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第6話 タマモ

 これでヒロインが揃いました。

 お楽しみ頂ければ幸いです。

 スッキリした朝です。

 猫姿に戻ったアヤメにグルーミングされまくりで、もう洗顔しなくても良いのでは?と思うくらいスッキリしてます。



 今日は東方面の調査。

 隊列に若干の変更があり、アヤメと後鬼ごきが先頭、自分の隣に前鬼ぜんきという形式。


 後鬼ごきが露払いをしてくれるんだが、これがまた電光石火という言葉がお似合いの戦闘スタイル。

 敵が現れた瞬間には真っ二つになっているという。


 前方のピカピカドンドンでサクサク進むんだけど、敵が多い。

 昨日の数倍はいるんじゃないのかな?

 そんな無双状態の後鬼ごきでも、ちらほら敵がこぼれて来る。

 こんな程度なら、自分の良い経験値のコヤシになってくれそうだ。

 どうも後鬼ごきはわざとこぼしてくれている様子。

 昨日、後鬼ごきから風術の初歩を習ったから、その実践をせよ、とのことですね。はい。


 今日は肉弾戦を封印して、風術でビシバシやってます。

 これ、けっこう楽しい。

 風の斬撃を飛ばしているんだけど、イメージするだけで飛ぶ。詠唱もいらない。


 いや、最初は呪文を習ったんだけど、それを読解してみると、空気とはなんぞやに行き渡ることになるので、現代風に理解してみた。

 原子とはこう、分子はこう、運動エネルギーはK=1/2mv2乗。ってね。

 すると詠唱が要らなくなってた。

 理系バンザイ。

 威力は後鬼ごきの半分どころか、十分の一も出てないけど。まあ、それでも野獣程度なら、これで十分。


「あ~、みんな、ごめん」

 走りを歩みに変えながら言う。

「どうしたにゃ? お腹痛い?」

 心配そうにアヤメが寄り添って来る。

「違う違う。そうじゃないよ。

また来ただけ」

「おおっ、あやかし召還でございますな」

 前鬼ぜんきは嬉しそうに、後鬼ごきはやや緊張気味に歩み寄って来る。


『して、今回はどのようなモノにされますか?』

「この東方面はちょっと敵が多いじゃない?

だから、戦闘面で役立ちそうなあやかしが良いかなって」

「不十分と?」

 不安そうに後鬼ごきが聞いてくる。

『戦力は十分でしょう。

ですが、前鬼ぜんき後鬼ごきはあくまで護衛。

主様は攻撃役を所望ということでしょう』

「サトちゃんは理解が早いね。

昨日みたいに魔物もいるかもしれないし、いずれ咆哮のヌシとも合間見える時が来るかもしれないから、良いと思うんだ」

前鬼ぜんき、十分に警戒を)

(うむ。厄介なモノであれば排除してくれる)


「浅慮でした。失礼致しました」

「いいよ、いいよ。

後鬼ごきは心配してくれてるんだよね。

大丈夫、成功させてみせるよ」

 一方、アヤメは尻尾をゆらゆらさせて楽しげに待っている。

『では、為されませ』


「うん。召還!」

 両の手のひらを合わせ、祈るでもなく、目の前に集中する。

 やはり唐突にそれは居た。


 白くふわふわとした尾を扇状に広げた狐がちょこんとお座りしている。

 身体は人並みサイズだが、尾がいくつもあり、それが扇のように広がっているので、さらに大きく見える。

 毛が白くも見えるが銀色にも見え、かなり美しい。

 瞳の色が赤く印象的だ。


 その妖狐がこちらを認識すると、尾が一斉にブンブンと振られ、ちょっとスゴい状態になった。心理的に後ずさったのはナイショ。


「これはこれは、あちきのご主人様かと存じます。

玉藻タマモでありんす。

よろしゅうお願い申し上げます」

「僕は鈴木次郎。

タマモ、これからよろしくね」

 こやつ、九尾狐か!と前鬼ぜんきが言うように、これまたメジャーなあやかしが召還されたようだ。

 しかもタマモというと超有名人じゃん。

 一説にはかの有名な安倍晴明あべのせいめいの生母とも言われてる。


「フギャー!

なんであんたなんか出てくるにゃ!

還れ還れ、シッシッ」

 アヤメが全身の毛を逆立てて威嚇する。

「あらぁ、小娘がおりんすね。

あなたこそ、役に立つのかしら?

さっさと往ね!」


 何を! 何よ! としている二人をそのままに、前鬼ぜんき後鬼ごきに話しかける。

「タマモだけど、何かあった時は二人に押さえることは出来る?」

「ご安心ください。

多少てこずるかもしれませんが、私と後鬼ごきが揃っていれば十分可能です」

「無傷でという訳には参りませんが、二人揃った方が無難でしょう」

 おおっと、二人の師匠に傷を付けることが出来るのか。それは凄いな。


『アヤメ、タマモ、そろそろ控えなさい。主様の御前ですよ』

「にゃ!」「はい!」

 実体の無いサトリには弱い二人。謎だ。



 気を取り直して、探索再開。

 さほど間も無くして湖畔に到着した。


 そう、湖だ。

 キラキラと水面みなもに反射する陽光が周辺の森を照らす。

 水辺に吹く爽やかな風も、大自然の真っ只中を意識させられる。


「サトリの予測通り、湖がありましたな」

と、釣竿を用意している前鬼ぜんき。それも人数分。

 どうぞと釣竿を渡して来た前鬼ぜんきは、いそいそともうポイントを探っている。

 釣り大会なの?

 あれ?そんな話したっけ?

 そんな流れで、みんなで釣りをすることになりました。


 のんびり出来て良かった。

 結果は聞かないで!シークレット!



余談


「サトリは苦手にゃ」

「ええ、ほんに。

あること無いこと周りに吹き込んで動き辛くされてしまうわ、八つ裂きにしようとしても実体がおぼつかないわ、なんともしようが無いのがまた悔しい」

「それ、あることあることではにゃいの?」

「はあ!?」

「やるか!?」

 タマモのモデルは玉藻御前です。超有名な妖怪ですね。

 逸話も多く、そのうち書いていきますね。

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