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第79話 リーファ、死の真相を越えて立つ

読みに来てくださる皆さま、本当にありがとうございます。

「第71話 "無音"という名のレクイエム」の伏線の完全回収回です。

「お母さんが殺された……?」


リーファが呆然と声を発した。


まるで幻を見ているかのように、焦点が合っていない。


アマトたちは言葉を失い、グラントだけが焦りを隠せずにいた。


しばらくの静寂の後――


「リーファ。今から話す内容を、落ち着いて聞いてくれ」


沈黙を破ったのは、アマトだった。


普段なら、こういう局面で最初に口を開くのはルダルだ。


だが、この瞬間はアマトが一歩前に出た。迷いも段取りも一切なし。


周囲もその判断を当然のように受け止め、リーファへ視線を向ける。


「今わかっていることだけを話す」


リーファの視線が静かにアマトに移る。


グラントは、困惑したまた生唾を飲み込んだ。


「まず、そこにいるエルフ族の長老エアデランが、ここに長い期間、幽閉されていたようだ」


「……長老?」


リーファが、目の前にいる年老いたエルフを見た。


「やぁ、お嬢ちゃん。わし、会ったことあるかのう?」


笑顔を見せるエアデランであるが、リーファのことは覚えていないようである。


アマトが短く続ける。


「……こいつは記憶を失っているようだ」


「……記憶を?」


リーファがアマトに視線を戻す。


「あぁ、長い間、一人幽閉され続けてきたようだから十分あり得る話だ」


そして、再びリーファがエアデランに視線を移し、しばらく見つめ続けていると、


「大丈夫。悪い人じゃないと思うの」


と、ミィナが優しく微笑んだ。


その言葉に、リーファが少し気持ちを取り戻したように見えた。


アマトはしばらくリーファを見つめ――静かに切り出した。


「それと、そこにエルフらしき白骨が眠っている」


すると、


「アマト殿、そのことはまだ……」


と、戸惑いの色を隠せないグラントが一歩前に出ようとした。


それをルダルがグラントの前に腕を上げて制止する。


その腕を見たグラントはルダルに顔を向けると、顔を横に振るしぐさをするルダルがいた。


リーファはアマトの言葉につられるように、その白骨に首を向けた。


「!?」


その直後、先ほど魔獣の目の前に突如現れた母の姿が、リーファの脳裏によぎる。


「……お母さん?」


リーファはその場で固まった。


その時、


「リーファ、落ち着け。まだミオルネさんと決まったわけじゃない」


呆然とするリーファにグラントが慌てて声をかける。


その声に驚いたようなリーファが、グラントの方へゆっくりと顔を向けると静かに問いかけた。


「病気で死んだんじゃなかったの……?」


その言葉にハッとするグラント――顔を歪め、右手で顔を覆ったグラントは、その手をゆっくりと下すと、首をうなだれた。


しばらくの静寂が洞窟内を支配した。


その支配を破ったのは、やはりアマトであった。


「……200年前。お前の母親ミオルネは、エアデランと共に姿を消したらしい」


リーファの視線が再びアマトへ向けられる。


「今日、この場でエアデランが檻に閉じ込められているのを見つけた」


アマトはリーファを見据えたまま続けた。


「その檻の外には、女のエルフの白骨がある……」


そして、重い言葉を口にした。


「状況からして、この白骨はお前の母ミオルネのものと考えるのが自然だ」


リーファは黙ったまま、アマトを見つめ続けていた。


洞窟の空気がさらに冷たく沈んでいく。


その重さに耐えきれず、グラントの声が震えた。


「リ、リーファ。すまんかった……。まだ幼子だったお前の将来を思った森と里の者たちが、病死ということにしたんじゃ」


ただ、リーファはその言葉に反応を示さない。


その様子に、洞窟の空気は張りつめたまま、誰も言葉を発せなかった。


その中心で――リーファだけが、まるで時が止まったように微動だにしない。


顔色も変わらず、感情の影すら浮かばない。


そして、一同が息をのむ中、静寂を破ったのは、あまりにも平坦なリーファの声だった。


「……そうだったのね」


グラントが口を開け固まった。


すると、


「だとすると……確かに不自然すぎるわよね。他殺?……ありうるわ」


と、顎に手を当てるリーファ。


「リ、リーファ?」


グラントが大きく見開き、名を呼んだ。


その声にリーファが落ち着いた声で応える。


「大丈夫よ。グラント。私はもうこれぐらいのことで取り乱したりしないわ」


「こ、これぐらい……じゃと?」


グラントが思わず声を発した。


「そうよ。だって、私、小さかったから。お母さんの記憶なんてほとんどないもの」


と言って、少し微笑んでグラントを見るリーファ。


「あと……私がそこまで弱い者ではないって信じてくれたからでしょ?」


今度は、アマトに顔を向けるリーファ。


アマトは、それに対してゆっくりと頷いた。


「それに……さっき戦いの中でお母さんに、今の私の強さを示したの。ここで再び弱い自分になんかなれないわ」


その様子は、自分に言い聞かせているようであった。


ミィナの顔がハッとする。


先ほどの戦いの中で、リーファを包んでいた暖かなオーラの正体――それがリーファの母ミオルネの残留思念であったのではないか、と思ったのだ。


「そうか……」


アマトが答えると、他の仲間も優しく微笑む。


「でも、私、真実は突き止めたい……」


リーファが少しためらった様子で進める。


「だからお願い。手伝ってほしいの」


リーファがアマト達を見渡す。


すると、ルノアが前へ出て腰に手を当てると、


「仕方ねぇなぁ。手伝ってやるかぁ」


と言って、リーファにウィンクをする。


続いてエメルダが、


「まぁ、俺たちにかかればそんなの簡単なことさ!」


と笑った。


ミィナもルダルも笑顔だ。


すると、リーファの顔がぱっと明るくなってアマトを見ると、アマトも笑みを浮かべて頷く。


「ありがとう」


リーファの明るい声が、暗い洞窟に明かりを灯すかのように響いた。


グラントはすっかり落ち着きを取り戻し、笑みを浮かべていた――その表情には、どこか安堵にも、寂しさにも似た年老いた者だけが纏える静かな風合いがあった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

第71話のリーファが魔獣に倒れそうになったとき、母ミオルネが突然出てきたのは、200年前に(たぶん)殺されて洞窟に閉じ込められていたミオルネの残留思念であったということです。

いかがでしたでしょうか。

さて、次回ですが、今後の行動に関する内容になります。

お楽しみに。


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