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第47話 蝗害対策会議

わかる方にはわかったかも?

レッドインパルスがムシャムシャ食べてましたもんね。

そういえば、昆虫食って次世代のブーム的なことを言われてから、何年も何十年も経ちますが、一向に広まりませんね。

自分も出張か何かで、伝統的なイナゴの佃煮しか食べてないです。

食べた感想は……昔過ぎて覚えていない……orz

大樹の屋敷の会議室。

八咫烏やたがらす以外の全員が出席している。

今回は緊急招集だ。


「緊急会議を始める」

進行役の前鬼ぜんきが宣言する。

烏天狗からすてんぐ

「うむ。報告いたす」

呼ばれた烏天狗からすてんぐは立ち上がり、懐から手のひらに収まらない程度のなにがしかを取り出した。

「まず、これを見ていただきたい」

烏天狗からすてんぐがそれを机の上に置く。

「ん?イナゴか?」

「いや、あの狂暴な顔つきはトノサマバッタか?」

「それにしてはでかいのぅ」

それぞれ自由に発言する。

「そして、もう一つがコレですわい」

烏天狗からすてんぐがさらに同じ大きさのバッタを取り出す。

それは最初のバッタと同じ大きさだが、黒く変色しており、頭と翅が大きく、脚が短い。


「相変異か!?」

思わず発言する。

相変異は、バッタが幼体時に密集状態で育つと起こる現象だ。

相変異で生体になったバッタは群生相と呼ばれ、非常に厄介だ。

群生相は群れで行動し、食欲旺盛で長距離を飛べるようになる。

集団で、草木類のありとあらゆるものを食べ尽くす。

雑食性が増すので、勘違いしたバッタが人間に集うこともまれにあると言う。

大樹の森が危険だ。

拠点内はアヤメの結界でなんとか出来たとしても、草原や森が食い尽くされれば、全ての生き物が全滅してしまうぞ。


八咫烏やたがらす様が到着なさいました。

お迎え致します」

リントがベランダへと繋がる扉を開けに行く。

会議室にはベランダが併設されており、八咫烏やたがらすはそこから出入り出来るようになっている。

会議室に入って来た八咫烏やたがらすは、大きなバッタを咥えている。

「ヤタ、それが成体なのか?」

少し声が震えていたかもしれない。

そのバッタの全長が1m近くあったのだ。

(でも……黒くない。……ごめんなさい)

「いや、十分だ」

この緑のバッタは単独行動を好む孤独相だが、成体となった群生相と大きさはほぼ変わらないはずだ。

また、この孤独相が群生相に合流すると、これもまた群生相に変化する。

「かなり大きなバッタですね。

わたし達エルフが元いた森では見たことがありません」

「ワシのいた北山近辺でも見たことないのぅ」

「エリ達もありませんねぇ」

ナターシャ、ドアン、エリシャンテは見たことないらしい。

「あ~、俺はある」

ハヤテが5年前のことを語る。

ハヤテは元いた疾駆はやがけ村の長の跡継ぎの継承条件に、一年間の放浪の旅の末帰還するというのがあったそうだ。

その旅の間で三つの村の全滅跡を見たらしい。

その壊滅した村のあちこちで群生相の死体が転がっていた、とのこと。

村から避難した人とも遭遇したが、もう三度目の被害で村を捨てた、とも言っていたそうだ。

そう、そこがこの蝗害の怖いところ。

毎年起こり得るのだ。


「では、全滅させるしかありませんな」

「所詮は羽虫でありんしょ?

あちきが燃やして差し上げましょう」

「我が吐息で殲滅してくれん」

前鬼ぜんきに続き、タマモと八岐大蛇やまたのおろちが息巻く。


あるじ様?

何か言いたげではありませんか?』

サトちゃんには敵わないな。

「全滅させるのは賛成なんだけど、ちょっとその方法を悩んでる」

「見つけたら叩く、じゃダメにゃの?」

アヤメがシャドーネコパンチでシュッシュッとしている様に少し癒される。

「間違ってないよ。

見つけたら殲滅して欲しい。

でも、出来たら幼体の内が良い」

成体を叩いていたら、手遅れなんだ。

それでは翌年の大発生が止められない。


「鈴木次郎様。

その蝗害とやらをもう少し詳しく教えて欲しい」

ユキが珍しく自ら発言してくる。

「ああ。確かに日本では蝗害が少ない国だからね。

過去の文献では、確か、大水害が起きると蝗害も発生しやすいだとか。

あとは、カビが天敵らしい。

日本でもそのカビで幾度も助けられたって。

ヒトが懸命に殺虫剤や爆弾まで持ち込んでも全滅させることが出来なくて、諦めて撤退したのに、カビの発生でその群生相が簡単に全滅した、というのが日本では有名かな」

「では、そのカビがあれば……」

「この世界に存在するかどうか」

ああ、というため息が誰しもから聞こえて来る。


「あとわかっていることは、バッタは地中に卵を産み付けるってことくらいかな」

みんなが静まり返っている最中、正義まさよしが手を上げる。

「正義、何か思いついたかい?」

「いえ、思いつく、というほどのことではありませんが。

もっと、単純で良いのでは?

ここには、雪女であるユキ様とその眷属の方々がおわします」

なるほど。

相手は昆虫だ。冷気に弱いに違いない。

「ユキ出来るか?」

「地中より這い出る発生地域がわかれば、その地中ごと凍らせてみせましょう」

ユキが笑った?笑ったよね?

氷の微笑って見分けつきにくい。


「なら、発生エリアの捜索が最初の仕事だね」

皆で役割分担していく。

捜索には、アヤメ、真神まがみ連合、八咫烏やたがらす烏天狗からすてんぐを含む天狗達。

アヤメと真神連合には地中に潜んでいそうなエリアの特定をお願いし、八咫烏と天狗達は発生してしまったバッタを個別に殲滅してもらう。

本格殲滅部隊は、ユキとその眷属を中心とするが、飛翔術を使える者達で後詰めを行う。

これで行こう。


蝗害こうがいって、イナゴだと思ってたら違いましたね。

バッタでした。

イナゴは相変異を起こしません。相変異になるのはバッタです。

蝗害こうがいを失くそうと爆弾まで使う人間って怖いですね。

世界よ、平和であれ。

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