第32話 変身?
子供の頃、仮面ライダーの変身ポーズってやりませんでした?
女の子だったら、魔法少女の変身または呪文のポーズかな?
ちなみに、下の☆はログインすると付けられるようになるはずです。確か。
収穫は数日続く。
狩猟チームはその間、収穫の手伝いを続行してもらう。
お肉は貯蔵庫にいっぱいあるので大丈夫。
農業チームは、秋の収穫が終わっても、小麦の種まきが待ってる。
小麦に関しては、一度種まきしてしまえば、1ヶ月後の麦踏みまでやることはないので、管理は楽な方だ。
こちらは来年の初夏頃の収穫予定。
冬になれば冬野菜の収穫だ。
まあ、順繰りにだね。
冬対策もそろそろしていかなきゃいけないな。
大樹の森がどれくらいの寒さになるか、だれも知らないのだ。
ドワーフ達は北山の麓に住んでいたが、大樹の森を避ける位置に集落を作っていたらしい。
かなり離れているので、彼らも正確なことは言えないと言う。
なんでも、彼らはこの森を魔獣の森と呼んで、危険視して決して足を踏み入れなかった。
では何故こちらに避難してきたかと言うと、大樹を目指して来た訳ではなく、僕らが上げた炊飯の煙を目標に来た、とのことだった。
まあ、冬支度は早め早めにすることに越したことはない。
それに、ここに来てまだ一年目。
何があるかわからない。
管理者様と大樹さんを拝んどこ。
秋の収穫も一旦一区切りつき、小麦の種まきを終えた頃、戦闘チームと屋敷の従事者には乗馬の練習をしてもらうことになった。
僕も練習する。
前鬼と後鬼、それにタマモが経験者なので、先生役だ。
ドラド族には経験者がいたが、鐙を使ったことがないと言うので、生徒側に回ってる。
そう、どうやらこの異世界では鐙が浸透していないらしい。
ドワーフ達も知らなかった。
前鬼が絵を描き(これがまた非常に上手い)、ドワーフ達に説明して製作してもらったのだ。
5歳児の身長では、馬に跨がることは出来ないんじゃないかって?
そういう時のための身体強化なのさ。
軽いジャンプで鞍の位置にさっと跨がる。
どんなもんです。颯爽としてるでしょ。
……あ……鐙に足が届かない。
くっ。足が短いんじゃない。身体が小さいんだ。もう。
周りにクスクス笑われながら、と・ど・けーってやってたら、不意に足裏に鐙の感触が。
やったね。って、あれ?全員唖然としてる?
よく見れば、僕の服がビリビリに裂けてるよ。
『後鬼、服を!』
ハッとした後鬼が慌てて手を振るう。
一瞬で破れた服が新しいものに変わる。
まだ皆が呆然状態から抜け出せない中で、後鬼が馬を寄せてくる。
「ご、ご主人様…………お手に触れてよろしいでしょうか?」
恐る恐るという感じで後鬼が言ってきた。
「え?ああ、もちろんいいよ」
そう答えると、後鬼はおずおずと手を伸ばしてくる。
よくわからないままだが、こちらからも手を伸ばして、後鬼の手を握る。
「おおお……我が子がこれほど逞しく……」
涙ぐんで声が震えてる。
そこで前鬼を見やる。
前鬼も一瞬ハッとした様が見えたが、すぐにそばに来た。
「鏡ある?」
前鬼は、聞くとすぐさま鏡を取り出し、こちらを写してくれる。
そこには大学の頃の僕がいた。
四年生くらいか。
その頃が訓練や武道で、身体能力が一番充実していた時期だ。
身体強化ってすごいものなんだな。
細胞が記憶しているのか?
確かに22歳の時に、自衛隊の体力検定で特級をマークしたが、その頃のままだ。
「前鬼、ありがとう。
鏡、もういいよ」
「はっ」
前鬼が鏡を仕舞い、後鬼の肩に優しく手を置く。
「おまえも畏れ多いぞ。ご主人様だ」
「ああ……大変失礼致しました」
名残惜しそうに手を離す後鬼。
「いや、良い。
僕も後鬼は母親だと思ってる。
もちろん、前鬼が父親だ」
生前、親からは愛情というものを受けたことがなく、全て独りで物事に当たるようになっていた。
しかし、前鬼と後鬼と会ってから、親というものはもしかするとこんな存在なのか?という疑問がついて回った。
二人には、こちらの方こそ、恐る恐る近付いて行ったもんだ。
今は甘えることも少しずつ覚えた。
「よし、これなら鐙に体重を掛けられるから、走らせてみたい」
「まずは基本の歩きが出来てからです。
馬の方も初めてなのですから」
後鬼が柔らかな笑顔で教えてくれる。
基本の歩き方が3種類あるそうだ。
常歩→速歩→駈歩の順に、馬と一緒に学習していくことが大事なんだと。
これ、軍事教練とおんなじじゃん。
また、別に襲歩というものがあるが、競走馬が使う歩法なんだって。これは馬と自分が慣れて、関係性が出来てからとのお達し。
うん。基本は大事だね。
僕も物事全般、基本をしっかりすることが癖付いている。
地味なことが、あまり苦痛に感じたことがないんだ。育った環境のせいかな。
乗馬を続けてると、手綱を通して、馬も楽しんでいる感情が伝わって来た気がする。
この馬は、馬頭が最初に連れて来たリーダーだ。
群れが三つまとまったが、その全てのリーダーに治まっているとのこと。
自尊心が激しく苛烈な性格だが、反面非常に仲間想いでよく目を行き渡らせてる、と馬頭がやや自慢気に語っていた。
僕とどこか似た者同士かもね。
幾度かの休憩の度にコミュニケーションを取り続けた。
ある程度は信頼関係を築けたはずだ。
そうそう、「名付けて良いかい?」と聞いたら、ヒヒンと返事したので良いと思う……良いよね?
(一応、馬頭を仲介人として呼んでおいた。)
「おまえの名前は、レッドインパルスだ」
もちろん、元ネタは航空自衛隊のエースパイロット集団のアレからだ。
赤毛に爛々とした赤目、大きな体格。
名は体を表す通り、赤い衝撃そのものだ。
レッドインパルスを見ると、ブルルっと良さげな雰囲気。
(馬頭からも「好印象でありますですはい」と聞けたので、ホッとした。)
一緒に襲歩出来ると良いね、レッドインパルス。
乗馬訓練が終わり、魔馬を馬小屋に収めた帰り道、南門をくぐり抜けると5歳児に戻っていた。
唐突だなぁ。
今度は服がブカブカで歩き辛い。
後鬼ママがまた手をピッとやると、ピッタリサイズの服に早変わり。
マジックショーの早着替えみたいだ。
クセになりそう。
「服を考えねばならぬか」
前鬼に変身をコントロール出来るか尋ねられたが、まだ調整が儘ならない。
「私がご主人様の服をご用意してみせます。しばらくお待ちを」
後鬼が努力してみせると言う。
「もう次郎でいいよ。
前鬼パパも後鬼ママも」
「なりません。皆に示しがつきません」
前鬼がピシリとたしなめてくる。
「ええ~。じゃあ、3人だけの時は?」
「そ、それなら……まあ」
言質獲ったり~。
前鬼と後鬼の両方と手を繋いで歩く。
「や、今は……」
「良いじゃない。今は幼き子であることは間違いないわ」
『私は賛成ですよ』
「サトリが言うなら……」
前鬼を見上げると、斜め上の方向を見ている。何も無いのにね。
(「照れているのですよ」)
後鬼が笑いながら耳打ちしてくる。
今日の夕ごはん、何かな~?
とうとう変身?しちゃいましたね。
コレ、プロットにあったっけ?
まあ、いいや。面白ければそれで♪




