第53話 コボルト
今度の敵はコボルト。
雑魚のイメージとは違い、戦闘力も高く、隠行にも優れた種族。
一筋縄ではいかない模様。
次郎達が本腰を入れる。
鬼の一朗太と鈴蘭と一緒に大樹の屋敷前に来ると、もう集まっている者もいた。
サトリに召集を掛けてもらったのだ。
屋敷前で、一朗太に言ってコバルトの死体を転がしてもらった。
「人狼にしては小ぶりでありんすねぇ」
「どっちかって言うと、犬っぽいにゃ。
ねー、ヒーちゃん」
タマモとアヤメはヒルコをあやしながら、いつもの調子だ。
「我が眷属は、このような半端な変化はせん」
真神の鼻息がやや荒い。
「ふむ。手甲を着けているのか。
多少の知性はあるということか」
前鬼の言う通り、手甲を着けているが、武器は持っていない。
自らの爪が刃物代わりなのだろう。
「これが今回の敵ですか?」
後鬼がまっすぐ僕を見る。
「そう見ている。
敵対意思を見せたし、すでに大樹の森の拠点の西側を取り囲んでいる」
妖達の妖気が膨らむ。
「まずは、このまま待機。
原住民に確認したいことがある」
それから、さほど待たされることもなく、各種族のリーダー達全員と正義が揃った。
「まず、原住民の君達に確認したい。
コレはコボルトか?」
「はい。コボルトです」
「間違いねえな」
「ワシも同じじゃ」
「コボルトはコボルトなんですけどぉ、手甲を着けたコボルトは初めて見ましたぁ」
四人からコボルトだと確証出来た。
「え?」
「あん。ありゃ?
ホントに手甲着けてら」
「ジロー様よ。手甲を検分して良いか?」
頷くと、ドアンは屈んで手甲を検分し始めた。
「わかる範囲で良い。
コボルトの生態や生活様式など、知ってることを話して欲しい」
「コボルトは、基本的に群れを作ります。
狩りもそうですし、小さいながらも集落を作って、そこで生活します。」
ナターシャが代表して説明してくれる。
「ですが、武器や防具を持っているなど聞いたことがありません」
「森が生息地?」
「ヤツラはどこにでもいるぜ。
森でも草原でも。
俺は砂漠にいるコボルトを見たことあるぜ」
旅をしてきたハヤテが見たと言うなら、広く分布している種族なのだろう。
ドアンが立ち上がる。
「ジロー様。何匹狩った?」
「襲いかかって来たのは四匹。
全て殺した」
「ソイツら全員、手甲してたか?」
「してた」
「そうか……。
こいつは少し厄介かもしれんぞ。
コボルトに手甲を作る技術なぞありゃせん。
手甲を提供している何者かがおる」
少し皆がざわつく。
あとは会議室に行ってから、話しを続けよう。
会議室には、僕、サトリ、前鬼、後鬼、アヤメ、タマモ、真神、八咫烏、八岐大蛇、ヒルコ、牛頭、馬頭、弁天、ユキ、烏天狗、キキ、一朗太、鈴蘭の妖組。
そして、正義、ナターシャ、ハヤテ、ドアン、エリシャンテのヒト組。
合計23名が着席している。
他には、お茶汲みなどのフォローで、リントとミレイユがいる。
この二人は口が固く、今までも何一つ会議内容を外に漏らしたことがない。
二人で大変だが、宜しく頼む。
「さて、会議に入る前に、新顔二人に自己紹介をしてもらおう」
そう言って二人に顎で促す。
「ちゃんと立ちなさいよ、このバカ」
鈴蘭に耳を引っ張られ、立たされる一朗太。
「いてて。
んなこと言っても、作法なんて知らんぞぉ」
「いいから、シャンとして!」
「あ、あ~。
ワシ、一朗太ですわ」
頭を搔きながら、短く挨拶する一朗太。
「私は一朗太の妻、鈴蘭と申します。
宜しくお願い致します。
二人とも鬼の端くれとして、五百年を経ました」
鈴蘭はきちんと一礼して挨拶した。
「この二人と共に初見のコボルトを退治した。
また、二人はコボルトの発する陰気を感じることが出来る」
二人に着席を促す。
「まず、ヤタ。
コボルトには気付かなかったか?」
(あるじ……ごめんなさい。見逃した。)
「わかった。
責めている訳ではない。
八咫烏は見逃したらしい。
烏天狗はどうか?」
烏天狗は焦り気味に立ち上がる。
「はっ。
我らも見逃しました。
大変申し訳なく……」
「二人に責めがある訳ではない。
皆に言いたいことは、コボルトは八咫烏と天狗達の監視の目を逃れて、この拠点の目の前に現れることが出来る、ということだ」
場がざわつく。
それはそうだろう。
彼らの目を欺くことなど並大抵のことではない。
「だが、朗報もある。
一朗太と鈴蘭の二人が感知出来る。
先ほども二人の感知でコボルトを退治出来た」
おおっと言う声も聞こえるが、遮るように一朗太が発言する。
「な、なんとな~くしか、わからんのだけどもぉ」
「先ほど、コボルトの陰気とおっしゃいましたが、一朗太殿は何を感知してるのでしょうか?」
「妖気とは違うのか?」
正義の言に前鬼が続く。
「妖気とも違います。
陰の気が滲むと申しますか、どんよりとした中で黒い火が灯っているような感じです。
私よりも、一朗太はもう少し的確に捉えているようです」
ますますわからん、と言う組とさっぱりわからん、と言う組に分かれている。
「もしかしたら、陰陽道の陰気に近いのかもしれませんね」
後鬼の発言は、なるほどと思わせる。
「なら、あちきにもわかるかもしれないでありんすね」
「あたしはさっぱりにゃ~」
「あなたは、あんな立派な結界術を使いこなしておきながら……全くもう」
アヤメとタマモの平常運転に少し安堵する。
「皆の眷属の内、陰陽術に長けた者を防壁の上に集めて、様子を見させて欲しい。
それで感知出来る者を選別して」
正義を見る。
「攻撃に関してだが、遊撃の班編成を構築。
いくつ出来るかにもよるが、班ごとに感知出来る者を編成すること。
また、弓に長けた者が感知出来ると良いけど……」
チラッとナターシャを見る。
「な、なんとかしてみます!」
ナターシャなら、魔法でなんとかしてくれそうな気がする。
過剰な期待か。反省。
「あ、一朗太と鈴蘭は同じ班で遊撃ね」
防壁の見張り役していたことから、弓も達者なんだろうけど、実戦で二人の連携プレーを見ちゃったからなぁ。
使わないのは、もったいない。
ワシは弓の方が、と聞こえてきたが、鈴蘭に頭を叩かれる一朗太を見て、思わずくすりと笑った。
何はともあれ、まずは班分けだね。
会議後、みんなで西側の防壁の上に上がってみる。
そしたら、陰陽術が当たりだった。
前鬼と後鬼、タマモが感知出来た。
しかし、意識しないと感知出来ないので、コボルトの隠形が優れていると言わざるを得ない。
ナターシャがミレイユを連れて防壁の上に上がってきた。
そこで、ミレイユが一発で看破していたのに驚かされた。
何でも、位相をずらして存在感を薄くする魔法というのがあるそうで、位相のずれを魔法で感知していくだけだ、と言う。
ちんぷんかんぷんだ。
ミレイユの指導でナターシャが一生懸命魔法を習っている。
いや、ホント、ミレイユって、魔法界最強なのでは?
他には、牛頭と馬頭が成功していた。
さすがは鬼の統率者。
烏天狗も一度感知出来ると、次々見つけることに成功していた。
真神や八岐大蛇も出来るようだ。
あ、アヤメが防壁の縁にもたれ掛かってブーたれている。そっとしておこう。
八咫烏がそれに寄り添っている。
あとは、住民達の内、どれほど感知出来るか、だな。
今日の防壁の上が賑やかになりそう。
意外なことに、察知に優れたアヤメと八咫烏がコボルトを感知出来ません。
防壁の上から覗き込むのは良いけど、姿勢を低くして見つからないようにね。
先日、読者様から、「タマモちゃんが好き」とのご感想をいただきました。
とても嬉しく、モチベが上がりました。
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