表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/208

第35話 スライム戦

さて、今度の敵はスライム。

どう攻略していくのか。

お楽しみください。

会議の翌朝、拠点の東門を出て、部隊を湖に向かわせる。

その前方を真神まがみの眷属狼達が先行していく。

草木に紛れるスライムを索敵するために。

見つけると、吠えて教えてくれる。

アヤメと八咫烏やたがらすだけは、自分で見つけてスライムを退治していく。

全員、順調のようだ。

特にスライムから襲いかかってくることも無いので、良いようだ。

やはり、湖に近づくにつれ、スライムの出現頻度が増えていく。

湖に到着していないのに、もう100匹以上は退治したはずだ。

もしかしたら、湖周辺には千匹以上いるのかもしれない。

「この戦略は見事ですね。

行軍速度が予想以上に早い」

「戦略というほどでもないでしょ」

正義まさよしが感心している。

真神まがみの眷属狼が優秀なこと。

そして、湖に近づくとスライムが増えていくが、スライムへの攻撃がどんどん最適化され、みんなの殲滅速度が上がっているのだ。

「戦闘チームに、魔力を温存するように指示しておいてよ。

湖に到着するまで、あと少しかかるから」

「抜かりはありません。

ツーマンセルを組ませ、スライムへの攻撃は交互に行うよう、出発前に命令してあります」

さすが元幹部候補生。


それからしばらくすると、湖が見えてきた。

「おやおや、うじゃうじゃおりんすねえ」

「げげっ、湖の周りに居すぎて足の踏み場もにゃいにゃ」

「かえって好都合というもの。

この位置から火を吹いても、森が延焼する事もあるまいて」

八岐大蛇やまたのおろち数多あまたの頭から炎を吐き出す。

タマモも鬼火を大量に召還し、スライムの群れへと落としていく。

前鬼ぜんきが水辺の砂浜を針の山に変えていくと思えば、後鬼ごきは雷を降らせる。

八咫烏の全身が神々しく光輝いて、低空を滑空すると、その真下にいたスライムが次々と消滅していく。

牛頭ごずは竜巻を起こして大量のスライムを巻き込むと、馬頭めずがそこへ強酸の雨を降らせ、スライムを溶かしていく。

強い溶解液を出すスライムが、逆に溶かされていくほど、地獄の酸は強力みたいだ。

戦闘チームがあやかし達の取りこぼしをしっかりカバーしてくれているみたい。


アヤメがヒルコを抱いてこちらに合流して来る。

「にゃにがあるかわからにゃいから、こっちで待機するにゃ」

「我もお側に控えておきまする」

真神も眷属狼達を統率しつつ、僕の背後に来てくれた。

あやかしの予備員は作っておきたいところ。良い判断だ。

(……あるじ……あるじ)

(どうした、ヤタ)

(………………湖のヌシ……現れた……)

「なにっ!このタイミングでか!」

思わず叫んでた。

八咫烏が円を描いて飛ぶ真下を見ると、その湖の水面が盛り上がる。

「サトちゃん、全員に注意喚起!

湖面の湖のヌシに気をつけよ、と」

『ただちに』


サトリに指示しながら湖のヌシに注目する。

水辺から100mほどの水面から現れたのは、巨大なスライム。

5mくらいの大きさが水面から顔を出している。全長は10mぐらいか?

「タマモ、焼け」

「はいな」

タマモが巨大スライムと同じくらいの鬼火を生むと目標に向かって飛んでいく。

着弾すると、大きな水しぶきが発生し、辺りを雨に変える。

「タマモの鬼火が当たったのに、平気にゃ」

「平気という訳ではなさそうだな。

全身に警戒色が浮かんでおる」

タマモの特大鬼火が当たったのに消滅しないでいられるのは凄いが、真神の言う通り、警戒色が出っぱなしなのは、効いている証拠だ。

「なんにゃ?ヒーちゃん大人しくしてるにゃ」

アヤメの方を見ると、ヒルコがまた身動みじろぎして発色している。

「ヒルコ、行くか?」

ヒルコの発色がより鮮やかになっていく。

「わかった。一緒に行こう」

イヤイヤするアヤメから少し強引にヒルコを受け取り、巨大スライムへと歩き出す。

「お供します」

正義も付いてくる。

「ニャーニャー言っておらず、我らも行くぞ」

どうやら、アヤメと真神も付いてくるようだ。


「正義。使ってみせよ」

八岐大蛇がそう言い、別の頭から何かを正義に向かって吐き出した。

正義は少し飛び上がってそれを受け取る。

「これは……もしや、草薙くさなぎつるぎか!?」

正義が手にしたのは直剣だった。

特に装飾もなく少し武骨な剣だが、刀身が黒く鈍く光っている。

「八岐大蛇様。ありがたく!」

草薙の剣を頭より高く押し戴いて一礼する正義。

そんなやり取りにも足を止めずに進む。


水際まで来ると、

「タマモ、打ち方止め」

短く号令する。

タマモから「あ、ヒーちゃん」と聞こえてきたが、無視して巨大スライムを待つ。

ほどなく巨大スライムが上陸して来る。

お互いの距離が数メートルまで近づくと、巨大スライムが触手のようなものを伸ばしてくる。

触手がこちらに届く前に、正義が草薙の剣で切り払う。

見事に両断する正義の腕前にも感心するが、草薙の剣が少しも溶かされていないのも凄い。

ポタポタと巨大スライムの体液を滴らせているにもかかわらずだ。

「ご安心ください。御身おんみかすれさせることは決してありません!」

草薙の剣を下段に構えながら、正義が宣言する。

後ろから、アヤメの結界と真神の振動波もフォローしてくれている。

「ヒルコ、行っておいで」

ヒルコを地面にそっと降ろしてあげる。

そこからのヒルコの動きは素早かった。

巨大スライムは触手を次々と伸ばして攻撃してくるが、高速弾と化したヒルコが全て食い破っていった。

そう、文字通り喰らっているのだ。

また、ヒルコは何もない空中で方向転換もする。

まるで、空手の三角飛びだ。

地に降りた時にザッと音がするが、もうそこにはいない。目にも止まらぬ早業だ。

伸ばした触手もそうでない身体もどんどん削り取っていくヒルコ。

瞬く間に巨大スライムの体積が半分ほどまで縮まると、昨日の会議室での出来事が再現された。

縮まったとは言え、全長5mほどもある巨大スライムを覆う大きさに広がるヒルコ。

そして、飲み込んだヒルコはぜん動運動を繰り返す。

しばしの静寂後、ヒルコの身体がしぼんでくる。

消化スピードも早い。

ヒルコの戦いは終始静かなものだった。

周りの方が騒がしいくらいだ。


元の大きさに戻ったヒルコが一度プルッと身震いし、こちらに向かってくる。

ヒルコを抱き上げ、

「ヒルコ、お疲れ様。

よくやったね」

ヒルコの表面の光が、色々な色彩を放ちながら流れていく。

嬉しそうだ。

「ヒーちゃん!」

タマモが、僕からヒルコを引ったくるように奪っていった。

「大丈夫なの?

ポンポンは痛くない?」

タマモは、ヒルコに関してのみ心配性になるね。


その後、戦場全体が静かになった。

戦闘チームがスライムの生き残りがいないか、捜索して回ってくれている。

「ようやく終わったようですね」

正義が長く息を吐きながら告げてくる。

「負傷者をここに集めて。

僕が治療するよ」

スライムの溶解液を浴びた者が多少いた。

治癒ちゆは僕の数少ないスキルだからね。こういう時に活かさなきゃ。

「ご主人様。もう一仕事して参ります」

前鬼がそう言うと、後鬼を連れて戦場跡を順繰りに廻り出した。

治療をしつつ、そちらの方を窺ってみると、何やら粉のようなものを撒いてた。

その後に、後鬼が土遁どとんの術でその粉と土を混ぜ込んでいる。

「アルカリを散布しているのでしょうか?」

正義の疑問と同じことを想像した。

やっぱり中和だよね。まあ、前鬼と後鬼のやることだ。悪いことではあるまい。


治療も一通り終わった時、タマモに抱かれているヒルコが触手のようなものを伸ばし、僕にちょんちょんとしてくる。

ヒルコ、君も触手?出せるの?

今、覚えたのかな?

っと、それより呼んでるようだったので、そちらへ向かう。

「どうした?」

僕が言うより早く、赤子の頭ほどもある丸い何かを吐き出した。

それを触手で僕に差し出してくる。

「魔石にゃ!」

どうやら、先ほどの巨大スライムの魔石らしい。

「スライムに魔石があるなんて!」

ナターシャが言う通り、通常のスライムから何も採取出来ないことから、狩人泣かせの異名があるほどだ。

それほどあの巨大スライムが異常だったと言うことか。

後ほどドアンに渡した際に、「これほどキレイに丸い魔石は初めてじゃ。しかもこの大きさ!」と驚かれ、スライムから出たものだと説明すると、顎が外れんばかりに口が開きっぱなしになっていた。


今日は疲れた~。

帰っておいしいごはんを食べよ~っと。

ヒルコ、大活躍ですね。

大樹の森のアイドルは強かった!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ