表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/236

第51話 大樹の森の拠点巡回

新章の始まりです。

ここから毎日一話投稿に変えて行きます。

お昼の12時に投稿予定です。


これからは、格闘シーンも描写していきます。

お楽しみください。

皆さん、おはようございます。

この頃、朝はすっかり寒くなりましたね。

もうすぐ冬ですよ。

こんな時期に半袖なのは、ハヤテのバカちんくらいなものです。

アツアツな新婚は寒さを退けるのか?

見ているこっちが寒いわ。

というバカちんはさておき、僕は大樹の祭壇に手を合わせる。

管理者様と大樹さんを拝むのを忘れない。

願い事をするってより、感謝を捧げる感じかな。

神社に参るのと同じだね。

そうそう、お供え物の水とおにぎりは、毎日消えている。

大樹の森の拠点の七不思議だ。

僕も、『まあ、そんなもんか』で済ませている。

触れてはいけない領域なんだ、きっと。

まあ、良し。


僕は拠点内の巡回を始める。

まずは、ハウス栽培所から。

以前はキノコ栽培だけだったが、雪女達が来てから、大規模な施設に変わった。

キノコ栽培所にもやし栽培所。

どちらも暗所で湿度管理が必要。

もやしが意外と住民にウケている。

シャキシャキとした歯ごたえが良いし、炒め物から鍋物まで幅広く使えるのが良いよね。

また短期栽培で効率も良い。

水耕栽培で一週間で収穫出来るんだ。

最近では浅漬けにも利用してるみたい。

異世界を和食で洗脳するのさ。フッフッフ。


また拡張エリアがすごい。

こちらは果物各種からプチトマトやナス、キュウリ、シシトウ等々一つ成功する度に増えて行っている。

また、連作障害を避ける為、ハウス栽培では水耕栽培のみにしている。

試行錯誤の連続で苦労している。

だから、成功すると担当した者達の喜びは半端ない。

ちなみに、温度や湿度、風通しなどの管理は雪女の担当だが、栽培に勤しむのは普通の住民達だ。

中でも、鬼の従業員が意外と多い。

鬼というと、力仕事のイメージがあるが、農業そのものが好きな者も多い。


「あら、鈴木次郎様。

いらしてたんですね」

イチゴ栽培所で視察してると、ユキがやって来た。

「ああ、イチゴ栽培は初めてだから気になってね。

でも、順調そうで良かった」

「ええ、この冬にも実をつけるでしょう」

「リントも喜ぶと思うよ。

彼、果物好きだから」


あ、たぶん、ユキが固まっている。

元々表情が固まっているような人だから、違いが分かりにくいけど、たぶん、そのはず。

リントに言わせれば、表情がコロコロ変わる可愛い人だって言うんだけれど。

もう、リントを取り殺さないのはわかってる。ウチの諜報員は優秀なのさ。

固まったユキをそのままに、イチゴ栽培所を後にした。


次に、小麦畑に向かった。

もう概ね麦踏みも終わっている。

人力で踏むのは大変な作業になるが、代わりに大活躍してくれたのが、魔雄牛デビルブル

3頭の魔雄牛デビルブルにローラーを引かせて一挙に麦踏み完了となった。

農業従事者から、ますます魔雄牛デビルブルの人気が高まっている。

もう小麦の芽がちらほら見える。

こちらも順調のようだ。


野菜畑に踏み入れる。

こちらではスライム達が活躍している。

緑スライムだけでなく、各色のスライム達が巡回して、虫やカビなどを食べてくれる、という。

また、収穫の終わった畑に緑スライムが集まり、身体をしばらくプルプルと震わせては去っていくらしい。

何らかの連作障害対策なのか?

よくわからないが、好きにさせている。


隣の果樹園も覗いてみる。

こちらは、収穫の最盛期だ。

梨やリンゴにみかんや柿などなど、農業従事者がたくさん集って収穫している。


簡易足場を組み立てて、様々な種族が収穫をしている。

かごがいっぱいになると、地上にいる者がリヤカーに運んで、そのリヤカーを力自慢の獣人や鬼達が引いて洗い場まで持っていく。

洗い場担当は、一つ一つ丁寧に洗ってから、専用ケースに入れていく。

このケースは品目ごとに種類が違い、リンゴならリンゴが10個ちょうど収まるようになっている。

1ダースではなく、倉庫管理が把握しやすいように10個単位になっている。

そして、またここでスライムが登場。

水切り役のスライムだ。ついでに汚れも食べてくれる。

洗浄の終わったケースから倉庫へ持ち込まれる。

倉庫では、倉庫番の指定した箇所に収穫物を収めていく。

また、倉庫番の負担を減らす為、カウンターを持たせている。極力間違いを起こさない為に、ドワーフに開発してもらった。

この様子なら、果物も豊作だね。


演習場にも行ってみよう。

確か、今日は常備軍と警察の合同訓練をする予定だったはずだ。


お、いるいる。

格闘戦の訓練みたいだ。

演習場の中ほどまで足を踏み入れると、声をかけられた。

「お疲れ様です。鈴木様」

正義まさよしだったが……顔がアザだらけになっている。

「どうしたの?

正義まさよしがアザを作るなんて珍しい」

「いやはや、なんとも恥ずかしい限りです」

いつも爽やか青年が頭をかいている。

「今日は警察との合同訓練で、格闘戦なのですが、それを聞いた前鬼ぜんき様が指導教官になられて、全員この有り様です」

なにっ、前鬼ぜんきパパのしわざか!?


辺りに倒れた者が、あちこちそのまま寝ている。

「おや、ご主人様も訓練参加とは感心ですな」

そんなこと言ってませんが!

いやぁー!? 前鬼ぜんきに見つかった!


「マーリン、ご主人様と交代せよ。

下がってよろしい」

「やった~~~。交代、できるぅ~~」

マーリンもぶっ倒れた。


イヤイヤ前鬼ぜんきの前に立つ。

「今日は格闘戦です。そのつもりで」

絶対に見逃してくれないのはわかってるので、仕方なく構える。

「身体強化!」

身体が成長するのがわかる。

たぶん、今は17~18歳くらい。

また失敗した。が、いくらかマシだろう。


左手前のオーソドックススタイルでアウトボクシングをする。

時折入れるローキックは全てブロックされるが、ジャブは当たる。

前鬼ぜんきの踏み込みには大きくバックステップするかサイドターンで躱していく。

踏み込みと同時に突きか蹴りが来るから、その前に躱すのだ。

さらに前鬼ぜんきが踏み込んで左ストレートが来た。

そのタイミングで右手でパリィして、本来のサウスポースタイルにチェンジする。


前鬼ぜんきは身長が高いので、なかなか顔まで届かない。工夫が必要だ。

巻き込むようにパリィした前鬼ぜんきの左手に、自分の左手を添えて下方向へ導く。

サウスポースタイルなので、利き手の右腕が前だ。

その時点で後ろ足に力を込めて、身体が浮くほど前にステップ。

パリィした右手は下げず、その位置から捻りを入れて右ストレート。

前鬼ぜんきの顔面にヒット!


脳を揺さぶれたか?

チッ、そこまで至らなかったようだ。

が、すでに左ボディを入れている。

そのまま連打するが、他は全てブロックされていく。

前鬼ぜんきも受けに回るだけでなく、突きも出して来る。

その回転が徐々に速くなってきた。

前鬼ぜんきに当たるが、僕も時々喰らってしまう。

「未熟、未熟、未熟ぅ」

ああ、言ってみたいセリフその2を前鬼ぜんきに盗られたぁ。

オラオラは言えるタイミングはあるかな?

「その変化へんげまでもが未熟」

だんだん前鬼ぜんきの突きを捌けなくなってきた。

最後の前鬼ぜんきの前蹴りは見えていたので払ってみたが、軌道がわずかしか変えられなかった。

3メートルほど吹っ飛ばされた。

ぐうっ。効いたぁ。


「まあ、このくらいでしょう」

倒れそうになるのを意地で堪える。

「あ、ありがとうございました」

こちらが礼をすると、前鬼ぜんきも礼をしてくれる。

こういうところもきっちりしてるから、前鬼ぜんきはすごいと思う。


正義まさよしのところまでふらつきながらもたどり着く。

「同じ目に遭っちゃったよ」

笑いながら正義に話しかけると、彼は首を横に振る。

前鬼ぜんき教官がまともに攻撃を入れられたのを初めて見ました」

「アレ、狙ってたんだけど、わずかに躱されたのかもね。

僕と違って、本能で避ける人だから。

こっちも5ミリずらしたはずだったんだけどなぁ」

そう、僕は理詰めで格闘するタイプ。

格闘界じゃ珍しいかもね。


「それに、最後まで立っていられたのは貴方だけですよ」

そりゃ、以前はさんざん前鬼ぜんきに転がされたもんだよ。

あっちにゴロゴロ、こっちにゴロゴロと。タマモによく笑われてた。


正義まさよしは投げがあるんだから、投げちゃえ投げちゃえ」

「いえ、前鬼ぜんき教官の背丈ではなかなか難しいですよ。

今日も試しましたが、逆に投げ飛ばされました」

「ええ~、そうかなぁ。

正義まさよしならイケそうなんだけどなあ。

投げはタイミングって言うじゃん」

「それはそうですが……」


「よしっ、ちょっと立ち会おうか」

正義と向き合う。

「今から投げに行くから、正義まさよしは投げられないようにしてね」

そう言うと、正義まさよしの顔つきが真剣なものに変わる。

その前に身体強化を調整して、12歳くらいにする。

よし、こんなもんだろう。

擬似的に前鬼ぜんきとの体格差を表現出来るはず。


「では、始めるよ」

そう言って、正義まさよしに向かってスタスタ歩いていく。

正義まさよしは律儀に前襟を掴んで来る。

その腕を両手で掴み、クルっと回り、背負い投げの形に持っていく。

が、体格差で腰に相手の身体を乗せられない。

投げられまいと正義まさよしが踏ん張ろうとする直前に、すかさず左足裏で正義の膝を蹴り上げる。

「くっ」

正義まさよしの声が漏れる頃には、投げが終わっている。

地面に叩きつけたら、迷わず顔を踏みつける。

チッ、これは躱された。

「また恐ろしい技を……。

日拳にっけん(日本拳法)やってて良かったですよ!

他の者には踏みつけは止めてくださいね!」

ちょっと怒られた。

今度からは、正拳突きにしとこう。


「しかし、鈴木様の言わんとしてることは理解しました。」

「相手の重心の位置って、触れてさえいれば、正義まさよしもわかるでしょ?

また、大人の身体なら手で払っても良いよ」

掴み、フェイント、重心移動、担ぎ、投げは全てタイミングだからね。

「寝技は練習量だけど、打撃と投げはセンスだから。

正義まさよしはそっちの方が良いと思う」

「はい。ありがとうございました」

正義まさよしも礼をするので、こちらも答礼する。

演習場を後に、防壁の上に行ってみる。



日本拳法の大会では、よく救急車が来ます(笑)。

防具でガチガチに固めてあるのにね。

おそらく、徒手格闘の中では一番防具が固いと思います。

何せ、剣道の面と胴をそのまま使ってるんですから。

少林寺拳法の使い手の仲間が、試合で回し蹴りを多用してたら、足から血を流してました。

面の金属部位に頻繁に当たっていたんですね。

日本拳法の防具、恐るべし!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ