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第57話 コボルト戦 後編

大樹の西の森には、コボルトだけでなくオーガまで隠れ潜んでいた。

オーガの戦闘力はとてつもなく高い。

大樹の森の軍は討伐出来るのか!?

後編をお楽しみください。

『ただいま弁才天から報告を受けました。

それによると、コボルト達に紛れてオーガが潜んでいたそうです。

しかも、隠形鬼のようなオーガで、強さも通常兵では危ないと。

弁才天とキキの二人に椿つばきのフォローで退治したそうです』

コボルトの裏にオーガか。

少し見えてきたな。

コボルトやオーガには手甲を作る技術は無い。

ドアンの見立てでは、ヒトが作るものよりも頑丈でありながら、ドワーフの作る武器なら粉砕出来るようにわざと仕立ているフシがあるそうだ。

脅されているドワーフ達がいるかもしれない。

単純な構図ではなさそうだ。


真神まがみ様が西門前に到着されました」

「よし、西門を開けろ。

後詰め部隊は戦闘準備しつつ、そのまま待機」

西門が開くと真神まがみが待っていた。

オーガを咥えている。

(主殿、コヤツらオーガは一味違いますぞ。

一般兵では立ち向かえん力量がある)

真神まがみはオーガを咥えたままなので、念話を使ってきた。

「うまく生け捕りにしたな、真神まがみ

(はっ。お褒めに預かり恐悦至極)

「このまま尋問する。

おい、貴様。

何が目的なんだ?」

覇気を滲ませつつ、尋問する。

「な、子供!?

こんなガキが魔王なのか!?」

魔王だと?

「貴様に自由な発言を許した覚えは無い。

聞かれたことだけに答えろ」

真神まがみが力を込める。

「ぐあっ。

わ、わかった。

俺達は大樹の下にあると言われる覇王の源を探しに来たのだ。

そ、それが大樹に砦が築かれてたから、監視をしてたんだ」

ほう、覇王の源ね。

無いぞ、そんなもん。

「わざわざ大挙を為してか?」

「そ、それは……隙をつけばなんとかなるかと...…」

「首魁は誰だ?

どこにいる?」

「我らが王のクリムト王だ。

ここより南の帝都におられる。

我らの本隊はここにいる部隊の何倍も規模があるぞ。

今、降伏すれば執りなしてやる。

女を貢げば男も命は助けてやる。

お、俺には綺麗どころを用意するんだ」

王の名を口にした途端、捲し立てるように喋るオーガ。

もう聞くに堪えない。

今、自分の姿を思い出させてやろう。


「おまえは男だが、俺は構わんぞ。

綺麗な顔をしてるからな。

俺が可愛がってやる」

真神まがみの目が光る。

次の瞬間には噛み千切っていた。

二つに分かれたオーガを吐き出す。

「申し訳ありません。

これ以上は我慢なりませんでした。

お叱りはいくらでも」

「いや、良い。

僕でもそうする」


後詰め部隊に振り返り、号令を下す。

「これより、殲滅作戦に移行する。

敵はコボルトだけにあらず。

オーガも潜んでいる。

オーガは隊長が対応せよ。

皆のもの、かかれ!」

鬨の声に混じり、オオオッと咆哮が上がる。

真神まがみ、オーガを潰しておきたい。

乗せてもらえるか」

「喜んで」

真神まがみに跨がり、皆と共に森へ突入する。


ーーーここからアヤメの視点ですーーー


「にゃんであたし達の班だけ三人にゃの!?」

「良いじゃありんせんか。

こうしてヒーちゃんと一緒にいられるし」

「や、それはそうにゃんだけど。

遊撃部隊なのに、戦力が片寄ってるって言うか、にゃんかいびつにゃのよね~」

遠くで後詰め部隊の咆哮が聞こえた。

「後詰めが来ちゃったでありんす。

ほらほら、さっさと次を探すでありんすよ」

「あんた、これ等の感知は出来るじゃにゃい」

「何事も経験よ。

さっきも出来たじゃない」


そうなのよ。

コボルトの陰気とやらがさっぱりわからんちんだったのに、タマモが何度もやらせてくれたの。

丁寧なことに、そこの右手に集中してだの、後ろが気にならない?とか聞いて来るんだもん。

五回目でなんとかコツを掴んだの。

なんかホントにお姉ちゃんみたい。

会敵したコボルトはタマモが瞬殺してたけど。

でも、かなり南下したけど、河童達と合流しないの。

おかしい。とっくに合流してなきゃならないのに。


「あ!河童を見つけたにゃ」

「ずいぶんとおサボりの河童達ねえ。

もうすぐ水路まで出ちゃうんじゃありんせんか」

「タマモ、急ぐにゃ!

戦闘音が聞こえてる」

ヒーちゃんを抱えたタマモを急がせる。

茂みを掻き分けた先で、河童達が何かを囲んで戦っている。

三人が負傷し、五人で戦っている。


「かぁつ!」

タマモが喝を入れると、その姿が現れた。

隠形鬼!?

にしてはでかい。あ、オーガか。

「皆の者、下がりなさい。

コヤツはあちき達がヤります」

タマモが三本もしっぽを出して、鬼火を展開する。

「グオオッ!」

オーガも唸りと共に、口から目に見えない何か得体の知れないモノを吐き出して来た。

結界術を展開する。

周りの木々の皮がめくれ、茂みが千切れ飛ぶ。

結界の境でもピシッピシッと音が鳴る。

あたしの結界が破れるもんか。


タマモが十も展開した鬼火をオーガにぶち当てて行く。

オーガは両腕で防いでいたつもりでも、その腕が炭化している。

そんなんでタマモの鬼火を防げる訳ないじゃん。

タマモに抱えられたヒーちゃんから触手が伸びる。

その触手がオーガの腹部に到達した瞬間、向こう側の景色が見えた。

オーガの腹部に大砲が当たったかのように、胸まで達する丸い穴が穿たれてた。

さすがヒーちゃん。太古の神。

オーガが無くなった腹を探すように、手で腹部を探った隙に、タマモが鬼火で顔を焼く。

はい、終わり。


オーガとの戦闘を終え、負傷者の下へ行く。

全身を装甲で固めた河童を負傷させるなんて、なんてヤツだったんだろう。

前のオーク戦の時のヤツラなら、河童を傷つけることも出来ないはずなのに。

装甲は傷ついてないけど、全身から血を流してる。

目も血が滲んでる。

怪音波みたいなヤツにやられたのかな?

「急いで医療班を探さにゃきゃ!」

ヒーちゃんが鳴き出した。

ピューーーイ、ピューーーイ、ピー。

高く低く、まるで歌っているみたい。

「医療班にいる回復スライムを呼んでるのかしら?」

「あ、それはあり得る」

さほど待つこともなく、鎌鼬とそれに乗った回復スライム達が来た。

一応、状況を伝えると、それを聞いてから治療を開始した。

鎌鼬はわかるんだけど、回復スライムも話を聞いているのかな?

スライムにも知性があるの?

大樹の森の拠点の七不思議ね。


河童達に、負傷者が回復するまで戦闘を禁じて、あたし達はオーガを探すことにした。

もしも、こんなオーガが他にもいたら、他の人達が危ない。

あれ?

もしかして、次郎様、これを想定してた?

だから、あたし達三人を編成したのかな?

さすがはあやかしの王ね。

早く隣に立てるようにならないと。


ーーーここから八岐大蛇やまたのおろちの視点ですーーー


「八岐大蛇は八つの頭を持ってるから、一人で一班任せられるね」との次郎殿の仰せの通り、遊撃部隊として一人で最西部の水路から上陸してきた。

自分一人で来させた次郎殿の慧眼と言わざるを得ん状況に出くわした。

オーガだ。

コボルトに紛れ、こんなヤツラも潜んでおったとは。

自分からすれば、コボルトは雑魚に等しかったが、オーガは一味違う。

これが相手では、兵では逆に屠られかねない。

実際、医療班はあちらこちらを駆けずり回っておる。

オーガと鉢合わせた者共も大変な目にあっただろうが、医療班の苦労も偲ばれるというもの。


先ほどもオーガと戦った者達と遭遇したが、半数の者が倒れ付し、医療班の治療を受けていた。

気丈にも、片腕を失くした獣人が、

「腕を失くした代わりに、オーガを倒しましたよ!」

と嬉しそうに、自分に報告するではないか。

さすがは大樹の森の拠点の仲間よ。

自分は嬉しくなったと同時に、オーガに怒りが沸いた。

オーガはまだ潜んでおるやもしれん。

後で次郎殿には叱られるかもしれんが、元の身体に戻り、上空からオーガを探すことにする。

一般兵とオーガを立ち会わせてはならぬ。

一刻でも早く見つけ出さねば。


森の中の陰気を見つけると、それがコボルトなのかオーガなのかは判別せず、噛みつき砕いていく。

中にはコボルトだったのもあるが、構ってはおれん。

これ以上、仲間を傷つけさせはせん。

大樹の森の拠点におる者は、特に原住民共は、己の命よりも次郎殿のめいを優先させるきらいがある。

それほど心酔しておるのだ。

自分達は召還されたあやかしだ。

次郎殿に命令されれば、従うのが当たり前。自害せよと言われたなら、喜んでそうする。

先ほどの片腕の獣人も同じ気持ちなのかもしれんが、そうなのかもしれんが、自分には庇護するべき存在であると思うのだ。


八岐大蛇やまたのおろち!」

ぬっ、次郎殿に見つかったか。

これは覚悟せねばなるまい。

素直に、真神まがみに跨がった次郎殿の上空に行く。

「良いぞ。

その調子でオーガ共を喰い破れ!」

お……おお、許された?

「どうせ、おまえは住民が傷つくのが見るに堪えなかったのだろう?

その振る舞いを続けることを許す。

励めよ」

「ははっ。

この八岐大蛇やまたのおろち、今以上鋭意努力する所存。

とくとご覧あれ!」

なにやら真神まがみが笑っておるが、気にせず、オーガを探しに行く。

さすがは次郎殿よ。

見透かしておいでになられるわ。

慈愛に満ちた八岐大蛇やまたのおろちいかる。


日本神話ってモロにファンタジーの世界ですよね。

そこには果てしないロマンが詰め込まれています。

そのうち、日本神話をテーマにした作品を書いてみたいなぁ。

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