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第84話 ドラドリア市街戦その2

ドラド族の生き残りを探すエリシャンテ達。

彼らを見つけられるか?

ーーー三人称ですーーー


残存部隊の捜索班には、エリシャンテが入っていた。

エリシャンテはいつものロングスカートではなく、皆と同じく次郎から提供された戦闘服に身を包んでいる。

陸上自衛隊の戦闘服そのものだ。

慣れない者には鉄帽てっぱちがやや重く感じるが、それも次郎からのアドバイスを受けたエリシャンテが「キツくても顎ヒモをしっかり締めるのですよぉ」と道中で皆に伝えて行き、徐々に修正していく。


「まだ見つかりませんねぇ」

一朗太いちろうたの予測では、西の池周辺か、真逆の東の森の中とのことでしたが……』

サトリは今はエリシャンテに取り憑いている。

「あのお祖父ちゃんはひねているので、戦闘のプロの予測を外して来ると思うんですよねぇ」

今、エリシャンテ達は一朗太いちろうたの予想外の北の草原に、身を低くして進んでいる。

北の草原はやや小高い丘になっており、わずかに岩や低木があるに過ぎない。

東西のように森林で身を隠すことは出来ないのだ。

冬の季節の為、草原の草が高く生い茂っているのが多少の救い。

それでも、せいぜい腰や胸の位置にしかならない。

ヒトが普通に立っていれば居場所がわかってしまう。


『本当に居るとなれば、エリシャンテの祖父は策士ですね』

「そんな上等なものじゃありませんよぉ、あのヤカラは」

エリシャンテは祖父に思うところがあるようだ。

「あ……見つけた。

……というより、囲まれていますねぇ」

『全員、戦闘体制!』

サトリが全員に短く念話を送る。

すでに低い姿勢のまま、エリシャンテを中心に円陣を組んで外に向けて構えている。


「すでに取り囲んでおる。

大人しく降参せい」

「お祖父ちゃん!

あなたこそ、出てきなさい!」

………………。

しばらく静寂が続く。

「…………エリか?」

「そうです。

早く出てきなさいよ!」


草原がガサガサと揺れる。

「エリシャンテ様!」「エリシャンテ様だ」「お会いしたかったですぞ、エリシャンテ様」

ドラド族の残存部隊が一斉に現れる。

「あ……これ、おまえ達、勝手に……」

遅れて白髪の人物が現れた。

その人物は、年輪を刻んだかの如く深い皺がありながらも、その肉体は筋骨粒々。

小柄だが、他を圧倒する威圧感を携えていた。

エリシャンテの祖父、オルテガである。


「久しぶりじゃな。

元気にしとったか?」

「おかげさまで無事に避難することが出来ましたよぉ。

その節は大変お世話になりましたぁ。

ありがとうございますぅ」

「無事で何より。

……それにしても、良く育っておるのう。

どれ」

オルテガがエリシャンテの胸に両手で掴みかかる。

ドカッ。

オルテガの手がエリシャンテの胸に触れる直前、エリシャンテの前蹴りがキレイにオルテガの顎にヒットして、オルテガの身体が10cmほど浮いた。

「おおう……相変わらず、エリの蹴りは効くのう」

「お祖父ちゃんのおかげで鍛えられましたから」

「いや、今のはノーモーションの蹴りだったな。

あれからも精進を重ねておるようだの」

オルテガが顎をさすりながらも、嬉しそうに笑う。


「それで、ここの生き残りは何人居るの?」

「ここにおるのは四十ニ名。

負傷者の十名は西の池のほとりで休養しとる。

そして、ドラドリアの中に生存者が何人かおるはずじゃ。

……もう何人生き残っておるのかわからんがの…………たまに悲鳴が聞こえるだけじゃ」

オルテガは悲しげに目を伏せる。

「わかりました。

その者達も救出せねばなりませんね。

私達は救援部隊として、ここに参りました。

これから、オーガ共を殲滅しに行きます。

あなた達も同行しなさい」

エリシャンテが八岐大蛇やまたのおろちの牙を掲げ、竜の瞳で皆を睥睨する。

「私が族長を引き継ぎました。

私に従いなさい」

普段の姿からは掛け離れた凛とした振る舞いだ。

周りの者も一斉に片膝をつき、こうべを垂れる。

「「「我らドラド族一同、族長の命に従います!」」」

「よろしい。

では、指示あるまでこの場で待機を命じます。

本隊と連絡を取ります」

ペンダントにした牙を懐にしまい、皆を休めの状態に戻す。


「サトリ様、今の情報を本隊へお届けくださいな。

ご指示あるまで待機しております」

『エリシャンテ、見事な振る舞いでした。

感心しましたよ。

では、本隊へ伝達して参りますね』

まあ、と両手を頬に当てて嬉しそうにはしゃぐエリシャンテにオルテガが近寄る。

「先ほどの牙はなんじゃ?

竜神様の牙とは違うようじゃが」

「こちらが竜神様の牙」

懐からペンダントにしてある牙を取り出す。

旧く年代を感じさせる色合いをした牙が、根元にヒモを通され、ペンダントにしてある。

ドラド族ではこれが竜神の牙とされ、族長の証でもある。

「そして、こちらが偉大なる龍神様であらせられる八岐大蛇やまたのおろち様の牙」

再度懐からもう一つのペンダントにしてある牙を取り出す。

こちらは白く、輝きとツヤすらある。

そして、見る者が見ればその存在感に畏怖を抱くことであろう。

そして、この牙には一切の刃物が通らず、職人頭のドアンを悩ませることになった一品でもある。

悩みに悩んだ挙げ句、ドアンが八岐大蛇やまたのおろちに相談に行くことでペンダントとして完成にこぎつけたのである。

結局、牙の根元をヒモで括ってペンダントに仕上げる手法に落ち着いた。

ただし、そのヒモは次郎の服と同じ大蜘蛛の魔物の糸から紡ぎ上げられた、頑丈で伸縮自在のものであった。


「ご加護は未だ賜ることは叶いませんが、貴重な牙を下賜戴けました。

それに今は八岐大蛇やまたのおろち様の試験の真っ最中です。

あらゆることに精進せねばならないのです」

「…………」

それを聞いたオルテガは、ご加護を戴くよりも牙を賜る方がよほど凄いことではないかとか、龍神の試験とか、聞きたいことが頭を埋め尽くしてしまいそうになるのを必死に抑え、今は口を噤むのだった。



しばらくすると、人並みサイズの八岐大蛇やまたのおろち雲外鏡うんがいきょうがエリシャンテの前に転移して来た。

「多頭竜様だ!」「多頭竜様が顕現なされた」「ありがたや」

「多頭竜などとお呼びするでない!

このお方は竜神様を凌ぐ龍神様、八岐大蛇やまたのおろち様なるぞ」

叱りつけるエリシャンテと捜索班全員が膝をつき、崇める姿を見て、残存部隊も慌てて膝をつく。


「ふん。

多頭竜程度と同一視されるのも好かんが、堅苦しいのも好かんな」

八岐大蛇やまたのおろちの頭のいくつかがぷいっと横を見る。

他は周囲を睥睨し、中央の二つの頭はエリシャンテに注がれる。

八岐大蛇やまたのおろち様には失礼をしました。

代わってお詫び致しまする。

以後、同じことがないよう気をつけます」

エリシャンテが頭を下げる。


「おうおう、相変わらず、一部の者からは熱狂的に奉られておるようだな、八岐大蛇やまたのおろち殿は」

雲外鏡うんがいきょうがやや皮肉めいて言う。

「貴様も崇めてもらえば良かろうに」

「ふ、ふん。

ワシは付喪神つくもがみとして毅然としておるだけだ」

『あら、雲外鏡うんがいきょうにも熱狂的なファンがいますよ』

「「なに!?」」

『タマモとか』

「よしとくれ!

九尾狐なぞ、近づきとうもないし、あやつのことを考えるだけでヒビが入るわ!」

クスクスと笑うサトリを無視して、八岐大蛇やまたのおろちがエリシャンテに話し掛ける。

「よくぞ、残存部隊を見つけたな。

ここからは、オーガ共の殲滅戦に移る。

覚悟は良いか?」

「所詮私共は微細の身。

なれど、今ある力で出来る限りのことはする所存」

「自分は見ているだけだ。

戦いには手を出さん」

「それで十分でございます。

八岐大蛇やまたのおろち様が見ていてくださるだけで、力が沸き上がります」

「己の力量を見極め、それ以上でもそれ以下でもいかん。

自分の定められた範囲のこと以外はするでないぞ」

「畏まりました。

私共の戦いをご覧くださいませ」

「うむ。期待しておるぞ」

「「「ははぁー」」」

ドラド族全員が低頭する。


『作戦は、北側のこちらの部隊と南側の本隊との同時侵攻になります。

こちらでは、私が号令を掛けます。

もうすぐ始まります。

準備を怠らぬように』


「では、ワシは本隊に戻るとするか」

そう言った雲外鏡うんがいきょうは、言葉の最後にはすでに消えていた。



エリシャンテは、お胸を守ることで戦闘能力を磨いてきたのかもしれませんね(笑)。


さあ、次回から戦闘シーンに突入です。

ご期待ください。

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