはお前たちを倒す方が先だ」


バナムが精霊発見装置を無造作に地面へ置くと、アマトたちの方へ歩み寄って来た。


背後の部下たち10人もそれに続く。


バナムがアマト達の目前で立ち止まると、背後で部下たちは揃って膝をつき、頭を垂れた。


「俺の名はバナム。ラグナメア軍、ドルギー将軍配下の者だ」


淡々とした名乗り。


しかし、その声には相手を見下す色がはっきり滲んでいた。


アマトとルダルは何も言わず、じっとバナムを見据える。


重い沈黙が落ちた――その時。


ルノアとエメルダが、迷いなくアマトの前へ踏み出し、バナムとの間に割って入った。


「ほう、勇ましいお嬢さんたちだ。だが、お前たちの相手をする暇はない。邪魔だ。どけ」


バナムの眼中にないようである。


「まったく。言ってくれるねぇ」

「まぁ、それぐらい威勢を張ってもらった方が倒し甲斐があるってもんだ」


二人も真っ向から喧嘩を売る。


バナムの顔からは表情が消えた。


「仕方ない。お前たち、この二人を消せ」


片腕を水平に上げ、後ろに控える部下たちに命令を下すと、部下たちが立ち上がり、バナムの前に出て戦闘態勢をとる。


それに対しルノアとエメルダも構えると、スライムとゴブリンの形態に変身した。


その姿を見たバナムが思わずあざ笑う。


「ふっ。たいそうな威勢を張っていたからどんな魔物かと思えば、スライムにゴブリンか?話にならんな」


部下たちも同じように薄ら笑いを浮かべる。


「一瞬で決着けりをつけろ」


バナムが一言発すると、次の瞬間、部下たちが飛び出した。


ルノアとエメルダはお互い左右逆方向へ飛ぶ。


すると、部下たちは二手に分かれルノアとエメルダをすかさず追う。


二人はそのまま真っすぐ飛び続けた。


「先ほどまでの威勢はどこへ行った。逃げ回っているだけでは勝負にならんぞ」


バナムが上空を見上げ、ルノアとエメルダの様子を嘲笑する。


「まぁいい。時間の問題だろう。俺はルダルと異世界人を叩くとするか」


そう言うとバナムがアマトとルダルの方へ振り返る。


そして、ニヤリと笑うと低い声で言い放った。


「さぁ、ショウタイムだ」


ただ、次の瞬間――。


「勝負をしてやってもいいが……お前の眼は節穴か?あれのどこが逃げ回っているように見える」


ルダルが空を舞っている二人を仰いで言った。


「なに?」


そう言ってバナムも空を見上げると、先ほどとは異なる光景が目に写った。


逃げ回っていると思っていた二人の魔物は、空中をものすごいスピードで飛び回っていたのだ。


部下たちは明らかにそのスピードについていけていない。


「お前たち、何をしているのだ!?さっさと叩き落さんか!」


バナムの怒りの声が無意識のうちに発せられていた。


一方、ルノアとエメルダは――。


「はははっ!こいつらオレたちのスピードに全然ついてこれてないぞ!」


ルノアは完全にはしゃいでいる。


「まったくだ!あの忌々しい虫どもより遅ぇぞ!」


エメルダが鼻で笑った。


「ったく。これもあの鬼教官のおかげってことか!」

「あぁ、悔しいがそのとおりだな!」


二人は眼下のルダルの方を見た。


ルダルは、そんな二人を見て口元だけわずかに緩める。




『あいつら……本当に見違えたな』


アマトの精神空間のゼルヴァスが感心した。


『きゃぁーっ、二人とも!かっくいいぃぃーっ!』


ティアマトも大はしゃぎである。


『あぁ、確かにな』


アマトはそう呟くと、笑みを零して上空の二人を見上げた。




「じゃぁ、そろそろ叩き落しますか?」

「あぁ、そうだな!」


そう言い合い、二人はそれぞれ反転すると、追ってくる異世界人の方へ突っ込んだ。


次の瞬間、異世界人たちは地面に叩きのめされていた。


その様子を見たバナム。


さっきまでの冷静さが嘘のように動揺して、目の前の部下たちに怒鳴る。


「な、なにをやっているのだ!さっさと立ち上がれ!!」


すると、部下たちは何とか立ち上がってきた。


「よ、よし。仕方ない。俺も戦うぞ」


そう言って腰の剣を抜いて上を向くと、そこに二人はいなかった。


その刹那――


「あれぇ?結構しぶといね」

「黙って寝ときゃぁ、死ななくて済んだものを」


その声にビクッと驚いてその方向へ体を向けるバナム。


そこには、余裕しゃくしゃくのルノアとエメルダの姿があった。


「ふ、ふざけるな……たかがスライムとゴブリンの分際で!」


バナムの額に汗が滲む。


ルノアとエメルダの顔がポカンとするも、


「いいよ。今度こそ叩きのめしてやる!」

「お前たち、後悔すんなよ!」


と構えた。


一瞬の沈黙――


バッ!


次の瞬間、飛び出したのはバナムであった。


ルノアとエメルダ目掛けて攻撃を仕掛けるバナム。


そのスピードは確かに早かった――早かったが、それは普通の異世界人に比べてである。


ルノアとエメルダは、二人の間に突進してくるバナムの軌道を読み切ると、身体をわずかにひねってかわし、すれ違いざま――


ゴッ!!


「ぐはっ……!?」


二人同時の肘打ちが、真上からバナムの背中へ叩き込まれた。


直撃した瞬間、


ズドン!!


バナムはそのまま地面へ叩き落ちた。


土煙が舞い、バナムは顔面から地面に沈んだまま動かない。


「ゴホッ、おいおい、勘弁してよ」

「土埃が舞ったじゃないか、ゴホッ」


二人がむせる。


その言葉にバナムは目を見開き、歯ぎしりを立てると、すぐに後ろへ跳ねあがる。


「おのれぇぇぇっ。思い知らせてやる!」


そう言うと、右の胸ポケットから注射器のようなものを取り出す。


魔素ドーピングのアルティマナである。


そして、そのまま自分の心臓に突き立てた。


すると、淡い青のオーラが彼の全身を包み込んだかと思うと、その肉体が膨れ上がり筋肉質の体が浮き彫りになったのだ。


「ふっ、俺の本気を見せてやる」


と言うと、すかさず剣をルノアとエメルダの方へ掲げて唱えた。


「”青矢”」


次の瞬間、剣の先から青い光の矢がルノアとエメルダを襲ったのだった。


ガキィィィン!


金属同士が激突したような鋭い音が辺りに響き、直後、二人のいた地点に砂煙が柱のように吹き上がった。


「ふっ、はっはっ。跡形もなく吹き飛んだぞ!」


バナムが大きく笑う。


だが――


砂煙が薄れはじめると、そこに二つの影がゆっくりと浮かび上がる。


「……なっ!?」


バナムが目を見開いた。


「……だから、砂埃を立てるなよ」

「泉で洗い流す手間が増えたじゃねぇか」


声と共に姿を現したのは、槍を構えるルノアと棍棒を振り切っているエメルダであった。


そう、二人は咄嗟にアイテムを取り出して、その一撃を真正面で弾き返していたのである――。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


主役格のスライムとゴブリン VS モブ、いかがでしたでしょうか。

ちょっと典型的すぎる話でしたね・・・。


ただ、この戦いがあるからこそ、次の回の思わぬ方向への展開があるわけでして・・・。


お楽しみに。

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