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嵐の予兆




「はぁ……」


一人残された屋上。


地面やベンチは雪で湿ってるから座って待つことも出来ず、仕方なく私は手すりを背もたれにして空を眺める。


この町で星空なんてどこでも見られるし、今さらそう有り難がるものでもない。

満天の星空の後に残るのは、過疎化の進んだ寂れた町。


千明のいないこの5年間、そんな風にしか捉えられなかった私。


「……ふふっ」


それでも、あの時に見せた千明の顔は、写真に収めて永久保存する価値があるくらいの貴重なものだった。


今となっては滅多に感情を表に出さなくなった彼が、初めて買ったヴァイオリンを自慢げに見せに来た時と同じような、あどけない子供の顔。


私は、そんな彼のことが――


バラバラバラバラバラバラバラバラ!


「……なによあれ」


夜空の端っこから点滅する光が近づいてきたと思ったら、それは空気を切る音と共に大きくなり、やがて轟音を立てながら学校のグラウンドに降下してきた。


いわゆるヘリコプターというやつだ。


私たちが校内に無断侵入したことがバレたのかと一瞬思ったけれど、さすがに警察でもこんな大仰な現着の仕方はないだろうと思い直し、それでも念のため身体を伏せつつその機体を注視する。


ヘリのエンジンが完全に停止するとスライドドアが開き、二人の女性の姿が見えた。


先に出てきたのは、長身の女性。

長い黒髪をポニーテールにした、とんでもない美人。

あとこの寒い中、何故かメイド服。


そしてそのメイド服の女性に手を引かれ、もう片方の手で髪を押さえながら優雅に降りて来る少女に、私ははっと息を呑んだ。


すらりと伸びた手足に、純白のドレス。そして腰にまで伸びた銀髪が、降り積もった雪と相まって、神秘的な美しさを醸し出していた。


この世の美を一つに集約したような、完成された美少女。


……ただ、二人ともこの場にそぐわないほどの薄着だ。

北の大地を舐めているのかと思うほどに。

よもや着の身着のまま無計画でここまで来たんじゃないのか、と勘繰ってしまう。


やっぱりというか、白いお姫様は見てるこっちが凍えそうなほどガクブルと身体を震わせている。けれどメイドさんの方は意外と平気そうな表情だ。


やがて二人は歩き出し、そのまま正門を抜け暗闇へと消えていく。

そしてそれを見届けたヘリも、再び夜空へと舞い上がった。


「一体なんなのよ、コレは……」


あまりにも現実離れした光景に、思わずそう呟いた。


そして私は下した決断は――


何も見なかった。ということにしよう。

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