第245話 真神大戦 帰還
過去にタイムスリップした真神と八咫烏。
本人達の望まぬ、それぞれフェンリル伝説とフェニックス伝説に信憑性を与えてしまうことに。
そして……。
ーーー 三人称です ーーー
真神と八咫烏が、時空を超えて大樹の下へやって来て、数百年が過ぎた。
最近は、大樹を襲う者達も居なくなり、平穏な大樹の森。
たまに、ヒト種が紛れ込んでしまうこともあったが、軽く脅すと脱兎の如く逃げ出し、二度と現れることもなかった。
「最近は平和になったよね~」
「うむ。
大樹を狙う者達も居なくなったな。
…………。
なぜ、まだその奇妙な舞いを舞うのだ?」
大樹が女神姿で踊っている。
「ザ・平穏の舞い!
レッツ・ダンシング!」
「ええい、止めよ。
鬱陶しいわ。
八咫烏も真似せんで良い!」
大樹の女神はわちゃわちゃしているだけだが、八咫烏は綺麗に舞いを舞っている。
その対比が余計に混乱に拍車を掛ける。
とその時、突然、三人の前の空間が開いた。
景色は変わらぬのに、宙に境目が認識出来てしまうという不思議な現象が生じる。
「ほら、私の舞いで門が開いた」
「「嘘つけ!」」
真神と八咫烏の二人から即座に突っ込みが入る。
大樹の女神は、可愛らしく舌を出し笑ってる。
そして、その開いた空間から手が伸びて来た。
その手が何かをまさぐるように、握っては開くを繰り返す。
三度その行為を行った後、前に進み、その手の持ち主が現れる。
「主殿っ!」「あるじぃ!」
そこに現れたのは次郎。しかも、成人姿だ。
「真神!
ヤタ!
よく無事で」
「主殿、お懐かしゅう……」
「あるじ、久しぶりぃ」
真神と八咫烏の姿を確認すると、次郎は二人に抱きつく。
◇◆◇
「そうか、そんなことが……」
真神と八咫烏から、今までの出来事の報告を受けた次郎。
「真神、八咫烏よ。
よくぞ大樹を守った。
大義であった」
「「ははぁ」」
覇気を醸し出す次郎に頭を垂れる二人。
その脇で、なぜか大樹の女神も同じく頭を垂れている。
「そして、大樹よ。
この"時"では初めまして。
僕が鈴木次郎だ」
「は、初めまして。
大樹の精霊、ユグドラシルです」
(神々し過ぎて、全然茶化せない。
……でも、イイ男)
「ハハハ。
この時代の大樹さんは可愛らしいんだね」
「まあ……」
大樹の女神が頬を両手で押さえている。
「何にせよ、二人を連れて帰るよ。
僕がこの"時間"に居るのは危険だ。
因果律を乱したくないからね」
次郎がタイムパラドックスの危険性を皆に説明する。
「時間は、過去から現在へ。そして、現在から未来へと流れるのが自然なんだ。
時間旅行も未来へは行ける。
光の速さを突破し続けていられるのなら。
神速持ちの二人なら、いずれ出来るのかもしれないね。
だが、過去へ遡行することは科学的・理論的には不可能なはずなんだ。
出来てしまっている今の僕達は、自然の摂理に反してる。
だから、"世界の敵"と認定される前に、お暇しよう」
次郎は立ち上がり、開いたままの時空門を指差す。
「畏まりました」「了解」
真神と八咫烏も姿勢を正し、立ち上がる。
「帰っちゃうの?」
大樹の女神が寂しそうに三人を見つめる。
「大樹さんとは、これから出逢うよ。
そして、一緒に暮らすことになる」
「多くの者達に囲まれてな」
「みんな、大樹を好きだよ」
次郎、真神、八咫烏が大樹の女神を微笑んで見つめる。
「……うん。待ってる」
~~~ 余談 ~~~
次郎に可愛らしいと言われ、頬を両手で押さえてくねくねしている大樹の女神。
「大樹よ。
惚れるでないぞ。
主殿にはすでに婚約者が居る」
「なっ!?
……良いわ。なら略奪するだけよ」
「そんなことしなくても、側室にならなれるんじゃない?
だって、もういっぱい居るし。
三人娘は確定でしょ。
あと、雪娘の椿も頑張ってるし」
「そう言えば、エルフのナターシャも立候補しておったな」
「ああ、おっぱいちゃんもそうかな?」
「ドラド族のエリシャンテな」
「あとは……」
「ほれ、姫君も居たろう」
「ああ、アルメリアかぁ。
あの娘、控え目だからなぁ。もっと押せば良いのに」
「え!?
次郎って、ハーレム男なの?
むぅ~……仕方ない。お妾さんで我慢するかぁ」
「「ただし、母親に認められたらの話だな(ね)」」
「あちゃー。ラスボスも居るのね」
そんなこと言ってると、伐採されてしまうよ。
~~~ 余談 ~~~
三人が帰還した後のこと。
「ああ~あ、行っちゃった」
大樹の女神は少し寂しげな表情を見せる。
「でも!
またみんなと巡り合う時までに、やることはいっぱいあるぞ~。
まずは、先輩方に少しでも追い付かないとね」
「んん~っ!」
大樹の女神が力み出す。
表面的には変化が見受けられないが、地中では大樹の根が少しずつ伸び始めていた。
「はぁはぁ……。
少し伸びたわ。
いつまでも、この森だけじゃダメだもの。
まーくんやヤッちゃんみたいなヒト達がいっぱい居るらしいから」
大樹がこの惑星全域を支配下に置くのは、まだまだ先の話。
~~~ 余談 ~~~
次郎、真神、八咫烏の三人が時空門をくぐると、そこは大樹の祭壇の前であった。
「お帰り~♪」
そして、"現在"の大樹が女神姿で出迎えた。
「ただいま」「ただいま帰還した」「ただいま~」
「まーくん、ヤッちゃん、本当にお疲れ様。
そして、ありがとう」
「どうってことない」
「問題ないよ」
四人は、輪になってその場に座り込む。
「さて、"現在"に帰ってきた訳だけれども、こっちでは真神が居なくなって十日。ヤタは三日居なくなっている。
みんなには、次の戦に向けての隠密行動を取っている、と説明してある」
次郎が真神を見つめながら口火を切る。
「了解致しました。
口裏を合わせろ、とのことですな。
実際に何処かへ調査に赴きましょうぞ」
真神も八咫烏も頷いている。
「うん。
それで、真神にはゴドー王国の周辺を探ってほしいと思っている」
「はっ。
ゴドー王国と周辺諸国との境目に、何らかの変化が無いか探って参りましょう」
「ボクは?」
八咫烏が次郎を見つめる。
「ヤタは、クリムト帝国軍を探ってほしい。
ただし、敵の首都を探る時は、遠方からその視力のみで。
……クリムト王は気配察知に長けている前提でお願い」
「うん。わかった~。
首都以外に出陣してる部隊があるかもしれないから、そっちをメインに探るね」
「それで良い」
パンッ。
次郎が柏手を打つ。
「で、祭壇から出るところを住民に見られる訳にはいかないから、僕の転移で都の外へ誘導するね」
「主殿、一つお伺いしたいことが……」
「わかってる。
鹿の群れの件でしょ?」
次郎はニヤリと笑う。
「お見通しで」
「真神があんな大群を見逃す訳無いもんね。
天狗隊に遠巻きに包囲してもらってるよ。
もちろん、一切手を出していない」
「ありがたき幸せ」
「その鹿の群れは、真神に一任する」
「あるじ。
ボクのお願いも聞いてもらって良い?」
「どうした、ヤタ?」
「ここから遥か西になるんだけど、真神を探している時に水竜に襲われたのね。
それで、勘違いした大樹がボクの前に門を開けちゃったの」
「え!? 私の勘違い?」
大樹の女神が驚いている。
「そっか。
大樹さんも、仲間の能力はもう少し把握しようね」
「は、はぁーい」
大樹に反省を促していたが、八咫烏が会敵した水竜の全長は30メートルを有に超えていた。
それに対して八咫烏の体高は、3メートルを超える程度。
誰が見ても、八咫烏が危険と判断するのは仕方がない。
「では、ヤタはその水竜と出逢った海域に跳ばせば良いんだね」
「うん、お願い。
近くに寄せてくれれば、あとは自分で探すし」
「じゃあ、その道程を思い描いてくれるかな?」
次郎が人差し指を自分のこめかみに置く。
「……結構遠いな。
……島も見えるね。翼竜も飛んでる。
ああ、これはプテラノドンだ。ウチの翼竜達とは別種の翼竜だ。
そうか、プテラノドンは魚を獲物にしている種だったな」
ちなみに、大樹の森の都に移り住んだ翼竜はケツアルコアトルスである。
プテラノドンの翼長が6~7メートルに対し、ケツアルコアトルスのそれは12メートルを超える。
双方ともに肉食爬虫類である。
「よし。マップに記録した。
いつでも転移出来るよ」
「大樹。
ここから検知出来るよね。
よく見てて」
「そうだ。
我の方もよく見ておくのだぞ」
「よし、発動」
次郎がそう言った瞬間、真神と八咫烏の身体が消失する。
「そっかぁ。
私の早とちりだったのかぁ。
二人とも怒らしちゃった?」
「怒ってはいないよ。
そもそも、大樹さんは二人を助けようとしたんでしょ?
二人もそれはわかってるから」
「う~、反省しておく」
そして、それぞれの希望の場所に転移した真神と八咫烏は……。
時間遡行そのものは科学的に実証されています。
でも、時間旅行で過去に行けるのとは違うようです。時間遡行は時間が巻き戻るだけなので、おそらく本人もそれとは気付かないのかもしれない……ということのようです。
本作品では、出来る限りの科学的根拠や検証を踏まえた現象を掲載しておりますが、何故に過去へのタイムスリップを取り上げたのか?……。
そもそも、妖怪達を投入している物語なので(笑)。
ロマンあって良いじゃないっすか!?
でも、ホント、様々な細かい設定に作者が奮闘しているのは事実です。
さて、次話は、この真神大戦のオーラスです。
お楽しみに。




