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第56話 コボルト戦 中編

大樹の西の森の各所から進軍する大樹の軍。

西の森の南から北上する河童達。

逆に北から南下して彼らと合流を目指すそれ以外の者達。

コボルトを徹底的に殲滅する作戦。

果たしてどうなる?

ーーーここから弁才天の視点ですーーー


私は、戦場の中央部から上陸した。

だって、最北西から一朗太いちろうた鈴蘭すずらん夫妻が来るじゃない。

現人神あらひとがみのお墨付きの鬼夫婦よ。

反対側の最北東からハヤテって獣人が来るけど、嫁同伴って。

最初はふざけるなって思ったけど……。

その嫁ってのが、あろうことか、橋姫はしひめ

立派な大妖じゃない。

両方とも戦果を上げるのが目に見えてる。

それじゃ目立たない。

最初に失敗から始めてしまった私達はそれじゃダメ。

この間の大蛇くらいでは評価を戻したとは思ってない。

ここで活躍して、河童達の……いいえ、水軍の評価を上げて見せるわ。


まず最初のコボルト四匹を軽く殲滅して、さらに北上する。

次のコボルト四匹は、同行した河童達が相手をする。

河童達にも経験させないと。

この世界では、戦って倒した分だけ強くなれるという不思議な摂理がある。

元の世界なら経験則が募るだけだが、この異世界では、僅かではあるが、妖力や筋力が向上するのよ。

ホント、異世界って不思議。


河童達も、三人でコボルト二匹を相手取る体制で、常に有利に戦いを進めている。

この7名から8名で一つの班を構成するのは、なかなか良い作戦ね。

大妖クラスがいる班は7名。いない班は8名。

常に数と戦力の有利がある。

コボルトが四匹でチームを組むことを知ってたのかしら?

まあ、現人神あらひとがみのすることよね。気にしてられない。


河童達も余裕を持って対処出来ている。

コボルトの爪をしっかり避けて、返す刀で槍を突いている。

今までの河童達なら、自らの装甲で弾いて、その隙に攻撃する戦い方だった。

それがシャコパンチ一発で装甲が割れることがわかり、それから皆回避に注力するようになった。

異世界侮ること無かれ。

これが私達の共通認識になったのだ。


河童の一人が、わざとコボルトの爪攻撃を受けることを申請してきた。

槍での攻防で確信したらしい。

許可する。

申請してきた河童が槍を片手で持ち、刃先を下に向けたまま、コボルトの前に無防備に立つ。

コボルトは爪でまっすぐ突いて来た。

が、ギャリッと音はするが、キズは一切つかなかった。

その河童は、槍を短く持っており、片手でコボルトを突き刺す。

心臓をひと突き。コボルトが崩れ落ちる。

残ったコボルトに向き直り、今度は回避に徹する。

次を見据えた戦法ね。感心感心。

ほどなくして、コボルト四匹の殲滅が完了した。

次に行くわ。


次々と順調にコボルト達を殲滅して行く私達は、かなりハイペースなはず。

それなのに、北からの南下部隊と鉢合わせたのが、森のちょうど半分くらいとは!

雪女らしき先鋒が見える。

ユキはもっと西寄りのはず。

「弁才天お姉様、ご機嫌麗しゅう」

ユキよりも小柄な身体は椿つばき

あなたが中央部にいるなんて。


「ユキお姉様から、弁才天お姉様の戦いから学べと申されまして……」

ユキの秘蔵っ子じゃない。

あの娘は余計なことを。

「弁才天お姉様と合流出来ました。

これから、どちらへ参りましょう?

西へ?それとも東でしょうか?」

当然、ユキのいない東よ。

「拠点の方へ向かいましょう」

内心を面に出さず、部隊を東へ向かわせる。

「ユキお姉様ばかり、良いところを盗られたくありません。

参りましょう」

ユキへの対抗心なのか、はたまた眷属内の地位争いなのか。

雪女の内情も単純ではないということね。


椿は雪ん子3人に、鬼や獣人、人を連れている。

「椿。あなた、後ろの子達にも戦わせてる?」

「いえ、わたくしが処理した方が早いので」

やっぱりね。道理で早いはずだわ。

「それじゃダメよ。

この班構成は考えられて編成されてるわ。

ちゃんと使わないと、あなたの評価も下がるわよ」

「えっ!?」

「同じ班の能力を把握してる?」

「あ……え…………いいえ」

「次の会敵は、あなたの班に譲るから、班員みんなでやりなさい」

「は、はい……」

椿はすぐに班員の下に行き、ペコペコと頭を下げている。

一人一人の能力も確認しているようね。

この素直さは評価出来る。


早速、コボルトと接敵した。

雪ん子がコボルトの周囲を凍結にかかる。

コボルトの足下が凍っていく。

これは良い作戦ね。

コボルトの姿が浮き上がるし、動きを鈍らせる。

堪らず、コボルトが雪ん子を狙って動き出す。

そこを盾持ちの獣人が割って入った。

鬼が雪ん子の前に立ち、守るようね。

普通の人と思われた人物が、呪文を唱え、火炎弾を生じさせ、コボルトを穿つ。

あれが魔法なのね。

攻撃魔法は初めて見たわ。

剣を持った獣人が一刀のもとに切り伏せて行く。

膂力が半端ないのね。

コボルトが防ごうと手甲を翳した腕を押し下げ、頭蓋を陥没させてる。

頑丈な手甲が有ろうと無かろうと同じ結果ね。

皆の手の回らないコボルトは、椿が氷槍で仕留めてたけど、まあ良いでしょ。

各人の能力をフルに活用した戦いでしょう。

戦闘を終了させると、椿がこちらをキラキラとした目で見つめてくる。

もう、仕方ないわね。

「合格ね。

ただし、今後も油断しないこと」

「はい!

弁才天お姉様の仰りたいことがわかった気がします。

とても有意義な一戦でした」

椿は雪女らしからぬ、満面の笑みを浮かべた。


その後も東へ進むと、キキと合流した。

「あら、キキじゃない。

医療班がこんな中央まで来て、大丈夫?」

「キュキュキュイ、キュオ」

相変わらず明確なことはわからないけど、大丈夫なんでしょう。

キキの背に回復スライムが乗っかり、同じ姿の鎌鼬が同行している。

「医療班は、鎌鼬と回復スライムのコンビが四組で一つの班を構成するはずよね?

残り半分の人達はどうしたの?」

「キュイキュイキュキュ、キュイキュイ」

「ええと、ケガ人が出たから置いてきた、とかですか?」

「キュオ」

「あなた、キキの言葉がわかるの!?」

椿がキキとコミュニケーション取れるとは。

「いつも妹達が、キキ様にはお世話になっておりますから、良くお会い致しますの」

まだ未熟な雪ん子が火傷したり、凍傷を起こしたりするらしいわ。雪女も大変ね。

「そう。

私の班は全員負傷無しよ」

「私の班も大丈夫です」

「キュオ」

了解、というのはわかったわ。


その時、キキが背後を振り返り、威嚇動作をし始めた。

「キキ様、いかがされました?」

「椿、すぐに戦闘体制を!」

まだ未熟な椿は仕方ない。

私ですら、キキが反応してくれなかったら、見逃していたかもしれない。

私は普段しない印を結ぶ。

すると、そこに大柄なモノが現れた。

「やれやれ。見つかってしまうとは」

そこにいたのは、体長4メートルほどの鬼だ。

いや、仲間の鬼にこんなヤツは見たことない。

こちらの世界のオーガというヤツか。

先ほどまで陰気など存在してなかったのに、今は溢れんばかりの妖気に似た嫌な陰気が流れてきた。

コイツ、たぶん強い。

「皆、少し下がれ!」

私が前に出る。


ーーーここから椿つばきの視点ですーーー


弁才天お姉様が九字印を切ると、とても大きな鬼が現れました。

鬼の中には隠形鬼というのがいます。あれがそうでしょうか?

それにしても、大きい。

椿の3倍くらいありそうです。

仲間が「オーガだ」と言ってます。

この世界独特の鬼なのでしょう。

弁才天お姉様が前に出られました。


「なんだぁ。

お嬢さんが相手してくれるのかぁ。

美人の相手は嬉しいけどよぉ、オレは後ろのちっちゃい嬢ちゃんの方が良いなぁ」

そう言って椿の方を見ながら、舌なめずりするオーガ。

全身に寒気が走ります。

ぜったい、イヤ!

雪女は男を取り殺す者だけど、あなただけは触れるのもおぞましい!


「このロリコン野郎!」

弁才天お姉様がキレながら、水流をオーガに当てます。

一つ、二つ、三つ。水流が渦を巻きながらオーガに当たります。

オーガは二つの水流をそれぞれの腕で防いでいましたが、三つ目は顔面に当たっています。

少し椿もお手伝いします。

オーガの顔周辺だけ氷結させます。

それを見た弁才天お姉様は、オーガの顔だけでなく、全身を水で覆わせていました。

その水球は渦を巻いているようでしたので、椿も中の水の一部を氷槍に変えてお手伝いしました。

「ナイスよ、椿」

弁才天お姉様は、お歳に見合わず、良く横文字をお使いになります。

椿も見習わないと。


氷槍がオーガの全身を傷つけ、顔の周りの氷で呼吸が出来なくて、オーガがもがいております。

それでもしばらくすると、オーガが氷を噛み砕いて氷結から逃れました。

でも、まだ弁才天お姉様の水球の中です。

オーガがその状態で、何かしようとしているのが見えましたが、水球の前でキキ様がクルリと回ると、オーガが水の中で転倒しました。

あれは何でしょう?

大妖と呼ばれる方々の成すことは良くわからないです。

さらにキキ様がクルクルと回ります。

不思議に思ってると、オーガの指が切れて水中を舞っているじゃありませんか!?

いえ、指だけでなく、角や足先も、手の平も舞っています。

オーガは叫ぶことも出来ず、ゴボゴボともがくだけ。

弁才天お姉様が腕を振るうと、オーガの首とお腹が切断されて、身体が三つに分かれていました。

全く理解出来ませんでした。


弁才天お姉様が術を解くと、オーガの切断された身体と大量の水が地面にぶち巻かれました。

「キキ、ありがとう。

椿もナイスフォローだったわ」

弁才天お姉様に褒められました。

「なぜかおぞましさに包まれて、身体が前に進みませんでした。

ごめんなさい」

「それは当然よ。

ああいう輩は私達が処理するから任せなさい」

「弁才天お姉様、キキ様、ありがとうございました」

「キュキュキュオ」

気にするな、と仰ってるみたい。

でも、大妖お二人の戦いを見られた。

まだまだだと思い知らされました。

大妖への道は遠いなぁ。


ロリコン魔王が現れた!

そのニヤケ顔に凍りつく椿姫。

そこへ颯爽と現れる勇者弁才天お姉様。

お供のキキ丸がダンスを踊ると、魔王がスッ転ぶ。

そこに勇者の剣が振るわれる。

一刀のもとに倒れる魔王。

「イエスロリータノータッチ……」

最後のセリフを吐いた後、魔王は昇天していく。

斯くしてロリータ姫は救われ、世界に平和が訪れたとさ。

チャンチャン♪

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