第8話 真神とナターシャ
前話が突然の「エラー発生」の文字が表示されてて、ちょっと慌てました。見ると、予約日が勝手にずれていました。
こんなことあるんですね。
投稿者も注意しなければいけません。
お詫びにもう一話投稿します。
今朝もアヤメにグルーミングされ、タマモからも顔をペロペロされ、ダブル洗顔の後、二人にブラッシングのお返しをしてあげた。
ブラシは前鬼が用意してくれた。
今日は南方面の探索だ。
朝からムズムズしたので、いきなり妖召還からスタート。
今回は大きな狼さん。
銀色でふさふさな毛並みとキリリとした顔立ちがなんともカッコいい。
自らを真神と名乗り、眷属召還で多数の狼を喚び出すことが出来るという。
ぐっと探索がしやすくなる。
真神も一緒に朝ごはんを食べた後、南へと歩を進める。
真神は、眷属の狼(こちらはやや大きいめの大型犬くらい)を広く展開したようで、入れ替わり立ち替わりその狼達が真神の下に報告にやって来る。
どうやら襲ってくる野獣も、眷属狼達が複数で対応して排除してくれているようだ。
大物だけは、真神が「失礼」と一言告げた後、いずこかへ走って行き、獲物を咥えて戻ってくるというルーティン。
でっかい猪だよ。
これでトン汁も堪能出来るようになるね。ありがたや。
そうこうしてる内、唐突に視界が開けた。
森を抜けたのだ。
そこには辺り一面の草原。
時折吹く風にザアっと草が揺れる。
そして、50メートルほど先に眷属狼達に囲まれ、怯えている集団がいた。
「おや? ヒトかな?」
『ヒト型の女性が5名。他に子供が8名です』
「主殿。ここは我が」
名乗り出る真神を抑え、全員で向かうことに。
「フェ、フェンリル様!」
「それにオーガまで!」
いやいや、そんなファンタジックに呼ばないで。
こちらは日本古来の霊験あらたかな存在ですぞ。
「あ~、こんな時はなんて言ったら良いんだろ?」
ブツブツ言いながら一歩前に出る。
「こんにちは?」
「子供? なぜ?」
まだざわざわしてる大人達はさておき、子供達が「こんにちはー」って返してくれたので、気分良く続ける。
「はじめまして。
この森に住む鈴木次郎と申します。
皆さんはどうしてここに?」
「ご、ご丁寧にあ、ありがとうございます」
落ち着けるように一呼吸置いた仕草の後に、
「私はアズナブル氏族のナターシャと言います。
集落が魔物の集団に襲われ、命からがら逃げて来たところです」
ナターシャと名乗ったその人の耳が尖っている!
もしかしてエルフ? エルフなのか?
「それは大変な目に逢いましたね。
……ちょっとお待ちくださいね」
前鬼と後鬼に相談を持ちかける。
一時避難として保護したいが、拠点には炊事場以外には住処のウロしかない。
すると二人から、簡単な小屋なら作れるという。
木材はいくらでも周りにあり、切り出しての乾燥も不思議術で一瞬で出来るそう。
釘も必要なく、木組み技術で組めばしっかりしたものが出来るとのこと。
おー、宮大工がここに見参。
「あたしもお野菜や果物採って来るにゃ」
「では、あちきも同行いたしましょう」
食料も豊富にあるし、とりあえずは大丈夫そう。
「お待たせしました。
では、一時避難として僕たちの拠点に案内しましょう」
エルフ達を伴って拠点へとゆっくり進む。
道すがらナターシャから話を聞く。
彼らの集落は草原の先の森の中にあり、この森とは植生も住まう動物達も違うらしく、魔物もめったに遭遇しない平穏な森だったとのこと。
狩り暮らしで十分過ごせる豊かな森だったらしい。
そこに突然オークの集団が押し寄せた。
知ってます。ブヒブヒ言うヤツラですね。女騎士にくっころ言わせるモンスター。
男達は勇敢に迎え撃ったが力及ばず、女子供だけで逃げて来た。
半月ほど歩いた後、ようやくこの森にたどり着いたと思ったら、狼に囲まれていたと。
「ジロー様。大変感謝しております。
もう体力も限界で途方に暮れておりました。
子供達にもあのように」
子供達には眷属狼の背に乗ってもらった。
最初は怖々と、段々にキャッキャと愉しげな声を弾ませている。
「それにしても、ジロー様はフェンリル様だけでなく、強者の方々を従えて……幼げに見えて大層な魔術師様なんでしょうね」
こちらの世界とそちらの世界の相違が窺える発言をいただきました。
フェンリルは神獣の一種と見なされ、一部地域では拝まれている存在らしい。
あ、真神も日本古来の神獣だったか。それに信仰の対象でもある。
なんか似てるね。
ナターシャはアズナブル氏族の長の娘なので、リーダーとして避難してきた皆を率いてきたとのこと。
正式にはナターシャ・アズナブル。
シャアという人物に心当たりありませんか!?
エルフは森の人という印象は変わらないが、別にベジタリアンでも無く、普通に肉も食べる。
狩り暮らしって言ってたもんね。
弓と魔法を使って狩りをするらしい。
やったね。あとで魔法を見せてもらおうっと。
拠点に到着すると、先行した前鬼が木材を組み上げてた。
「お帰りなさいませ」
「早いね。もうほぼ出来てるじゃん」
「屋根をこれから組み上げなければならないので、まだ少し掛かります」
「さすがは前鬼だね」
「お誉めに与り、恐悦至極にございます」
一方、炊事場にいる後鬼にも声を掛ける。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
「ただいま。良い匂いだね」
「暖まるようにと思い、鍋をこしらえておりますよ」
ひょいっと鍋を覗く。
やりぃ! トン汁だよ。それも具だくさん。
「もう少しお待ちくださいね。
大鍋なので時間が掛かります」
その大鍋が5つも並べられ、大根らしきものを切っては投げ入れ、時々かき混ぜる後鬼は忙しそう。
ん? 一つの鍋だけ、具材が大きくぶつ切られていた。
あとで真神専用の大鍋とわかり、さすがは後鬼ママの采配振りと感心した。
アヤメとタマモが帰ってくる頃には、エルフ達の住居もトン汁も出来上がり、みんなで晩ごはんに。
卓についた一人一人の椀に注がれたトン汁が行き渡り(真神には大鍋そのものが)、大皿にはおにぎりも鎮座。
「これは僕たちの故郷の料理でトン汁と言います。
あったまりますよ~。
では、召し上がれ」
「「「いただきます」」」
こちら側は箸を用意したが、エルフ達は使えるかわからなかったので、スプーンを渡してある。
エルフ達は森の恵みと精霊に謝辞を述べた後、食事を開始してた。
多神教の神道に通ずるものがあるのかもしれないね。
おいしいおいしいと歓呼を連打する元気な子供達の笑顔に、大人達も潤んだ瞳で笑顔を返していた。
少しの抵抗でホロリと口の中に汁の旨味を吐き出しながら崩れ行く大根。
汁に出したはずの肉の旨味が、肉そのものにも十分残っており、噛み締めれば十分肉の良さを楽しめる。
クニュクニュした食感が楽しいコンニャクは、エルフに大丈夫かと思ったが、子供達の「なにこれー」「おもしろーい」が聞けたのでひと安心。
他にも、人参や玉ねぎ、さやえんどうまで入ったトン汁はバランスが良い。
子供達も野菜を残さず食べていた様子。
うんうん。しっかり食べて大きくなるんだよ。
ごちそうさまでした。
まずは現地人第一号はエルフでした。
皆さんはエルフにどんなイメージをお持ちですか?
美男美女揃いで痩身? 草食主義?
ここではそうであったり、なかったり。
エルフ達はじわじわと活躍させて行きます。お楽しみに。