第37話 スライムの活用法
謎の存在、スライム。
ヒルコ配下のスライムはさらに謎!?
スライム戦から二週間が過ぎた。
その間に、ヒルコ配下のスライム達のことが徐々にわかってきた。
まず、数が増殖している。
別に分裂しているとかではなく、野良のスライムが訪問して来るのだ。
わざわざ拠点の外門前まで来て、何をするでもなくじっとしている。
拠点内では、ヒルコがアヤメを連れて、スライムのいる門までやって来る。
タマモに抱かれていたり、アヤメが近くにいない時は、自ら空中を駆けてアヤメを探しまくる。
見つけると、アヤメを門前まで連れて来て開けてもらい、待機しているスライムを支配下に。
ヒルコが偉いのは、拠点の結界を張っているアヤメを同行させる点だ。
拠点は、人だろうが魔物だろうが、アヤメの許可無く入ることは叶わない。
よく理解しているようだ。
このように、なぜか野良スライムはヒルコを目指しやって来て、なぜかヒルコはそれを察知して門まで迎えに行く。
野良のスライムが全て集まって来ている訳でもない。
五匹来る日もあれば、一匹だけの日もある。
たいていは全く来ない日なのだ。
スライム戦の帰り、付いてきたスライムは10匹だったはずだが、合唱団の効果か、拠点に着く頃には倍以上に増えていた。
帰ってから、慌ててドワーフ達にスライム小屋を作ってもらったものだ。
今、スライム小屋を増築してもらっているが、何匹いるのかわからない。
50匹いないと思うが……いずれ超えてしまうんだろうなぁ。
僕もちょっと興味があったので、このスライム達を調べてみることにした。
まず、誰が触れても危険がなかった。
人に触れられても溶解液を出さない。
ヒルコがいなくても、「溶かせ」と指示を出すと指定物のみ溶かし始める。
カスも残らないので、彼らにとって食事と同じなのかもしれない。
それどころか、生物は排せつ物を出してしまうので、スライムの方がエコだ。
スライムは、ファンタジーでエコロジーな存在ということがわかった。
次に、溶解出来る物を調べてみた。
植物、肉の切れ端、欠けたカップ、割れた食器、石、土、水などなど与えたが、全て溶かしていった。
有機物無機物問わず溶解出来るようだ。
いや、水を与えた時の様子が飲んでいるようだったので、摂取と言った方が正しいのかもしれない。
また、溶解速度が一様に早い。
先日の問題スライムよりも早いくらいだ。
警戒色も出さない。
その次に、スライム達は各々特徴的な色をしているが、その色ごとに違いを調べることにした。
溶かす対象物に違いは無く、個々で溶解速度が違うくらいで、色での違いは無かった。
溶解速度にバラつきがあるのは、個々の成長度合いの違いだろう。
ちょっと悩んで、赤色のスライムを抱き上げ、「何か違いはあるの?」と、ふと聞くように呟いた時だった。
突然そのスライムが火を吹き出したのだ。
危なっ!
思わず、両手で赤色スライムを掴んで身体から遠ざけた。
ヒルコが飛んで来て、その赤色スライムを触手で叩き始めた。
バシッバシッと二度三度叩くので、
「もういいよ。大丈夫だったから」
そう言ってから、赤色スライムを見ると縮こまっているようだったので撫でてやる。
「おまえも言われた通りのことをやっただけだもんな。
でも、危ないから、これからは人に向かって火は出さないようにね」
ピピッと返事してたから、大丈夫だと思う。
ヒルコの方が大変だった。
折檻を止めた後すぐ僕の肩に乗り、触手を伸ばして、僕の顔やら髪の毛やらを必死にまさぐりだし、身体も伸ばしてマフラーのように首に巻き付いてきた。
「げほっ、大丈夫だって。
ブフッ、どこも火傷して……ぐっ……ないよ」
「ほらほら、ヒーちゃん。
次郎様も大丈夫だって言ってるにゃ。
心配にゃのはわかったから、それぐらいで、にゃ?」
アヤメがヒルコを引き剥がしてくれた。
小屋の中じゃなくてホント良かった~。
もし小屋の中だったら、天井まで届いていたであろう勢いの炎だった。
「ジロー様。その火は魔法の残滓が窺えます」
一緒にいたナターシャが言う。
「へぇ~。魔法が使えるスライムなんて、いるんだね」
「「いません!」」
ナターシャだけでなく、同席していたエリシャンテまで訴える。
「え?じゃあ、新種?」
「仰る通りだと思います。
どの文献にも、スライムが魔法を使えるなんて載っていません」
胸を揺らしながら、エリシャンテが補足してくれる。
それから、各色のスライムに魔法を出してみてもらったところ、青色は水、黄色は風、茶色は土など、色のイメージにあった魔法を使ってみせた。
ちょっと面白いのが、緑色のスライム。
こいつは、魔法をお願いすると、自分の周りに芝生を生えさせたのだ。
農業チームに編入することが決定した瞬間だった。
さっきの赤色スライムを呼んで、火以外の魔法を出せるかどうかを試してみたが、火以外はダメなようだった。
わからないのは無色透明のスライム。
通常のスライムは色が濁っており、ウチのスライム達は透き通った各色をしているので、見た目で判別も出来る。
この無色透明のスライムはウチのスライム集団の中にいても、一目で違いがわかる。
いや、スライム達が山積みになると、逆にわからなくなるかもしれない。
そんな無色透明スライムだが、なかなか魔法が出ないのだ。
いや、僕らが識別出来ないだけかもしれない。
魔法はよくわからない。
そんなところへ、巡回中の正義が来た。
「どうしました?」
そう問いかける正義に、これまでの検証結果を告げる。
正義は、腕を組んでしばらく考えると、懐からナイフを取り出した。
「では、こうしてみましょう」
言ってすぐに自分の指をナイフで切付け、無色透明スライムにその指を掲げる。
「治せるか?」
そう言った正義の指を取り込んだ無色透明スライム。
さほど時間もかからずに正義から離れていくと、指の傷がすっかり塞がっているではないか。
「当たりですね。
ヒルコ様配下のスライムが魔法を使えないはずが無く……。
また、痛みも消えております」
無色透明スライムも凄いが、君もスゴイよ!
躊躇無く自傷行為が出来るなんて。
ちょっと想像して、背筋がゾワッとした。
優秀な医者が仲間になってくれましたね、と笑う正義のイケメン度合いが上がった出来事となった。
各色のスライムの検証が一通り終わったので、仕事を振り分けることとした。
スライムとは言え、働かざる者食うべからずだ。
早速、緑色スライムと茶色スライム、青色スライムは農業チームへ。
緑色スライムの一部は牧畜チームにも行ってもらう。
赤色スライムと黄色スライムはドワーフ達の工房へ。
ただし、食事時前は共同炊事場で着火と火力調整役として、調理に協力してもらう。
青色スライムの一部と無色透明スライムは、これから作る診療所勤務とする予定だ。
今までは、僕の他にドラド族のおばばやエリシャンテが治癒が出来る為、個別で対応していたが、良い機会なのでいっそ診療所を作ろうと思う。
ドワーフ達はまた忙しくなるな。
余談
「今日、ヒーちゃんにママって言ってもらったにゃ」
「あら、あちきもよ。
ヒーちゃんの(……マ…マ)というのが、舌っ足らずでホンに可愛いでありんす」
『念話で舌は使いませんよ』
キャーキャー言ってるところにサトリが介入する。
アヤメとタマモが驚いて、動きが止まる。
「サ、サトリ。
驚かせないで欲しいでありんす」
「ビクッとしたにゃ!」
人化していた二人に尻尾が生え、尾の毛が膨らんでいる。
『そう邪険にしないで。
良い情報を持ってきましたから』
「何よ!」
「にゃによ!」
つっけんどんな返答しながらも、前のめりになる二人。
「ヒルコが主様をパパと呼称したようですよ」
「にゃ!それはまるで……」
「次郎様がパパであちきがママ……」
嬉しさのあまり抱き合う二人。
『フフッ、それではまた』
微笑むサトリの存在感が消えていく。
どのスライムもお仕事が出来て、良かったですね。
喋りはしませんが、歌うことは出来ます。
そう言えば、作者の苦手な授業は音楽でした。
だって音感ありませんもん。
その割に、大学でバンド組んでボーカルでした。
なぜかって言うと……全ての楽器にセンスが無さすぎて、「おまえ、ボーカルね」の一言で決定しました(笑)。事実です。




