第81話 救援部隊出発
ドラド族の生き残りを救援する部隊が編成された。
隠形鬼達も回復した。
万全の状態で戦いに赴く。
作戦会議から四日後、救援部隊が広場に勢揃いした。
僕と正義は見送る側だ。
雲外鏡、隠形鬼チーム13名、エリシャンテを始めとするドラド族40名、鎌鼬と回復スライムコンビの医療チームが10組。
地上戦力に河童12名。本当は鬼達も投入したいところだが、ドラド族の残存部隊にオーガと誤認されるのを避ける為、やむ無く除外。
空軍で天狗12名。
情報伝達役にサトリ。
そして、これらを率いるのが、副将軍のマフティだ。
中隊規模に値する。
これで十分とも思えるが、最大戦力として、タマモを呼んでおいたが……まだ来ていない。
代わりに、なぜか八岐大蛇がいる。
「オブザーバーとやらで」
あ、本来的の僕のポジションだ。
八岐大蛇にとられたか。
さらに弁天にユキ、キキまでいる。
「配下がお世話になりっぱなしじゃ、水神の名折れだわ」
弁天はさも当然の如く言う。
「イチゴも無事身を実らせましたので、お手伝いを」
そうか、エリシャンテに河童や雪ん子達が世話になってるって言ってたもんな。
「キュキュキュオ、キュオ」
キキは……えーと、同僚を助けるのは当たり前だと言いたいのかな?
「おおーい。
待て待て待てー!」
爆速でハヤテが走り込んで来る。
橋姫も同じスピードで寄り添うように来たけど、嫋やかな姿勢のままなのには驚いた。
「今回の作戦は、隠密行動じゃねえって話じゃねえか。
なら俺様の出番と思ってな」
勝手なことを言ってやがる。
「呼んでないけど」
「何言ってやがる。
仲間の救援に向かうのに、理由は要らねえ。
任しときなって」
ニカッと笑いながらも人の話を聞かないいつものハヤテっぷりだ。
まあ、いいや。
橋姫も一緒だから、任せよう。橋姫にね。
するとそこに空中から舞い降りた人物が一人。
「すみません。
なんとか間に合いましたね」
それは、弓を肩に掛け、戦闘服に身を包んだリントだった。
リントが何故に?
それに今、浮遊魔法で飛んで来たよね? いつの間に?
危ないよ。オーガの群れに突っ込むんだよ。
「良い経験になるだろうと、前鬼様と後鬼様からご許可を頂きました。
ジロー様の分も活躍して参ります」
健気じゃないか。僕の分までとか、気にしないで良いから。
おのれ、前鬼パパと後鬼ママめ。
二人の許可があるとなると、反対しにくいじゃないか。
「臨時に参戦する者達に言っておく。
この作戦においては、私の指揮下に入ってもらう。
作戦中の私の命令に従うと誓うなら、同行を許す」
毅然とマフティが言い放つ。
皆頷くのを見て少し安心する。
この救援部隊は軍として動く。
一人の勝手な行動で、皆が危険にさらされては元も子もない。
それにこれは救援部隊だ。
救出部隊ではない。
ドラドリアに駐留するオーガと取り巻きを殲滅するのが目的だ。
「あら、事前に聞いてない者達までおりんすね」
タマモの登場だ。
「過剰戦力じゃにゃい?」
アヤメは見送りに来たらしい。ヒルコを胸に抱いている。
「これでは、あちきは必要無さそうでありんす。
見送り側に回るでありんすよ」
確かに、八岐大蛇が居る時点で過剰戦力と言えるか。
残ってどうするのか、と聞くと、静養中の僕の面倒をみるつもりらしい。
まあ、それも良いか。
これからも戦争は続くし、最大戦力のタマモに頼りきるのも良くない。
休める時は休んでもらおう。
「では、総勢107名、救援部隊として出立致します。
吉報をお待ちください」
マフティが僕と正義に敬礼してくる。
「うん。
勝利を。そして、命を大事に」
答礼すると共に言葉を贈る。
敬礼を直したマフティは、綺麗に回れ右する。
「出発!」
号令が響いたと思ったら、全員その場から消えていた。
「マフティならやり遂げるでしょう」
正義は呟くように言う。
「でも、本当に良かったでありんすか?
鵺を同行させて」
「鵺が暴走したら、ヤバヤバじゃにゃい?」
そう、実はたった一人残った鵺を救援部隊に組み込んだのだ。
妖達は苦手意識が強く、鵺を避けていた。
だが、ひょんなことから、鈴蘭と交流があり、ある日を境に一緒に住むようになっていた。
そして、作戦会議の翌日、一朗太と鈴蘭夫婦が僕を訪ねて来て、今度の作戦に鵺を入れて欲しいと懇願して来た。
鵺が隠形術を使えるとのことだった。
意思の疎通も二人なら問題ないらしい。
大樹の森の拠点内の鵺の様子を鑑み、同行を許可した、という訳だ。
「鵺は暴走しないよ。きっと。
それに、あの子は鵺というより猫又の気が強いそうだ」
「そういえば、そうだったにゃ。
……見た目はあんにゃんでも、同族にゃ訳かぁ~」
「あちきは猫又に良い思い出がありんせんけどね」
「なにをっ!」
「やるかっ!」
はいはい、お決まりのパターンですね。
……頼むぞ。一朗太、鈴蘭。
鵺の存在に一抹の不安を覚える大妖達。
次回は、そんな鵺のお話です。
お楽しみに。




