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第38話 カレーライスを作ろう

今回はちょっとだけ長いので、投稿日を分けようか悩みましたが、ここまでが第2章なので、区切りよく本日も2話目の投稿となりました。

お楽しみください。

スライム達が住民に馴染んできた頃。

執務室の椅子から立ち上がり、

「よしっ、カレーを作ろう!」

高らかに宣言した。

「か、かれえ、ですか?」

お茶を入れに来たリントが呆気に取られているが、気にしない。

「そう、万人に愛されるカレーライスをだ!」

腕を突き上げ、天に向かってさらに宣言する。

ぜひとも、このまま「我が生涯に一片の悔いなし」と言ってみたいが……控えることにする。話が支離滅裂に成っちゃうしね。

「リント君、君も来たまえ」

「何やらわかりかねますが、お供致します」

さすがはリント。

ささっと片付け、優雅に一礼した後、僕の後を付いてくる。

屋敷を出るタイミングで、ミレイユさんも同行して来た。

「ジロー様の為さることは面白そうなので」

うんうん。きっとあなたの舌も唸らせてみせようぞ。


まずは材料の確保だ。

食糧庫へ行き、じゃがいも、ニンジン、玉ねぎをリントとミレイユと一緒に運び出す。

マッシュルームモドキも忘れない。

これは拠点内で栽培に成功したものだ。

わざわざ密閉した施設を作り、湿度は手作業だが、自動で温度管理が出来る栽培所を、ドアンが造り上げてくれた。

魔石を利用した魔道具で管理している。

ドワーフの技術は計り知れないね。

米ぬかや野菜の切れ端でマッシュルームコンポストまで作って、万全の体制だ。

リンゴ(アヤメが一番最初に採取してくれた果物)も確保。


次はお肉の保管庫だ。

こちらは冷凍庫なので、寒い。

が、我慢して目的のものを探す。

あ、あった。スジ肉。

やわらかく煮込むのにちょっと時間は掛かるが、僕はこれが好きなんだ。

とりあえずは屋敷の人達の分だけだが、大変だった。

運び込むだけで時間がかかってしまう。

そのタイミングで前鬼ぜんき後鬼ごきが屋敷に帰って来た。

前鬼ぜんきパパ~、後鬼ごきママ~、お帰り。

飛びつく僕を腕に抱えた前鬼ぜんきが首を傾げながらも、運び込みを手伝ってくれることに。

わたくしは下ごしらえを致しましょう。

ミレイユもこちらに」

笑いながら、後鬼は台所に向かっていった。


食材の運び込みを前鬼にお願いした後、僕はリントを連れて、薬草畑へ。

そこにアヤメがいたので、選別に協力してもらうことに。

ターメリックやコリアンダー、クミンなどに近いスパイスに使えそうなものを選んでもらい、一緒に運んでもらう。

これからゴリゴリしなければならない。


薬草を台所に持ち込むと、ミレイユさんの娘さんもいた。

じゃがいもの皮剥きを手伝っている。

「ミーシャちゃんも手伝ってくれてるんだ。ありがとう」

「ジロー様、今はダメなの。

ミーシャ、真剣なの」

じゃがいもから一切目を離さず、皮剥きに取り組んでいるようだ。

「後鬼マ……後鬼。

スパイスをすりつぶしたいんだけど。

あと、トウガラシも乾燥させて欲しい」

ちょっと言いよどんでから、後鬼にお願いする。

「はいはい。

でも、まず手を洗って来てね」

手を洗って戻ってくると、すり鉢とグラインダーが台の上に置いてあった。

子供の背では調理台が高くてやりにくそうだ。

一度深呼吸して、気力を練る。

丹田辺りが温かくなったと思った時に、ぐぐっと背が伸びる感触があった。

15、16歳くらいか?

ちょっと失敗。

あの22歳当時の姿にしたかったけど、まだコントロールが上手くいかない。

でもまあ、170cm近くあるからヨシとしておこう。

あ、そうそう、服は破れてないよ。

後鬼が伸縮自在の特別製の服をくれたんだ。

なんでも、この森に住む魔物の蜘蛛から取り出した特殊な糸で編んだんだって。

さすが、後鬼ママ。


それはさておき、スパイスの磨り潰しに取り組む。

コリアンダーっぽいものとクミンっぽいものを磨り潰す。

そこへトウガラシを乾燥させたものをを投入して、また磨り潰す。

その他良さげな薬草も次々投入しては磨り潰すことを繰り返す。

コリアンダーモドキを多めに、クミンモドキはそれより控えめに。

トウガラシの乾燥粉はそれらの半分くらい。あまり入れるすぎると辛く成りすぎてしまうので、注意が必要だ。

これでカレースパイスの基本となるはずだ。

あとのターメリックモドキなど様々な薬草は感性に任せて入れただけ。

もちろん、味見しながら。

一つ一つスパイスを分け、調理しながら段階に応じて入れてく人もいるけど、僕は一度で済ませるタイプなんだ。

日本の市販のカレールウと同じ感じかな。

今回はみんなで作るから、より簡単にしたかったというのもある。

「こんなもんかな」

ゴリゴリ終了。


今度はコンロに向かう。

鍋に油を投入する。

「あら、自分で作るの?」

「一鍋だけ」

そこへショウガとニンニクを投入。

軽く炒めた後、玉ねぎを投入してさらに炒めていく。

これはじっくり炒める。玉ねぎが茶色のメイラード反応を示すまで。

これが旨味と甘味に深みを出すから大事。


いよいよカレースパイスの投入だ。

カレーの良い匂いがしてきた。

そして、ジャガイモやニンジンも入れていく。

これは軽く炒めるだけで良い。

一旦鍋から離れ、小鍋を手にミレイユさんのところへ行く。

彼女がスジ肉を煮込んでアク取りもしてくれている。

そのスジ肉をゆで汁ごと小鍋に取り分け、先ほどの鍋に戻る。

ゆで汁とスジ肉を鍋に投入し、水を具材が浸るほど入れて、煮込んでいく。

僕は蓋をするがどちらでも構わない。

中火で20分くらい煮込んだら、一旦火を止める。

お玉で下から上へと、ゆっくりかき混ぜる。

日本式カレーっぽくする為、水溶き小麦粉を少しずつ入れ、全体に馴染むまでゆっくりかき混ぜて行く。

そうしたら、再度火を着けるが、弱中火くらいにする。

たまに味見をするが、ちょっと塩気が足りないので、塩も適量パラパラとする。

そして、果樹園で採れたリンゴを擦って汁ごと入れる。

あ、ミーシャちゃんもいたな。

小鍋に少しカレーを取り分け、そちらも火に掛ける。

リントに声を掛けてミルクを取ってきてもらった。

辛いものが苦手な人もいるかもしれないので、ミルク入りカレーを作り分けておく。

それから10分もしたら完成だ。

僕はさらにもう10分弱火にして煮込むけど。

頃合いと見て、火を止める。完成だ。


ふと他のコンロを見てみると、カレー鍋が四つ並んでた。

ミレイユさんの前の鍋もスジ肉からカレーに変わっていた。

「なんか不思議な匂いがするね」

ミーシャちゃんもお手伝いから解放されて、カレーを見つめている。


「ご主人様のコンロを空けてください」

後鬼の言われるままに、カレー鍋とミルクカレーの小鍋をコンロから退ける。

「このままだと、お米が足りなくなる未来が見えます」

そう言うと、米を冷水で研ぎ出した。

研ぎはしっかり行うが、冷水を入れての研ぎをもう一回で終了。

炊く前に、自らの氷術を使って氷を作って入れる手際。

手が冷たいだろうに、後鬼のこだわりを見た気がした。

コンロ二つ分のお米の追加になった。

それに、後鬼が作っていたカレーは寸胴鍋だ。

まあ、ウチは大食漢がたくさんいるので、ナイス判断だと思う。

僕の落ち度とも言う。

どこの家庭でも、カレーライスっておかわりするよね。

普段、ご飯のおかわりしない人でも、カレーライスに限っておかわりしたりしない?


夕食時に、カレー鍋や炊いたご飯を乗せたワゴンを、リント、ミレイユさん、後鬼と一緒に食堂に持っていく。

今日は鍋が多いからワゴンを追加して、僕もワゴンを押していく。

食堂では全員揃っているようだ。

プラス正義まさよし

正義は強制転移でこの異世界に飛ばされてきたので、カレーライスを食べたいのかも、と思い、サトリを介して呼んでおいたのだ。

「あ、次郎様が!」

「しまったにゃ!

あの後でそんにゃことになってたにゃんて」

アヤメは鼻が利くので、スパイス類を台所に運び入れると、一目散に退散していた。

アヤメは人化して、現代人にとけ込んでいたようなので、カレーをよく知っているのだ。

長時間あの匂いにさらされるのは苦手だが、カレーは好きと言っていた。

それよりも、アヤメがJKに扮してたことに驚いた。

いや、見た目はピッタリなんだけども。

いかんいかん。制服姿のアヤメを頭から追い出す。

今の僕は同世代に見えてしまう。

肉体年齢に引っ張られないように気をつけよう。


「今日はカレーだよ~。

いっぱい作ったから、おかわりもどうぞ」

正義がグッと握り拳を固めたのを見逃さなかったぞ。

海上自衛隊の金曜日カレーは有名だが、彼のいた陸上自衛隊でも週に一度ペースでカレーライスは出る。こっちは曜日がバラバラだけど。

自衛官たるもの、カレー好きじゃないと勤まらないのである。(持論)

「ミーシャちゃんはこっちね」

ミーシャちゃんにはミルクカレーをよそってあげる。

「ミーシャ、とくべつなの~?」

「そう。これはミーシャちゃんのために僕が作ったミルクカレーだよ」

「わーい。ミーシャ、ジロー様大好き」

こらこら、アヤメもタマモも睨むの止めなさい。

相手は幼い子供なんだから。


全員分のカレーライスが食卓にのぼった。

八岐大蛇やまたのおろちは手乗り龍サイズにしている。

元々大食いだから、食事の時はもっぱらこの方が良いそうだ。

「おかわりする人は自分でやってね。

あ、ミーシャちゃんと八岐大蛇やまたのおろちは僕がしてあげるから言ってね。

真神まがみもね。

では、みなさん、手を合わせてください」

パパパンッと手を合わせる音が響く。

「いただきます」

「「「いただきます!」」」


皆一斉にカレーライスをかき込む。

スプーンとお皿のカチャカチャ音以外静かなものだ。

八岐大蛇は八つ首全てで食べている。

あまり噛まずに呑み込んでいる。

龍だから大丈夫なのか?

真神も食卓の上の大皿をこぼさずキレイに食べている。行儀の良いヤツ。

真神は大柄だが、食卓の上がちょうど良い高さになっているようだ。

スッと正義が立ち上がる。

もうおかわりみたいだ。早い。

続いて前鬼ぜんきもおかわりしに行く。

僕も負けてはいられない。

あ、真神がもう終わりそう。

仕方なく、手を止め立ち上がろうとするが、隣の後鬼に肩を押さえられた。

「良いから、あなたは食べてなさい」

と耳打ちしてきた。

僕の代わりに真神のおかわりをよそってくれた。

後鬼ママ~。愛してる。

ようやく一皿目が終わって立ち上がった時に、ミーシャちゃんと目が合った。

「ミーシャ、待ってたの~。

おかわりいーい?」

僕より先に一皿目が終わってた、だと!?

「これ、おいしいねー。

ミーシャ、大好きになった~」

そんな嬉しい言葉に、ホクホクとミルクカレーをよそいに行った。


夕食の終わりを告げたのは、ご飯が無くなったことだった。

みんな、いつも以上に食べてたなぁ。

僕も少年時代の身体だったので、合計三皿の大盛カレーライスが胃に収容された。

一番食べたのは真神。

続いて前鬼。

そして牛頭ごず馬頭めずが続いた。

正義もよく食べた。ちょっとお腹が出てる。

驚きなのは八岐大蛇だ。

手乗り龍サイズなのに、僕と同じ三皿を平らげた。大盛で。

乙女達には触れまい。僕は紳士なのだ。

みんな、しばらく動けない状態だった。

後鬼だけは、食後のお茶を淹れてくれて、みんなに差し出していた。

お腹は苦しいけど、作って良かったな。カレーライス。

おいしかった~。

ごちそうさまでした。


…………ううっ、やっぱ、ちょっと食べ過ぎた。


自分が作る時は、市販のカレールウを使います。

今は市販品の種類が多くて悩んじゃいません?

で、結局いつもの商品を手に取ってるという(笑)。

最近はリンゴ半分をすりおろして入れることにハマってます。

ニンジンも半本だけすりおろしたものを入れてます。

そうそう、とろみを加えるには水溶き小麦粉(片栗粉)以外にもじゃがいものすったものでも出来るそうですよ。

あ……カレーライス、食べたくなってきた。


明日から3章を投稿します。

お楽しみに♪

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