第29話 マサヨシとエリシャンテ
マサヨシはプロット上にある人物でしたが、エリシャンテは執筆してたら出てきた人物です。
高齢のおばばを動かすのも忍びなく、生まれたのです。
武闘大会の翌日、選抜戦闘チームを選考する前にマサヨシを屋敷に呼び出した。
面会の際には、前鬼と後鬼、サトリにも同席するようにお願いした。
執務室の扉がノックされる。
「どうぞ」
短く返答する。
「入ります!」
気合いの入った声を発するマサヨシ。
パッと扉を開け、素早く入室し、扉を締める際に僕らに背を向けて一度ピシッと気をつけを行う。
そして回れ右をしてから、僕の方に正体し、一礼する。
礼が直ってから、
「ドラド族所属、佐藤正義。
鈴木次郎様の召還に応じ、参上致しました!」
全てがキビキビしている。
「ご苦労様です。
まずはそちらにお掛けください」
ソファーを指し示し、僕もそちらへ移動する。
「はい。失礼致します」
正義氏は、律儀に僕が先に着座するのを待ってから、ソファーに腰掛ける。
「え~と、佐藤正義さん。
あなた、日本人ですよね?
しかも自衛官」
いきなり確信をつく。
「はい。3等陸曹でした」
3等陸曹だが、部内幹部候補生に合格し、幹部学校に在学中に異世界転移してしまった、とのこと。
24歳で幹部候補生なら一選抜も同然じゃないか。しかも陸曹上がり。
防大出身者は最短で22歳で3尉に昇任するが、それは学業によるものとも言える。
曹階級出身者は実力を伴っており、モノが違う。
佐官、尉官は別の国だが、曹官に自衛官を設定すると世界最強の軍隊が出来上がる、等とまことしやかに言われることも。
さらに話を聞くと、転移した直後に魔物に襲われている親子を目撃し、武器を何も持っていないにも関わらず、魔物を撃退したそうだ。
素手で魔物を撃退。しかも転移直後で。
なかなか出来るもんじゃない。
それを切っ掛けにドラド族に合流したそうだ。
ドラド族の街を襲撃する魔物退治を生業とし、一ヶ月もするとおばばから正式にドラド族の一員と認められ、現在に至る、とのこと。
また、転移する際、女神らしき存在に「勇者よ。この世界をお救いください」と懇願されたらしい。
女神?何それ?
そもそも口調が管理者様と大いに違う。
また、ハテナな存在が出てきたよ。
サトリに念話で確認したが、嘘偽りは無いようだ。
「わかりました。
佐藤さんも大変な目に遭いましたね。
それで、佐藤さんがお嫌でなければ、こちらでも似たようなお仕事をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか?」
子供の頃からヒーローに憧れ、誰かを守ることを使命としたくて自衛官になった正義は、二つ返事で頷いてくれた。
「ここでは一応僕がトップとなっていますが大丈夫でしょうか?」
「何を仰いますか。
これまでの振る舞い、治療中の采配を見ていれば、ただの幼児とは思えません。
おそらく、私よりも年上の方かと推察致します。
また、お名前から察するに私の同郷の方。であれば、転生者でないと説明がつきません」
優れた身体能力だけでなく、柔軟な思考も持ち合わせているようだ。
「見た目こんなだけど、君の倍は歳を往ってる。
これからは年上として接することにするよ。
頼もしい後輩が出来て嬉しいよ。
これからよろしく」
握手した後、自衛隊式退室礼もしっかり行い、正義は退室していった。
「軍人でしたか。
良い人材と思います」
前鬼が書類にチェックしながら言う。
「上官の前だとちょっと堅苦しいかもしれないけど、自衛官やってると公私の区別がはっきりしちゃうんだよね。良くも悪くも」
『個人の経歴や思想も洗いましたが、問題無いかと』
さすがはサトちゃんのリーディングだ。個人情報なんて無きに等しい。
「でも、また一つ問題が出てきたね」
「女神の存在ですね」
後鬼が厳しい口調で言う。
「どうも僕がお会いした管理者様とも違うようだし……。
まあ、どちらがどうという訳でもないから、一旦は棚上げしようか」
『では、このまま選考を進めましょう』
ナターシャ、ハヤテ、ドアンも呼び出し、会議室に移動して、皆で住民の担当を振り分けを行うこととした。
それから午前中いっぱい掛けて、選抜戦闘チームを8名まで絞り込んだ。
隊長を佐藤正義とし、リーリンやその対戦相手だった土魔術師マフティなども加わった8名を選抜した。
別に、ナターシャとハヤテは臨時隊員として、有事の際には正義の指揮下に入ることとした。
これで10名のチームになる。
二人には各種族のリーダーとしての役割があり、そちらを主体として欲しいからだ。
リントは僕の従者を維持。
リントの戦闘チーム入りに猛烈に反対した僕の後押しを後鬼がしてくれた。
従者として執事として、まだまだ教育することがあり、戦闘面では十分な素質があるので、焦ることなくじっくり育てていけば良いとのこと。
そのうち戦闘執事が誕生しちゃうの?
リントが戦闘執事に……今の内にサインもらっておこう。
また、屋敷のメイドとしてエルフの奥さん、例のナターシャの師であるミレイユさんが採用された。
戦闘執事の前に戦闘メイドの爆誕だ。
エルフでは最強のはずのナターシャが一度も勝てない相手がミレイユさん。
じゃあミレイユさんが最強では?と思ったが、対魔物戦ではナターシャの方が優れているという。
他にも獣人族やドラド族からもメイドを採用することになった。
そこでドラド族のおばばが孫娘を連れて到着した。
「大変遅れて申し訳ありません。
この歳になるとすぐさま身体が動くという訳にもいかず……」
「いえいえ、急なことでしたし、お身体をご自愛くださいね」
「今後はそうも参りません。
これにあるのはわしの孫娘でございます。
こやつをわしの後釜に据えます。今後良しなに」
「ドラド族のエリシャンテと申しますぅ」
ゆったりとお辞儀をするエリシャンテ。
お辞儀から直立に直る際に、たわわに実る胸元が揺れる。
じっとこちらを見てくるので、こちらも目線を合わせる。
ん?その瞳に違和感がある?
そう思った瞬間にふにゃりと笑い、
「お気づきになりましたぁ?
これは竜眼と言われるもので、先祖返りの証なんだそうですよぉ」
そう、瞳が縦に割れているのだ。
瞬きすると丸い瞳が縦に収縮される様が窺える。吸い込まれるようだ。
エリシャンテも美人なのだが、その笑顔は後鬼やナターシャの透明感のある美しさというより、柔らかい可愛い笑顔だ。
「そ、そうなんですね。
キレイな瞳でびっくりしました。
そちらにお座りください」
後鬼に軽く脇をつつかれ、着座を促した。
「では、ドラド族の方も揃いましたので、牧畜計画について話したいと思います」
「牧畜ってえと、馬や牛かい?
確かに草原にチラホラいたけど、ありゃあ魔物が混じってて、気性が荒いぜ」
ハヤテが疑念を投げ掛ける。
「そうそう。その馬や牛だよ。
管理者は"こちら"から出すから心配いらないよ。
欲しいのはその従業員だね」
まずは畜舎と囲う柵の建設。
草原をエサとするが一応干し草も準備したい。
そして馬や牛の捕獲。
大筋はこんなところだろう。
さあ、忙しくなるぞ。
余談
「エリシャンテ、ジロー様をしっかり射止めるのじゃぞ」
「おばあちゃん、まだ子供じゃな~い」
「何を言うか。
あのお方が見た目のままなもんか。
おまえの数倍は生きておろうて」
「言われてみれば、話し方も所作も子供らしくないなぁ。
見た目年下で中身が年上かぁ。」
「多頭竜様が主と奉るお方じゃ。
一筋縄ではいかんだろうて」
「考えてみると、竜神様に嫁ぐより理想的ではあるなぁ。
しかも、おっぱいじゃなくて瞳を褒めてくれた。
良いかも。
よし、決めた。ジロー様に嫁ぐよ。
可愛いお顔してるし。好きかも。
でも、ジロー様、あれで閨出来るのかなぁ?」
「それは知らん。好きにせい」
エリシャンテ、図らずともショタコンに目覚めつつある。
余談
「お姉ちゃん、ジロー様のそばにまた美人が来た~。どうしよう!?」
「そういうあなたも美人なんだから、ドンと構えてなさい」
普通にしていれば、という言葉を飲み込むミレイユ。
「わたし達エルフは長い期間を若い姿を保てるのよ。
そこをウリにするの」
「どうすれば?」
「そんなの自分で考えなさい……って、ジロー様はどうなんだろうね?
ナターシャ、あなたジロー様の年齢知ってる?」
「え?う、うん、一応知ってる」
「いくつなの?」
「今年60歳になったって」
「あら、エルフの成長と同じね。
……そもそも、ジロー様って、寿命があるのかしら?」
「わかんない。考えたこともないわ」
「ほら、後ろ向きなさい。
髪を梳いてあげるわ」
ナターシャの髪をブラッシングしてやるミレイユ。
「髪もキレイだし、お肌もツヤツヤ。
これで落とせない男なんていないわ」
「でも、でも、お胸がないもん。
後鬼様もタマモ様も大きいし、アヤメ様は着やせするタイプだったし。
今日来たエリシャンテさんなんて、おっぱい怪人だった!」
自分の胸を寂しそうに押さえるナターシャ。
「あらあら、そうなの?
ナターシャ、チャンスじゃない」
「???」
「スレンダー美人が強みになることもあるもんよ」
不敵に笑うミレイユ。
脳裏に浮かぶは、諜報員リントの姿が。
各余談は、作者の趣味的に始めたものですが、今ではすっかり話の補完をしてくれる重要なものになってきました。
お楽しみにください。




