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第4話 魔王ゼルヴァスは俺様系

この物語に目をとめていただき、本当にありがとうございます。

今後ともよろしくお願いいたします。


さて、いよいよ、本作品のもう一人の主人公、魔王ゼルヴァス登場、かつ、アテリスと呼ばれる謎の少女との戦闘が書かれます。


【更新履歴】

2025/06/04 前書き修正、空白行修正

2025/06/01 後書き書き直し

2025/05/20 本話のタイトル変更

「おい、そこのお前! 俺様にその体をよこせ!」


脳内に響いたのは、やたら威圧感に満ちた男の声だった。


次の瞬間――


ゴーン!


物と物が真正面からぶつかり合うような、重く鈍い衝撃音が、頭の奥で炸裂した。

そのまま、アマトの意識はふっと遠のいていく。


「――ハッハッハッハァァァァ!!」


圧倒的な笑い声が原生林に響き渡る。

さっきまでアマトだった肉体が、まるで別人のように立ち上がった。


「この力……この魔素……いい! いいぞぉ! 完璧だッ! これなら、“七つの大罪”も神も瞬殺だ!」


まるで勝利を確信した征服者のように、男は両腕を広げて吠えた。


だが、そのとき――


「見つけたぞぉぉぉおおおおおおっっっ!!」


彼方から、閃光のような勢いで飛び込んでくる影があった。

ぴょん、と弾けるように、笑う男の前に現れた小柄な少女。

その顔には、純粋な喜びがあふれている。

目を爛々と輝かせ、欲しかったものを目の前にして、我慢できないとばかりに叫んだ。


「ゼルヴァスだなっ! おまえ、そうだな! なら、戦ええええええぇ!!」


「……またお前か。アテリス。ちょうどいい。この体を試させてもらおう」


ゼルヴァスは、ちょうど良い相手を見つけたとばかりに、口元には楽しげな笑みを浮かべた。


アテリスは、瞬きする間もなく距離を詰めた。


空間を跳躍するような動きで、目にも止まらぬ速さで舞い、

鋭い突きを連発し、蹴り上げ、回転しながら肘打ち、後方宙返りからのかかと落とし――

怒涛のように攻撃を畳みかける。


ゼルヴァスは、それを一歩も動かず、わずかな重心の移動だけで、すべて紙一重でかわした。


アテリスは無邪気に叫んだ。


「なっ、なっ、どうだっ!? 今の俺、強いだろっ!? すっごく、強いだろっ!!」


満面の笑みを浮かべながら、ひたすら自己主張する。


「ところで、アテリス。また体を変えたのか?」とゼルヴァスが尋ねた。


「へへーん。兄上からもらったぞ。ものすっごく、いい体だ。今度こそ、負ける気しない!」


アテリスは胸を張って答える。

ゼルヴァスはふっと鼻で笑った。


「ほう……だが、そろそろ終わりだ」


ゼルヴァスの掌がわずかに光を帯びる。

次の瞬間、空間が軋み、強烈なオーラが発せられた。


「うわあああああっ!?」


アテリスは一瞬だけ踏ん張ったが、耐えきれなかった。


「ア、アレーッ!!」


無様な叫び声を上げながら、吹き飛ばされる。


風に舞う木の葉のようにくるくると回りながら、

ついには空の彼方へ点のように小さくなって消えていった。


「うむ……申し分ない。いや、最高だな。この体。完璧すぎる」


ゼルヴァスは満足げに一人ごちた。

拳を強く握りしめ、全身からあふれる力に酔いしれる。


「よし……まずは、七つの大罪どもを――」


拳を突き上げ、高らかに宣言しかけた、その瞬間。


「……おい、いい加減にしろよ」


冷えた声が、脳内を鋭く割った。

ゼルヴァスの意識がぐらりと揺れる。


「いたたた……!」


聞こえてきたのは、アマトの呻き声だった。

彼は頭を押さえながら、ぼやいた。


「なんて石頭だ、お前……。ちょっと気が遠のいちまったじゃねぇか……」


小言をこぼしながら、意識を取り戻していく。

気づくと、ゼルヴァスの意識は、赤と黒がうごめく空間にいた。

体を見下ろす。

さっきまでアマトの肉体で感じていた手足の感覚は、きれいに消え失せていた。

代わりに、かつての魔王ゼルヴァスの体のイメージだけが、はっきりと残っている。


そしてその体は、地面に開いた“穴”に――

がっちりと引っかかっていた。


『な……なんだこれは!? 体が……動かん!』


必死にもがくが、どうにも動かない。


『お前、誰だよ、さっきから勝手に暴れて』


どこからか聞こえる、呆れたような声。


それは――アマトの声だった。


『わが名はゼルヴァス! 俺様こそ、魔王にして、覇者にして、この世界の未来の支配者ぞ!!』


ゼルヴァスは高らかに名乗りを上げた。


だが――


『へー、で?』


アマトの反応は、限りなく薄かった。


『なっ……!? バカなっ……! この俺様が! 魔王の俺様が……! 支配を……拒まれたぁぁぁぁっ!!』


ゼルヴァスは信じられない、といった様子で絶叫する。


『こんなこと……あり得るわけが……!!』


そんな絶叫を一通り聞き流しながら、アマトは適当にあしらった。


『そうかそうか、わかった、わかった』


そして、ふと気づいたように言った。


「そうだ、さっきの娘は大丈夫か?」


『おいっ! 待てぇぇぇぇっ!!』


ゼルヴァスの悲鳴が、赤と黒がうごめく空間に虚しく響く。


こうして――


最強の魔王ゼルヴァスは、

アマトの特異点の回廊の入り口で――

なぜか、引っかかっていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


本話で、ようやく序章が完結となりました。

内容的には、タイトルにもある「魔王と女神」の立ち位置を示す回だったかな、と思っています。


もし、この魔王と女神のドタバタ劇に「今後も楽しみ!」と思っていただけたら、

評価やブックマークでそっと応援していただけると、とても励みになります。


次回から新章になります。第二話ですでに登場していた、もう一人の“真のヒロイン”・ミィナのお話です!

ぜひお楽しみに!

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