第68話 超能力発現?
明けましておめでとうございます。
2025年の幕開けですね。
今年も皆様にとって良い年でありますように。
ダイクン王国の報告会が始まった。
予備知識として、人口一万人。首都に五千人。
王国軍二千人。その内、首都に千五百人。
軍人はほぼ壊滅状態。
逆算すると、首都に残っているのは三千五百人となるが、数百人がすでに殺されていることが、隠形鬼チームからの報告で把握している。
なので、救出対象は三千人の規模になる。
「雲外鏡。
三千人の転移は可能か?」
一番大事なことから確認する。
「さて……。
そこまで多人数を運んだことがありませんからのう。
ただ、鈴木様と主従の契りをしてからというもの、妖力が上がりましたから、千人ほどはいける気が致しまする」
例の雲外鏡の核を飲み込んだことが、主従関係を結んだことになったらしい。
僕もあれ以来、アポート(物体取り寄せ)とアスポート(物体を別の場所へ転移)が少し出来るようになった。
雲外鏡は自分と一緒に、認識出来る範囲の人や物を転移出来るが、僕のアポートとアスポートは出来なかった。
この超能力?は、雲外鏡の能力とは異なるものだった。
それはさておき、雲外鏡が千人の転移が出来るのはありがたい。
救出計画がぐっと楽になる。
しかし、一方で、オーガが首都内に約五百人、首都外の城壁周りに約千人とその部下が約三千人いることも報告された。
こっそりという訳にもいかないな。
悩んでいると、正義が挙手してきた。
「正義、何かアイデアある?」
「発想の逆転という手もあるかと」
「発想の逆転?」
「はい。
鈴木様は、如何にダイクン王国の国民を脱出させるかで悩まれていると思いますが、逆に邪魔なオーガを転移させ、我々で一掃するのも有りではないかと愚考致します」
あ、その手があったか。
むしろ、その方が国民を守りながら戦う必要が無くなって、こちらの負担が少ない。
愚考どころか賢慮だよ、それ。
「首都内のオーガは散らばってるから、雲外鏡に何度か往復してもらうことになるけど」
雲外鏡を見やると、鏡面の曇りが激しくなっていた。
「ワシ、生きて帰って来れるんかのう」
『何を言っているのですか。
あなたの核を主様が持っているのだから、いくらでも復活出来るでしょうに』
「あ、そうか。
ワシ、不死身になったんだ」
「良かったでありんすね。
これで壊しがいがありんす。ウフフ……」
「きゅ、九尾狐!
やめれ! 割れると痛いんじゃぞ」
「ほほう。良いこと聞いたでありんす」
タマモ、あまり苛めないように。
「それでも、細かなところまでカバーはしづらいか」
「いえ、大変恐縮なのですが、そこは鈴木様にカバーしていただけないかと」
「僕?」
「先ほど見せていただいた超能力で」
ああ、会議が始まる前に、同郷の意見を求めたくて正義に見せたっけ。
「超常現象に助言なんて出来ませんよ」とあしらわれちゃったけど。
「「「超能力?」」」
みんなの視線が痛い。
「超能力って、人間がたまに発現させる不思議な現象よね?」
弁天は知ってるらしい。
「そんなの見たことないわ」
ユキが記憶を辿っているようだが、そうそう無いから超能力って言うんだけど。
「あら、知らない?
有名なのはスプーン曲げとかよ」
弁天は意外と庶民派。
「あー、テレビで観たことあるにゃ。
次郎様も曲げれるにゃ?
見たい見たい!」
無茶言わんでくれ。
スプーンなんか曲げれないよ。腕力でなら出来るけど。今、12歳の姿のままだから。
おーい、前鬼パパ。
スプーンを取り出さないで。
出来ないから。
「サイコキネシスは出来ないから。
僕が出来るのは、アポートとアスポート!」
「さい……あぽ……すぽ?」
前鬼、変な区切りをしないでね。
「「「???」」」
はいはい、やれば良いんでしょ、やれば。
「前鬼。
そのスプーンをしっかり持っててね」
素直な前鬼がぎゅっとスプーンを握りしめる。
ほい、アポート。
僕がスプーンを持ってる。
「なっ! いつの間に!」
珍しく前鬼の焦った顔が見れた。
「アヤメ、手を出して」
「はいにゃ」
今度はアスポート。
スプーンがアヤメの手のひらに。
「にゃ! なんであたしがスプーン持ってるにゃ!?」
「手品?……ではなさそうね。
これだけの大妖達を出し抜くなんて、出来ないわよね」
後鬼は冷静なまま。
ヒルコが触手で拍手してるよ。
「次郎様、なんで出来るにゃ!?
どうやってやってるにゃ!?
いつから出来るようになったにゃ!?」
ええい、鬱陶しいわ。寄るな寄るな。
アヤメの鼻息が荒い。
ちょっとお仕置きをして黙らせよう。
「あ!」
アヤメが一言呟いたきり、黙った。
アヤメ、シッダウン。
大人しく座ってくれた。
「物を引き寄せたのがアポート。
物を別の場所へ移動させたのがアスポート。
僕のは、雲外鏡みたいに自分が一緒に移動しなくても出来る。
……でも、発現したばかりで、人はおろか生き物すらやったことない」
「では、この際ですから、やってみるでありんす」
立候補します、とタマモは言うが、危険なので絶対ダメ。
これは僕が知ってる科学的理論が見当たらないんだ。
「では、主殿。
少々お待ちを」
そう言って、真神がベランダから出ていった。
(ボクも行く)
続いて八咫烏まで。
そして、八咫烏と入れ替わりのように、もう真神が帰ってきた。
生きたままの兎を咥えて。
それをアポートしろってか。
……いや、良い検証になるか。
やるだけやってみよう。
そう思って、自分の右手を見る。
兎の後ろ首を掴んでる右手を。
兎は普通に元気だ。
逃げようと暴れている。
ありゃあ……出来てるよ!?
今度は真神にアスポート。
ちゃんと真神が兎を咥えている。
(あるじ……お庭に来て)
今度は八咫烏。こちらも早い。
言う通り、屋敷を出てみると、八咫烏がでっかい魔猪を掴んで空中にとどまってる。
これもアポート出来た。
もちろん、魔猪は生きたままだ。
魔猪は少し唖然としたようだが、僕に気づくと突進しようと身構えたのが見えたので、さらにアポート。
今度は魔猪の身体の半分を地中に埋めた。
さて、ここで問題です。
魔猪の下半分はどうなっているでしょう?
答えは、普通に土に埋もれてました、だ。
別に身体と土が同化とかはしてないみたい。
魔猪の下の土をアポートしたんじゃない。
魔猪そのものを土の中にアポートしたんだ。
……僕の中の科学理論が崩れていく。
なぜ埋もれる?
なぜ平気なんだ?
下半分の身体分の土はどこへ行った?
ああ、魔猪の周りの土が盛り上がっているから、その分の土なのかな?
よくわからん。
超能力よりも、この土の方がよっぽど不思議だ。
いかんいかん。
思考の渦に埋もれそうだった。
「あ~……出来ちゃったね」
「では、鈴木様。
自分をアポートしてください」
正義、君はなんで自分の身体を使うことを躊躇わないんだ。
回復スライムの時もそうだったよね。
「あら、あちきが先に手を挙げたでありんすよ」
「これはタマモ様。
そうでしたね。お譲り致します」
譲る譲らないの問題じゃないんだけど。
「どうせ、いつかは試すことになるでありんしょ?
遅かれ早かれ、でありんす」
タマモから耳打ちされて、了承した。
「ホントにいいの?」
「愛する人の為でありんす」
タマモが普通にニッコリと笑う。
はっ、いかんいかん。
見惚れてる場合じゃない。
一つ深呼吸をしてから、アポート。
目の前にタマモが移動してきた。
思わず抱きしめた。
「あんまりこういうことさせないで」
「ふふ。あちきは嬉しいですよ」
タマモからも抱き返されて、ちょっと恥ずかしい。
しばらくして、アヤメが何も反応してないことが不思議そうに、タマモはアヤメを見つめる。
「ああ、アヤメは今お仕置き中だから、あまり動けないと思うよ」
「お仕置き中?」
「彼女のパンツが僕のポケットの中にあるからね」
いたずらっ子そのものの顔で笑う。
「ふふ。あの娘にはちょうど良いお仕置きだこと」
二人でこそこそ笑う。
とりあえず、僕も人を転移させることがわかった。
なので、雲外鏡と二人で、首都内のオーガを転移させる役割をすることに決めた。
余談
「あなた、下が落ち着かないんでしょ?」
「にゃんでそれを!?」
「良かったわね」
タマモがコロコロと笑う。
「笑い事じゃにゃいにゃ。
下がスースーして落ち着かないにゃ」
「早く部屋で新しいのを履いてきなさい」
「そうする」
「でも、次郎様が持ってるのよね。
今夜にでも使うのかしら?」
「使う?…………にゃ、にゃ、にゃ!」
一気に顔を真っ赤にするアヤメ。
「ほんに可愛い処女だこと」
余談
「う~ん……」
『どうされました?』
「いや、女子のパンツを僕が保管するのもおかしいなぁ、と」
二枚の下着を前に悩む次郎。
『アヤメと……タマモですか?
良いじゃありませんか。
本人が望んだことでしょう?』
「タマモはそうでも、アヤメはお仕置きだったからね」
『たぶん、アヤメもそう望むと思いますが、聞いてみますか?』
「それはそれで、ちょっと恥ずかしい」
『主様はお二人がよろしいんでしょう?
なら、問題ありません』
「うん、サトちゃんも入ってくれるならね」
『まあ、嬉しいお言葉を』
「いや、本気でサトちゃんの実体化を目指してるよ」
そしてその日の夜は、サトリとアヤメ、タマモの三人の女子会は遅くまで続いたそう。
ヒルコは早々に、次郎の布団の中へ避難していた。
余談
「今日のことは、椿に言ったらダメよ」
弁天が強めの口調でユキに言う。
「作戦内容を伝えないと不味いけれど」
ユキが冷たく言い放つ。
「それは当たり前でしょ。
私が言ってるのは庭先でのことよ」
「……ああ、現人神が九尾狐と抱擁したことね」
少し考え、思い至ったことを述べる。
「あなたは本当に、対象外の男に興味無いんだから……」
「仕方ないわ。
雪女の特性でしょうから。
まあ、あの件は特に言う必要はないわね。
言ったら、大樹の森の拠点が人の住めない極寒の地に変わるし。
これでも、ここの生活が気に入ってるのよ」
ユキはハウス栽培が気に入ってるようだ。
特に今はイチゴ栽培に心血を捧げている真っ最中だ。
「そう。なら良いわ。
でも、あの娘、妖力だけなら私達に匹敵するのに、経験が不足してない?
なんかバランスが悪いわね」
「私達は普通、人の怨念や人そのものが変化した者がなるけど、あの娘は純粋な大気の精から生まれたから……」
「そう聞くと、さらに怖いわね」
「放っておけば良いのよ。
いずれは現人神に嫁ぐでしょ」
「やっぱり、そうなるかぁ」
「ならなきゃ、この辺り一帯全滅するわ」
「もっと怖いわ!」
しばらくは静観することに決めた二人だった。
次郎に新たな能力が発現!
その能力をイタズラにも使っちゃうのが、なんとも次郎らしいですね。
次回から次郎や大妖達が大暴れします。
ご期待ください。




