第3話 転生したら原生林に怪物がいた件
この物語に目をとめていただき、本当にありがとうございます。
今回は、アマトが転生してきたところからスタートです。
【更新履歴】
2025/06/10 語り口調を一人称へ変更
2025/06/04 少し修正
2025/05/30 申し訳ございません。スキルのレベル名称が間違っておりました。
2025/05/20 本話のタイトル変更
まぶたの裏が、ぼんやりと明るい。
意識が、ゆっくりと浮かび上がってくる。だが、身体がやけに重い。
(……ここは、どこだ?)
思考がぐるぐると回る。
俺は、少しだけ頭を振って、重たいまぶたを無理やり持ち上げた。
目に映ったのは、木漏れ日。
でかい樹々が、空を覆うようにそびえていた。
しかし、よく見ると……どこかおかしい。
葉は色褪せて、枝は枯れてる。地面の苔もまばらで、まるで死にかけの森みたいだ。
一見すると原生林。でも、その実態は、命の匂いが薄い異様な風景。
(……原生林、か?)
自然とそんな言葉が浮かぶ。
だが、胸の奥に引っかかる違和感が消えない。
(俺……死んだんだよな)
そして、ふと思いつく。
(赫夜は……?)
ぼんやりとした記憶を辿る。
あの光の海。ティアマトと名乗った、どこかズレた女神。
「魔素を回収してきて」――確か、そんなことを言われた。
(……転生ってやつか)
「……にしても」
俺は立ち上がって、あたりをぐるりと見渡す。
「しかし、いくらなんでも、ジャングルのど真ん中に放り出すか、普通……」
思わず声が漏れた。呆れたというより、呆然に近かった。
(やはり、あの女神、どうしようもない残念系だったな)
とは言え、
(まぁ……生きてるだけマシか)
そう思って、大きく息を吸い込む。
湿った空気だとは思うが、どこか乾いてる。
普通の森なら、もっと瑞々しい匂いがするはずなんだが――ここには、それがない。
(……何かがおかしい)
理由はわからないが、この森は、決定的に「命の気配」が希薄だった。
そう思いながら、一歩を踏み出そうとしたそのとき――
「きゃあああああっ!!」
甲高い悲鳴が、森の奥から響いた。
そして、重く響く地響きのような音。
(何だ……!?)
本能が告げてくる。――これは、ヤバいやつだ。
俺は、ためらうことなくその声の方へ駆け出していた。
樹々をかき分け、息を切らす間もなく走る。
視界が開けた先にいたのは――
十数メートルはあろうかという、巨大な存在。
地を這う四肢。岩のような鱗。
全身から、禍々しい気配を撒き散らしている。
(……まじかよ)
間違いない。化け物だ。いや、“魔物”だ。
その足元には、背を木に預けて、必死に立っている娘がいた。
今にも崩れ落ちそうなほど震えてる。
(やばい……!)
魔物の視線は、完全に彼女に定まっていた。
飛びかかろうとする――その瞬間、
(くそ……!)
俺は、足元の小石を掴んでいた。
こんなもんで、あの巨体の気を引けるとは思ってない。
だが、やるしかなかった。
(頼む……こっちを見ろ!)
念じるように、石に力を込めた――つもりだった。
その瞬間、手から何か……目には見えない光のようなものが立ち昇って、石にまとわりついた感覚があった。
(……なんだ、これ?)
戸惑ってる暇なんてなかった。
放たれた石は、目にも止まらぬ速さで――
ズドン
と、魔物の頭を正確に撃ち抜いた。
巨体がぐらりと揺れて――
ドシーン、と地響きを立てて崩れ落ちる。
「……え?」
呆然と立ち尽くす俺。
あの化け物が、小石ひとつで――
(いやいや……絶対おかしいだろ)
しかし、現実だった。
動かなくなった魔物。
その隣で、娘がふらりと崩れ落ちた。
「お、おい!」
慌てて駆け寄る。
倒れた娘は驚くほど軽くて、顔色も悪かった。
だが、なんとか息はある。
(よかった……)
そう思った矢先――
【ギガントマキア級”魔獣”討伐成功――これから、報酬として、対象に見合うスキルを譲渡します。一つ、アルティメイトスキル、搾取。一つ、エクストララスキル、創造。一つ、スタンダードスキル、恩恵。一つ、スタンダードスキル、雷――】
(な、なんだ……?)
無機質な声が、頭の中に直接響いた。
ゲームのシステムメッセージみたいなそれは、まだ続いてる。
(スキル? 譲渡?)
訳がわからない。
しかし、今はそれどころじゃない。
目の前で倒れてる、この娘の方が気がかりだ。
「……大丈夫か」
そう声をかけようとした、そのとき――
「そこのお前! やっと見つけたぞぉぉぉぉ!!」
耳をつんざく怒鳴り声が、森の奥から響いた。
(……誰だよ、今度は)
俺は立ち上がり、声のする方を睨んだ。
この世界のことは、まだ何も知らない。
これから、何が待ってるかもわからない。
だが、一つだけ確信してる。
(面倒なことに巻き込まれたな、これは……)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
まだよくわからなかったかもしれませんが、アマト本人も気づいていない「異常さ」、どう感じられましたでしょうか?
もし「これからのアマトのチートっぷりが楽しみ!」と思っていただけたら、
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次回は、本作のもう一人の主人公、魔王ゼルヴァスがついに登場です!
彼の暴れっぷり(?)も、ぜひお楽しみに!