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第83話 ドラドリア市街戦

ついにドラドリア戦が始まる。

街中に偵察に赴く一朗太いちろうた率いる隠形鬼おんぎょうき達。

ーーー三人称ですーーー


ドラドリア付近に転移した大樹の森の救援部隊。

主力部隊は固まっているが、じっと息を潜める。

そして、ドラド族の一部がドラドリア周辺の森に散らばり、残存部隊の捜索に当たる。

捜索に当たる者は、先日のコボルト戦で隠形を感知出来た者達だ。

それに平行して、隠形鬼おんぎょうきチームが内部の状況を把握する為、ドラドリアに潜入する。



潜入した隠形鬼おんぎょうき達が目にするのは倒壊した家々だった。

オーガの食べ残しと思われる、人の手足もあちらこちらに散らばり、腐臭も酷い。

奥へ進むにつれ、隠形鬼おんぎょうき達が決められた範囲に向かっていく。


リーダーの一朗太いちろうたは、鈴蘭すずらんぬえを連れて中央へ進む。

おそらく竜神を奉っていたであろう祭壇のある建物が一番高く、それを目標としているのだ。

途中、オーガがドラド族と思われる人を貪り食っているのも目にするが、今は無視して進む。


祭壇のある社に到着する前に、一際ひときわ大きな屋敷があった。

エリシャンテの実家かもしれない。

一朗太いちろうたはそちらに足を向ける。

この建物はさほど荒らされておらず、美麗を保っている。

ただ、周辺の警備の為か、取り巻きの数が多い。

一つの屋敷の周りをぐるりと百体ほどの取り巻き達が囲んでいる。


(隠形しているとはいえ、すれ違う隙間も見当たらんか。

どうしたもんかなぁ)

取り巻きの中に目敏くコボルトも紛れているのを見つけた一朗太いちろうたは、考え込む。

わんころの薄いところを突破するか?

しかし、オーガ共の配下にしては真面目な警備ぶりよなぁ)

ほとんどの取り巻きはその場から動かないが、コボルトだけは巡回をしている。

コボルト達はオーガに力ずくで支配されたとはいえ、種族特性で力ある者に従順になる習性がある。

それがここでも発揮された結果だ。


やがて、ぬえ一朗太いちろうたの足をタシタシと前足で叩く。

(ぬぅ、どうした?)

姿は定かではないが、ぬえのいるであろう方を向く。

(ミャアオ)

ぬえは念話で一声鳴き、空のイメージを纏わせる。

(ぬぅちゃん、空がどうしたの?)

鈴蘭すずらんも念話で語り掛ける。

その時、三人の身体に重力が感じられなくなり、足が地を離れ始めた。


(これは浮遊術か!?)

そのまま三人は浮き上がり続け、屋敷の屋根の高さまで浮かび上がる。

そこで今度は身体が前方向に進み出した。

(これは好都合。

ぬぅ、このまま屋根の上に降ろせるか?)

(ミャウ)

(空に浮かぶのも悪くないね。

気持ちの良いもんさ)

屋根の上に到達した三人は、やがて身体に重力を取り戻す。

(ぬぅ、おまえさんが仲間でいてくれて良かったよ。

帰りも頼めるか?)

(ミャオウ)


厳しい表情を取り戻した一朗太は、屋根から屋内へと侵入する。

都合の良いことに屋根裏部屋があるので、そこから各所を覗き見ることが出来た。

そこでドラド族と思われる人が十数人生き残っていることを確認。

人質なのか食料なのかは判別出来ないが。


「ぎゃああ!」

屋敷の奥から悲鳴が響いてきた。

三人はそちらへと向かう。

ただし、今まで以上に慎重にだ。

その先にはおそらくオーガが居るに違いないから。



そこは大広間のようだった。

天井板にそっと爪で穴を開け、覗き込む三人。

そこには凄惨な光景が広がっていた。

一人のヒトを五体のオーガが取り囲んでいるのだが、ただ囲んでいるのではない。

四体のオーガがそれぞれ一本ずつの手足を持ち、残りの一体がはらわたを引きずり出していた。

そしてそのはらわたを咥えている。

「俺にも食わせろ」

手足を掴んでいるオーガ達も手を伸ばして、胃を小腸を大腸を引きずり出してそれを口にしていく。

「おうおう、やはり肝が一番うまい」

「俺は腿の肉が一番好きだがな」

オーガ達は野卑な笑いを張り付け、生きたままのヒトを喰らっていく。

「オレは苦痛に歪むその表情が一番の好物だがな」

腹を裂いた一際大きなオーガがわらう。


(よくもまあ、ヒトなど食べるものよ。

オーガは鬼とは似て非なる者共よなぁ)

一朗太いちろうたは人喰い鬼もいることも重々承知の上で思い更ける。

戦国の世で他に食うものが無く、夜な夜な人の屍体を食らい続けた成れの果てに鬼と化した者達がいることに想いを馳せる。

どうも、鬼とオーガは根本的に何かが違う、と思う一朗太いちろうた

(なんにせよ、あのお方にはお見せ出来ぬ光景よなぁ)

静かに荒れ狂う現人神あらひとがみの姿がちらつく。


(もう十分だ。引き上げるぞ)

一朗太いちろうたが念話でそう伝えた時だった。

「ん? 何か匂わんか?」

一際大きなオーガが周りに言い、一朗太いちろうた達に緊張が走る。

「匂い? 何も匂わんが……?」

周囲のオーガ達も辺りを見回すが、首を捻る。

一方、屋根裏部屋では一朗太いちろうた達が物音一つ立てぬよう努力している真っ最中だった。

(匂いと言ったな。

それが単純な匂いとは限らんが……ワシら独自の妖気にでも反応したか?)

オーガの陰気を感知出来る一朗太いちろうたは、その逆もあり得るかもしれないと考えた。


どうするかと考えた時、一朗太いちろうたの足元に朧気ながら黒いもやが漂い始めたのだった。

出所を探ると、ぬえの居た位置からもやは噴出しているようだった。

(む!? 雲隠くもがくれの術だと!?)

ぬえからイメージが伝わって来る。

(ぬぅはやたらと引き出しが多いな。)

そして、三人の身体がふわりと浮き、後方へと下がっていく。

(ぬぅにはこれがあったな)

梁や柱にぶつかること無く、大広間を通り抜け、屋根裏部屋から撤退出来たのだった。

そしてそのまま侵入口を通り、屋根に降りること無く元居た地上に降り立つ。


(ぬぅのおかげで助かった。

ぬぅ、良くやったな)

(ぬぅちゃん、帰ったらぬぅちゃんの好きなサツマイモの炊き込み御飯をたんと炊いてあげるね)

(ミャウミャウ!)

そして、三人はドラドリアから撤退するのであった。



本隊に戻った一朗太いちろうたは以心伝心で他の隠形鬼おんぎょうきと連絡を取り合った後、隊長のマフティの下へと赴く。

「街中は、やはり四百近くのオーガがいますね。

仲間達が各所に散っていますが、中央のやしろはもぬけの殻でした。

また、手前の屋敷では強力なオーガが五体いましたね」

「社の手前の屋敷というと、エリシャンテ様のお屋敷ですね。

強力なオーガ……百人長とやらですか」

「でしょうな。

中でも一体がより強そうでした」

「了解しました。

あとは残存部隊が見つかれば良いが……」

残存部隊捜索班に張り付いているサトリからの報告はまだない。


(隊長さん、ちょっと……)

(ん? 一朗太さん、どうされました?)

一朗太がマフティに小声で声を掛ける。

(いや、例の屋敷なんですがね。

居るんですわ、生存者が)

(え!? 生存者が?)

(十数人がね。

どうも食料として生かされてるっぽいんですわ)

(それは……一朗太いちろうたさん、それはまだ内密にお願いします。

ドラド族の、特にエリシャンテ様の耳には入れたくない。

そこには例の強力なオーガがいるんですよね?)

(そうです。

向かわせるのなら、こちらも主力を投入せにゃならんでしょう)

(わかりました。編成を考え直します)

一朗太いちろうたはそれだけ言うと引っ込んでいく。


マフティは本隊の主力部隊に戻り、編成の再編とそれぞれが向かう箇所を指示していく。



ぬえのぬぅちゃんがなかなかの活躍を見せますね。

一朗太いちろうたの情報から、主力部隊の再編成に取り組むマフティ。

エリシャンテは……。

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